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森の中のラブ

私の体の中で どこぞの男女が
秘め事を始めている
女は黒いタートルネックの下に
ピンクの下着をつけていた
ナイロンは絹に似せて作った
人絹と言うんだ 以前 書き始めた
頃 耳慣れない言葉を文章に
導入しようと辞書をぺらぺら
めくったように男は女の下ばきの
縫い目をつまんではぺたぺた離す
着衣のままで夜の戯れを
午前中のわたしの奥で
今のところ穏やかに行っている
森の中のラブホテルに
行けばいいのに 多少
古臭くてもそれはそれで雰囲気だ
私の内側がつながった二人の
からだを隙間なく包み込むから
窮屈なのかとは思うが外から
圧着されている方が密度を
保てるのかもしれないよ
なんか癌になりそうだ 体の中の
二人の行為で その部分だけ
血流が滞るのか それとも徐々に
沸き立つのか そうだよ
森の中のホテルに行けばいいのに
どうせおおっぴらにできない
関係なんでしょ こんな生臭い
身体の中で延々と耽っていないで
お腹だってすくでしょう
髪を整えるのも楽じゃない
でも
あなただって一冊の小説でしょ
本棚にすましてひっそりと
立っていればいいのに
ドストエフスキーの舌づかい
そうか 私は 血の通わない小説で
あなた方はまだ書かれる前の
着想なのか ならばなおさら
森の中のラブホテルで
あなた方を惨殺するよ
とにかく私は快くないんだが

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