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ゆきずり

ゆきずりという言葉にこの何日か引っかかって
いる

そもそもすれ違う という意味の言葉のようだが
そのほかの様々な意味がこびりついて淫靡な
言葉に私の中ではなっている

匿名での情交 その場限り かりそめ 無責任
思いやりの欠落 二度とない 後ろめたい すれ
違う なんて言葉はどこからも浮かばない

私はここ十年以上山に登ったことはないが し
かも軽い観光の山とも言えない山にしか行った
ことがないが 山ですれ違った場合は挨拶を
交わすのが礼儀と聞いたことがある そうする
と 例えば高尾山などは上下ともにずっと他人と
すれ違うので挨拶だけで登山が埋め尽くされて
しまうのだろうか 登山ルートは遠大なゆきずり
の道となる

私の息子は難しいことはわからないというか理解
できないという特性を持って生まれてきたが と
きどき 一瞬すれ違ったことや人を覚えている
ときがあって それを唐突に口にするのだが こ
ちらがそれを覚えていないことが多くて しかし
おそらく息子が言うことに間違いはない 間違い
と思ってもこちらが間違っているのだろう 多分

ドラムの練習がうるさいと言われてものすごく
妻に腹が立った この文章を書いているときに
妻と娘のやり取りがうるさくて妻に腹が立った
娘は血を分けているからそれほどうるさく感じ
なくて妻の声ばかりが大きく響く

聞いたことはないので本当を知らないが 妻は
ゆきずりのどうこうはしたことがないだろう 私
がそうなので妻もそうだと考えているが 違う
だろうか 違っていたとして何も言うことはない

千葉県我孫子の駅から少し利根川寄りに逸れ
て 神社横の小径を入っていくと 雑木林を
切り開いた細道の中に文士村の名残がいくつ
か残されている 勾配の中にあって上に母屋
家の中の石段を下ったところに庭と茶室がみ
おろせる 今では誰でも入れる記念館となって
いて 普通に 静かに行きずれる 


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