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多分 魚は魚が好きだ

神社の先を川沿いに行くとおおむねには直角
だが丸く流れが曲がっている川岸の平場で
やや髪の毛が長くて多い男がばけつに魚をい
っぱいにして ちょうど通りかかったものだから
こんにちは と水辺に降りて行き 何が釣れる
んですか といつものように声をかけてしまう
私の中では釣り人の七割程度には声をかけて
何が釣れるのか聞かなければいけないという
決まりのような物がマスクをするご時世になっ
てからあって それは川べりの日々を記録しよ
うという他人からの勧めによる自らの決めごと
に従っているまでで 川と言えばつまり生息し
ている魚種の数えの事であって 今までに何
目を数えたか 魚すまぬ流れ川にあらず

ええと ボラにオイカワ え オイカワいるんで
すか 沢山いますよ よく小魚が群れて平打っ
てるの見ますけど ああ あれはボラというよ
りオイカワじゃないかな むしろボラよりもオイ
カワの方が多いですよ といってバケツに束な
る魚を持ち上げてみるとほとんどはボラ 正確
に言えば稚魚のイナで 少し成長した固体は
寿司ネタで言うところのコハダにに似たうころ
模様で その中に銀地にうっすら金の斑のま
じったオイカワが掬われた むしろ支流にいる
のかもしれないと半ば想像していたがこんなに
人通りの多い 言うならばちょっとおかしな目で
見られそうな目立つ川辺で生息しているものだ
とはわからなかった

どうやって釣るんですか 川べりから登った人々
が行き来する柳の木の舗道に 釣り竿が立て
かけてあったのを見ていたから ルアーか何か
で釣るのかと思ったら 主に餌釣り というので
餌は何を と問えば いやあ ボラはね 群れて
いるからひっかけ釣りで というので ボラでは
なくオイカワについて聞いているのだが と内心
思いつつも フライなんかやってる人も前に見た
んで と問い直すと いや オイカワは餌 餌じゃ
無いとかかりませんね と言われ その餌は
何かと問おうにもボラはギャング釣りね と言わ
れ肝心の事は聞けずに終い

ご飯粒だったりする 多分 魚は魚が好きだか
ら食べ物として 魚肉ソーセージなんかもそう
ここからほんのわずかに上流にいけば川が二
手に分かれていて微妙な中州の土の土地に
二軒の家が建っていた 当然一度壊したら二度
と建築許可が下りるはずもない土地だから昔
のままのカラーリブの家だが 一軒は幼い時と
そのままの同級生の家ですぐに庭先が水に
浸かっているのを何十年も見てきたが あそこ
から竿を出せばいつでも釣りができると思った
駅からは近いけれど

餌にするから と何度も言っているのはどういう
ことなのかと思ったら 野鳥をやっている場所が
あってあたたかい時には世話をする人がいる
けれど冷え込んでくると世話する人がいなくなる
から魚は鳥に食わせるという 鳥を喰わせるため
だからこんな恥ずかしい場所での釣りも厭わない
のかと思ったが 日焼けなのかそうではないのか
浅黒い顔をして銀縁の眼鏡をかけた40代くら
いの男性で 水辺から見上げると老人が私たち
のやり取りに入りたそうに自転車を止めていた
野鳥をやるのはどのへんなのか聞かなかった
が今 どこだろうと思った

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