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炎上

ささやぶ
の間の
土道
丸太が
階段の代わりに
埋められて

小高い
道を
上っていくと

茶色い
下見板の外壁
雨に色の
抜けた木戸

生成りの
のれん
そば
とひらがなで

雨だれのような字で
店名が
した

窓際の
席からは

沼沢の風景が
見渡せる
まこも

葦か
ゆるやかに揺れる

甘すぎない
玉子焼き
蕎麦味噌
はじめ
ビールで

ここは
銘柄
選べる

木組みの
古い釣り座に
あぐしらして
竿を
繰る
釣り人が見える

釣れたのを見た
ためしはないが
人がないのは
雨の日ぐらい

あそこにいるような
気分のまま
涼しい
店内で
飲んでは
つまむ

長居は
しない
けれども
心から
くつろいで

八分の
すがすがしさを
取り戻せるのが
いい蕎麦屋
での
蕎麦呑みの
効用

蕎麦前
蕎麦
ビール
酒二合

おあいそは
少しお高め
そのくらいは
いいと思える

せいろ
正直
これよりも
香り高い蕎麦
何度も
食べたことがある

酒と
あわせると
つゆと
あわせると

風景と
合わせると
この上なく
しっくりくる

こういう店を
探してた
でも
見つからなかった

見つけた
とおもったら
なくなってきた

ここも
今日で
おしまい
一月後には
更地になってる

燃やしたいな
この
蕎麦屋
しめに

炎上させよう
妄想だから


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