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水族館と水の中

水族館と水の中

上野の動物園を一回りすると忍ばずの池の方にでる。以前、水族館が有った。

水族館には壁に組み込まれた水槽が並び、そこに一種類ずつ魚が泳いでいた。イトヨ、とかまず首都圏ではみない魚が必ずいて、トゲトゲした魚体で水草をつんつん突ついていた。

いろいろな魚が居て、魚類を見るのが好きだった私は、動物園でへとへとになっている親に我が儘を行って、次は水族館! と譲らなかった。それほど好きな場所だったのに、今はよく思い出せない。光がふんだんに射し込む明るい建物ではなかった気がする。

葛西の水族館は回遊水槽のマグロで有名だが、やはり館内は暗い。マグロの回遊を見てしばらくは飽きることがないが、あの泳ぎを見ているとなんだか、大してよくもない頭がより莫迦へ莫迦へと負のスパイラルを起こしていく気がする。

何匹かむれて銀色の樽のようにハイスピードで上層を泳ぐ鰹なども、いったん水槽から出してびちびち小刻みに動いているところを、なんとなく取り留めのない説教でもしばししてみたくなる。

低くない確率で来訪者が「うまそう」とマグロを見て言うのだが、牛を見ても旨そうとは言わないだろうと思われる。私はマグロを食べないので全く旨そうとは思わない。

水族館でも近頃増えているのが雑多な魚を自然環境に近い形の大きな水槽で展示する方式だ。なぜ私が魚を見るのが好きなのかというと実際の河川や湖で、どのように魚が生態しているのかに興味があるからであり、出来るなら湖にガラスのエレベーターでも設置して本物の水中をのぞいてみたいと言うのが本当のところだ。従って近頃のそれに近い展示方法は私にはとても嬉しい。

葛西においては、水族園から出た庭の通路にしつらえてある沼をガラスで区切った展示、あれが私の一番の見所だ。釣りを始めようと子供の頃思ったのは浮子の下の世界を想像するのが好きだったからだ。見えないところに興味を持って生きてきた。

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