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とある鼎談を読んで

ここのところ現代詩手帖を読み漁っているので
つい何か言いたくなるが 基本的にはやはり
現代詩関連としてはこの雑誌が一番重要だと
いう認識は80年代からずっと変わっていない
作品はともかく 評論 特に対談については
読むべきものが多いと考える 今 評論と書いた
がそちらは玉石混交 よくわからないもの そ
れは当然こちらの勉強不足もあるけれど いた
ずらに難しく書いて中身が空疎に見えるものも
多い 勉強しているのをひけらかすやな秀才
みたいなものか

稲川方人という一時代を築いた詩人がいる お
そらく誰でもがとっつける平易で意味の取れる
詩の対極にあるひとだ 氏が若手詩人たちと
鼎談している企画が四半期に一度ほどあるの
だが 昨年のとある鼎談を読んで面白かった
のは一番稲川氏の言っていることが 簡単に
見え 心情として理解できるものだったことだ
他の若手は少し大御所の稲川氏に遠慮気味で
何か調子はずれなことを言っていなされる と
言った対談鼎談座談にあるようなスリリングな
展開は見られなかった 私は読んだ回がたま
たまそうだったのかもしれないが

稲川氏はとある詩集を現在書かれた抒情詩の
中で最高の部類に入ると言ったような褒め方を
して それは90年代はじめ 稲川氏がバンドの
レピッシュをいきなり持ち上げた時にわずかに
似ていなくもなく そのとき 私は え 何故
レピッシュ? と奇矯に思ったものだったが まあ
あのバンドには上田現という特異な才能が在
籍していたので 確かに凡百の他のバンドブーム
のバンドとは毛色が変わっていたかもしれない
といって セールス的にはユニコーンに及ばず
ある種ミュージシャンズミュージシャンだったこと
は否めない さすが稲川 どえらいバンドを見つ
けてきたもんだ とは正直思わなかった そこは
やはり見るところの違い おこがましくもあるが
感性の違いだろう と感じる

で その詩集に対して鼎談相手の若手詩人は
他の詩人との共通性みたいな切り口で語って
いるのだが 稲川氏はあくまで自分の感じ方で
論を進める ベテランという事もあるだろうがあ
くまで自分の読みからその詩集を論じるという
姿勢がよかった というより 言葉遣いの瑣末
な部分よりも書く姿勢 態度 そのようなもの
を強く簡潔な言葉遣いで語る稲川氏というの
をほとんど私は未見だったので へえ 稲川
方人もこんなストレートに見える物言いをする
んだ とやや親しみを感じつつ読んだ なにしろ
以前の彼の批評 エッセイ 何を読んでも書き様
に引っかかって内容まで気が行かないような
そのような文章だったから

この鼎談で私が強く納得したのは と同時に
疑問でもあったのが 書き方の深さ 書き様の
真剣さ と言ったことだった 稲川氏とは対極
と言っていいだろう平易な言葉で いわゆる
わかりやすい詩 を書くベテラン詩人が 18年
ぶりに出した詩集を評して 世界が薄い といっ
た内容の言及をしていて 私は 世界が薄い
という事は作品にとってそんなに悪い事か
と思いつつも その詩人の深く掘り下げない
書き方についてかねて疑問も持っていたので
うまく言い当てていると感じて共感を持った 趣
味として書いた詩に技術や内容の深みを特に
私は求めない それほど詩が好きなわけでも
ないので ほとんど一読後は内容を忘れてし
まう しかしながら 一応商業誌に載るような
いわば玄人として詩を書く人の作品というのは
何かしらの引っ掛かり とげ 心を騒がせずに
置かない何か というのが含まれていければ
ならないのではないか そのサムシンエルス
をこそ私が詩ひいては書きものを読むときに
最も求めるものであり 人生の悲哀とか ちょ
っといいはなし 的な共感を求めているわけで
はない 稲川氏はある種 さらりとした理解しや
すいもの または自らの確立した手法 テーマ
それらの中に閉じこもって深掘りを拒否している
かに見えるような詩人 その作品に苦言を呈し
異を唱える それがストレートな物言いだった
ので 以前の氏の言い回しからすれば意外
だったのと同時に その点に関しては素直に
頷けるものだった ただ 深み といったともす
れば内容偏重主義的な考えにはあまり同意が
出来るものではなかった どちらかと言えば
私はフォルマリストに親和している

ただ ひとつ氏にたいしてちょっと と思ったこ
とがあって ある詩人を評しているシーンで
詩句の なすがママ きゅうりがパパ という
のを引いて こんな発想何処から出てくるのか
と感心しているところがあるのだが そ それ
古くからあるギャグでっせ と突っ込んでしまっ
た というより 編集さぁ 校閲の時にきちんと
突っ込んでやれよ と思った 本当にそういうと
ころがいまいち甘い 読者を舐めてるなあ と
思う雑誌なのでもあった 手帖 あぐらかいて
んなよ と



下書きがいくつか消えていた・・・これはいよいよ記事のバックアップとっておかないとまずいか・・・

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