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窓を開ける

窓を開ける

夕食の子供たちのおかずはシシャモ。正確にはカペリンという魚らしいが、私は魚が嫌いで、魚を焼くにおいも当然いい匂いには感じられない。

冷房で締め切っている窓を久し振りに開けてみる。夕方の風は今日、あまり熱気を含まず、リビングから続きの六畳間の窓へと強めの風圧で通り過ぎていく。

何の鳥か、あまりいい声ではなく締め上げられるような声で鳴いているのが近くに聞こえる。

幹線道路沿いに建っているので、夕方の交通音がせわしい。電線の高さが視界で、屋根屋根が薄く橙に照らされているのが見える。

こんな夕方、そろばん学校に出かけていたのを思い出す。薄暗く、暮れていくトタン板の町並みに、忙しい動きで羽を動かし、すばしこく飛んでいる生き物がいた。蝙蝠だった。

相変わらず蝙蝠は今も居て、かくかくとすばしこく飛んでいる。蚊や小さい羽虫を食べているのだ。トタン板の家は少なくなって、蝙蝠も人の家の屋根から追われ、今は公園の木々や神社の木立などにいるのだろうか。

夕方から活動を始める。誰かに似ている。誰に似ているか思い当たる人が居ますか。シシャモのにおいが風に流され、どこか湿り気のあるなま暖かい風を閉める。夏の夕方がぴしゃりと閉まり、夕飯のにおいが部屋に盛り返してくる。

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