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海市川駅

海市川駅


海千葉県の海市川駅である(海芝浦ではない)。(海芝浦ではない)上りと下りで駅がふたつに分かれていて、上り線のホームは波打ち際にある島だった(海芝ではない)。ホームに至る駅ビルは信頼金庫と言うような屋号で投資商品を売る機関であり、自販機で投資信託などを券売している。そこからコンクリートの螺旋階段を上るとテラスに出て、そこはスポーツクラブなのだが、壁面が水槽になっていて、そのプールで行うアクアエアロビクスというレッスンが当該クラブの売り物なのだ。当然外から水族館の魚でも見るように会員たちは眺められ、見ていると幾人かはどうも溺れかけてもがいているようにしか見えず、しかし、これならば私にも続けられそうだなどと足を止めていたりしている。駅のテラスは海の上を地平のように覆い、所々に穿たれた螺旋階段の任意の一つを下りていくと、駅のホームぎりぎりにまたもやガラスの水槽が張り巡らされて、そこには海水に浸かった線路と、三メートル級の巨大な、ちょうど、高級魚とされるクエのような傷だらけの魚が何匹も、というより何頭も、と言った方がふさわしく、水面ひたひたを泳いでいるのだ。線路は引き込み線へと至り、そこにやはり、パンダのような大きさの犬や猫が無数に半ば水中に溜まっているのが見えていた。水槽の向こうにそれを見た女性たちはわあかわいい、などと歓声を上げているが、回送が引き込まれて来たときの惨状を知る由もなく赤列車をいつまでもいつまでも待っていなよ。

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