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あなたの思い出

あなたの思い出が聞きたい。
生きてきて、いろいろな思い出をあなたは持っている。
そのままの思い出が聞きたい。
あなたなりに、あなたの言葉で、微にいり細にいり、できるだけ詳しく聞かせて。
話の順序が前後しても構わない、話が上手くなくてもいい、求めるのは、本物の思い出を語っていただくことだけ。
記憶違いは仕方がないが嘘だけはいけない。
いろいろな思い出、美しい思い出、嫌な思い出、忘れたい思い出、楽しかった思い出、つらかった思い出、懐かしい思い出、死ぬかと思った出来事、あのときが人生で一番の幸福だったと思える思い出、大切な人を得た、あるいは失った思い出、言葉にしにくい思い出、思い出したくない思い出、すべて本当の言葉で話してほしい。
私はそれをただ聞いて、頭の中で思い浮かべて、できる限りの想像力を働かせて、あなたの思い出を私なりになぞり、私なりに咀嚼し、時には同情の涙を流し、時には喜びや幸福を共有し、時にはあなたに対して、なんてことを、と本気で腹を立てたりして。
しかし、できるだけ自然に、穏やかな表情で、ただ、あなたの思い出話に静かに耳を傾けるだけで、あなたの思い出を歪めるようなことはしない。
お互いにとって、それは充実した時間となるだろうか。
ただ、嘘だけはいけない。
きっとわかるから。

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