【創作怪談】キイキイ

 ある夜、どうにも寝付けなかったので散歩がてら少し遠くのコンビニに買い物に出かける事にした。
流石に深夜なだけあって人通りというのもは無く、街灯の灯りを頼りに20分ほどの道のりを歩いていく。
 コンビニに到着し、週刊誌などを買って帰路につく。
歩き出してすぐ、錆びた金属の軋むような、キイキイとした音が近づいてくる。
不気味な響きに思わず振り向くと、何のことはない、自転車に乗った男性が横切って行った。
チェーンかどこかがひどく錆びている様子でキイキイと悲鳴をあげているようだ。 俺はほっとして向き直り再び歩き始め、しばらくするとまたキイキイと聞こえてくる。
さっきの人がぐるっと回ってまた近づいて来たのかな。と思いながら気にせず歩き続けるが、そのキイキイという音は通り過ぎるでも、遠ざかるでもなくずっと聞こえている。
正直もう、この時点で振り向くのも怖くなっていたので、立ち止まって様子を見ることにした。
さっきの男性が横をすり抜けていく。
 なんだ、やっぱりさっきの人が回って来ただけか。音が聞こえなくなるまで見送ってから三度歩き始めると、またキイキイと聞こえてきた。
追い抜かれた地点からこちらまで回り込んでくるには地形的にも早すぎる。
思い返せばさっきの地点もそうだった。
そう気づくと急に怖くなり、振り返りも立ち止まりもできず、家にも帰れず、かなり離れたファミレスまで歩き、そこで夜を明かした。
朝、家に帰る頃にはもうあの音はしなかった。
引っ越すまで夜中に出歩く事はしなかった。

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