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夏祭り

夏祭り

大雨が降って、中央道、大月から富士五湖線が通行止めとのニュースだ。わずかに縁のあった土地への道。

夏には、毎週のように得意先の企業が夏祭りを開催した。週末、夕方から敷地に出店を出して、従業員とその家族が集まる。なぜか取引先の私も呼ばれて、ビールを飲んで調子よくなっていた。

アスファルトの地面に青いビニールシートを敷いて、座卓を囲んで飲み食いする。直に座ると酔いが早い。手みやげを何か持って行ってお楽しみ抽選会の賞品にしてもらう。

夏祭りは山に囲まれ、だんだん陽が落ちて涼しくなっていく。紅白の提灯が影になり、しばらくして明かりを灯す。すっかり私はできあがっていて、賞品を渡すのに壇上にあがったときには、わかめのようにゆらゆらして立っていることすらやっとだった。

前後にかくかく揺れながら賞品を渡し終えると、舞台の袖にへたり込んだ。だが、夜遅く、自宅へ帰るのだ。

夏の間、平日は家族を山梨へ呼んで、週末に家族で帰るという夏休みを過ごした。いつも、金曜日の夜は助手席で酔っていた。八時頃に富士山の麓を出て、十一時頃自宅に着いた。

途中、狭山のパーキングで子供たちにおにぎりを買ったりした。息子は、狭山のわかめおにぎりが好きだった。

少しずつ酔いが醒めてゆき、夜の中に光の量が増えていく。それが地元に帰ってきた印だった。マンションの明かりがまたたく地方が生まれ育ったところだった。

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