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空腹デフォルト

この度 自堕落な生活を六年続けた といって
酒もなく煙草もなく 食事は決まった時間にきち
んと たまに釣りに出かけ 書き物をして 自分
ではそう捨てた生活ではないと考えていたの
だけれど 敢え無く重症レベルの糖尿が発覚
した 数値的には入院レベル 六年ぶりの血液
検査で露呈

薄々は思っていた 糖尿ではないかと それが
怖くて健診を受けなかったというのもある しか
しながら糖尿は放置して自然治癒するものでは
決してなく 胃の検査で胃潰瘍が直った跡が
あります という訳にはいかない 放置したとこ
ろで 合併症が発症されなければ自覚症状も
ほとんどない 具合が悪くなった時には重症化
している 様々な体調不調があったが 今思え
ばあれらは糖尿病からくるものだったのではな
いかとおもえる 男の更年期障害かと片付けて
いたものの 糖尿病からくる不調と考えた方が
疲労感 発汗 頭痛 やたらに眠たくなる午後
顔の火照り すべて合点がいく気がする

しかし腹が減っている 空腹デフォルト ネット
情報の 一日1500キロカロリー以下 糖質
160グラム以下 というメニューで一週間 食べ
る順番は野菜 タンパク質 炭水化物 とクレッ
シェンドしていくと満腹感あるいはその上の膨満
感まで得られるものの それはほんのひと時で
半時間後には空腹感が生じてくる 食事から
一時間後が丁度軽い運動にはいいタイミングと
あって 毎食後10分間の踏み台昇降をはじめ
た こういう運動はやってしまえば慣れるもので
いやいやながらなんとか続けられるようになった

一週間してどのような変化が起こったか 私の
場合はそれまでが殺人的な怠惰であったため
ほんの二日ほどで眠気の消失 だるさの軽減
頭痛の緩和 赤ら顔の解消が見られた 体調が
よくなれば私にとって最大の苦行に属する食事
制限も運動も続く まだ始めたばかりだし そう
言えば 糖尿の最大の症状に のどの渇き と
多尿 があるが減量を始めて三日ほどその症状
がひどかった 今はかなり落ち着いた 心理的な
ものが多かったのではないかと根拠なく思う

今回の件に際してネットで三日ほど 顔をこわ
ばらせながら様々なサイトをあたった その内容
で楽観視してみたり 必要以上に恐怖を感じたり
したものの 数値8.2の意味する正確なところは
とうとうわからなかった というのも当然で病気は
誰もが一律に同じ経過をたどるというものでもなく
個人差がある という冷静になれば当然の事
に思い至り 妻がネットばかり見て落ち込んでも
仕方ないよ とはっぱをかけてきたのに他人事
だと思って と反発を覚えたものの結局はそれ
が正しかったという事になる だが いざという
時に落ち着いていられない肝っ玉の小ささが
私という人間であり それは愚直なまでに幼少
から一貫して変わらない 呪

午後 息子に付き合って家電店まで歩いた 日中
この夏 暑すぎるのでほぼ外出していなかった
涼しい部屋での踏み台では汗もほとんど滲みは
しないがほんの十メートルの歩行で首に汗の
粒が付くのを感じた にんげんなんてな所詮
身に迫らなければ何事も他人事 いくら他人に
何言われても本気で聞く耳なんてない と思う
誰かに言われて今の生活を改めるか といった
ら改めるはずもない だから言っただろ と言わ
れても大きなお世話としか思えない 自分に
降りかからなければ心配もどこかしら虚ろ 詩人
の飯島耕一は直腸の病をして 詩なんて屁の
つっぼりにもならない という詩句を書いた 生
死にかかわる問題が降りかかったときに慰めに
なるようなものはほとんどない 渦中が落ち着
を見せ始めて漸く音楽や文学の出番だと思った
でもそれらはつまりは要るのだ

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