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短文

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#現代詩

人が詩を綴るとき

人が詩を書き始めるとき さとうさんが ミニマル系の現代音楽を きいている詩を 浜風文庫に書いていた 金曜の 午前中 フィリップグラス を少し聴いた ピアノの アルペジオが 少しずつ 変調する とくに変拍子ではないが 少しずつ 変調し 草が芽吹き いつか花がさきほこるように 変調の花びらが ゆっくりと 開いていった 心のきれいな 文章を書く詩人の 飾らない散文を読んで 夜 人が詩を書き始めるとき という題の 散文を書こうかと 考えた もちろん 男が女を愛すると

何処の坂

何処の坂 (十二ポ活字で印刷された谷中の記録は路地を二三割間延びさせた。入り組みがゆるやかになり心持ち行間を拡げた) 肉筆の小石川はどうか。巣鴨から古書店を探すうちに白山通りから逸れて坂を下ったりのぼったり……その間、多くの「をみな」の学生とすれ違う。彼女たちの大半はからだに昏いみずうみを持たず、指先から乾いてゆくように見えた。通りのあらゆるところからバスに乗れたが、もっと細く、もっと細くと狭くしっくりするほうへ、路地の奥へと分け入ったのだ。 長くも短くも坂は坂、平坦な

つぎねぷ

1 マウスウォッシャーという機械がある。タンクに水をいれて細いノズルから高圧水が吹き出す。それで口の中を洗い流す仕組みとなっている。歯の間や歯茎のポケットを集中的に噴射するのだが、これが実に気持ちいい、というか尾籠な話だが、そこを噴射するとえもいわれぬ独特の腐敗臭のような、樟脳のような体に住み着いた悪菌のこじ剥がされるにおいが鼻に抜け、それが浄化されているという実感として思われることで快感が得られるというわけだ。 ところで、藤井貞和という国文学者兼詩人がいる。その人の古い詩集