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コリントゲーム

まおちゃんのコリントゲーム
夏休みの工作セット
板に釘を打ち付けたのはお母さん ひとつ釘を打つと別の釘が抜けてしまう
かなづちがだんだん大きくなる 重たく
打ち付けた釘を調整するのはお父さん
釘方向の少しの違いで面白くもつまらなくもなる 曲げ様
箱に色を丁寧に塗って行き着き先に おみくじを割り当てたのはまおちゃん
大吉 吉 小吉 凶 入る確率が大きい部分に吉をふりなよ
お母さんに言われたのでそうするがまおちゃんはひそかに別のことをおもって
おみくじを割り振っていた それは夏休みの宿題
全般的にピンク色の箱 輪ゴムの引き金ではじく仕掛け
はじくのはビー球 コリント用の少し小さいガラス玉

しかし 新学期 まおちゃんはビー玉を家に置いてきた
遊べないコリントの九月初め またひとり転校していった子の名前が呼ばれた
転校した子の名前はゆうき 太ったお母さんの子供 ゆうきにコリントの
参加権はないこの先もおそらくない 受ける
蒸し暑い三階の教室
まおちゃんは次の日もビー玉を忘れた 次の日も 作戦だ 思いが
強くなっていくから 土曜と日曜が間に入り手のひらにガラス玉を持っている
おおきくて持ち重りがする玉 間違って落とすとマンションの床を突き抜けていきそうな気がする てのひらで そんな気がしている玉 
実際は少し小さめの軽いガラス玉
河川敷の高圧電線の鉄塔の下
まおちゃんはお父さんに何度も抱きしめられて気を遠くさせられた
気を遠くされた 気絶した
能が立ちのぼる草いきれ 真夏の原発事故後の 河川敷だ
去年は噴水で泳ぎの練習をした その写真も何枚も撮った 撮られた
月曜日 満を持してまおちゃんはガラス玉をコリントにセットする
まちわびた子供たちが群がる
たくさんの子供たちが群がるまおちゃんのコリントゲーム
おみくじの吉のところ ほんとうは
「お父さんに気を遠くされる」のだ
一歩引いてまおちゃんが見ている 家族の時間
おまえたちは
「お父さんに気を遠くされる」のだ
受ける ウケル

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