どっけもそっけも

結局　江戸川でのオイカワ釣りにも　隣町の
藤棚の見事な寺へも休み中いかなかった　ず
っと家にいて想像していた　晴れていたので
出かけなければもったいないとも思ったが　リ
ビングの椅子に座ってクッションを抱えながら
スマホゲームしている娘と　その後ろに見えて
いる桜の青葉を見ていたらどうでもよくなって
きた　ここ数年の剪定でいい具合に隣家との
目隠しの役目をはたして　緑の中の別荘と自分
を無理に誤魔化して過ごした

という訳で久々にあの公園にいった　ここのと
ころ橋を渡った後すぐに埼玉に逸れるルートを
使っている　ひと月半前に行ったときと季節が
すっかり変わっていて　つつじはもう終わり　緑
は濃く　そろそろ栗の花のにおいもしている　
毎日通勤通学していれば季節の移り変わりも
徐々に塗り替わるのだろうが　週に一度外出
すればいい方の引きこもりの私には非連続の
季節の変化が唐突に思える　淡い知らない一
重の花が公園のフェンスの向こうにまばらにま
とまって咲いていた　以前にも写真に撮ったす
きな花だ　蛇いちごも赤く熟れていた

おそらく今日　このことを書き留めるだろうと自
転車に乗りながら考えたが　季節が変わった　
花が咲いた　樹々の緑が濃くなった　こういう事
を書いたものは特に何らかの興奮や喚起をよ
ぶものではないだろうと思った　まあ　そのような
目的の書き物をするつもりもないのでそれはそ
れでいいとして　しかしながら　季節の移り変わ
りを書いたような文章と言うのはどっけもすっけ
もねえ　

母が良くどっけねすっけもねえ　と言っていたの
は方言かと思って妻に意味が分かるか聞いた
ところ妻は　どっけもそっけもねえ　と返した
どっけもすっけもねえ　は毒気も酢っけもねえ
と思っていたが　妻の言う　毒気も素っ気もね
え　が予測変換で出てきたので　そちらが正し
いのだろう　味が薄い食べ物に対して言うのは
私と妻との共通認識だった

ひと月前にあんなに捕れたバラタナゴは同じ
水路でも今日は一匹しか捕れなかった　地上
だけではなく　水中の季節も知らないうちにす
っかりかわっていることを知った　酢