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1セグメント部分受信サービス

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冷血というのは、血の温度が、周囲の温度と同じになるときの、冷たいところでの血の状態。通常、生者にはあり得ない。血が冷たいと言うことは体も冷たいと言うことで、今こうして、電話を切った後でも、別につめたい血が流れているわけではないのだが、つくづく、自分は冷血だと思う電話を切った後で、その電話のたちきりかたが、人から見ても余りに非道だと陰口をたたかれ、バッテリーの熱のせいで電話自体は暖まり、私はマフラーにくるんだ首の、隙間にそれを差し込むのだった。あれはひどいね、あれはひどい、とあたりでひととひとが囁きあい、一人でいる人ですらひどい、とひとりごとをつぶやく様子は逆に私を、役者かなにかのように浮き上がらせて、こんなところに一つの場が形成されることもあるのだとやや感動に似た感情すらわき上がるのだが、誰がみても一方的に私が冷たいというそんな莫迦な話があってたまるかと、誰か一人ぐらいは本心「仕方ないよね」と思っているだろうとそれらしい人の腕をひいては、その腕がすっと抜け、またひいてはすっと抜け、を繰り返し、ここまでだとは思わなかった、と街中でわめいているのを、連行され持ち物を調べられ、電話と思っていた物はテレビ、それも電話には似ても似つかぬワンセグの携帯テレビで、だからバッテリーが必要以上に熱くなったのだと、ひりひりする首に冷たいタオルを当ててもらいながら、いかに仕方ない事情だったのかをひたすら口の中で唱えていた。

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