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【創作怪談】白い子供

以前勤めていた某小売店での話。
長年のニート生活から脱し、何とか採用されたその店で勤めはじめて1年程度が経過した頃のこと。
「Zさんって白い子供もう見ました?」
と、半年ほど先に同じ店舗に勤めているSさんに声をかけられた。一瞬何のことか分からず、アニメやドラマなのかと思って聞き返すと。
「この店、白い子供が出るんですよ」
何でも、立地が悪く閉店の時間が迫る頃になると誰もいない時間が続くこの店だが、時折誰もいないのに自動ドアが反応することがある。
古い店舗であるし、それだけならセンサーの誤作動で何かを感知しただけだろうと言うこともあるのだけど、その前後、白い子供が視界の端に映る。という経験をする従業員がいるらしい。
にわかには信じがたい話、というか自動ドア誤作動と古くて薄暗く誰もいない時間帯の店の雰囲気にのまれてそんな気がしているだけじゃないのか?と思い素直にそのことを口にすると
「店長も見ている」
とSさんは何故か自信満々に話す。
この店長というのはゴリゴリの体育会系出身者という感じで、いかにもという強面の男性だった。
「そんな店長が見ているなら間違いない」のだそうだ。
よく分からない理屈ではあるが、まあそういう事にしてその話とその日の業務を終えた。
数日が過ぎたある日、店長と2人になる時間があった。相変わらず店は暇だった。
体育会系という割にこう言う時の雑談は好きなこの店長に、そういえば、と白い子供の話を振ってみた。
見たというのは本当ですか?と聞くと
「ああ、あの子よく来るよ」
と、話を聞いてみると店長はこの店が居抜きで入る前、別業種だった頃にもこの建物で働いており、その頃からその白い子供を見かけることがあったという。
そんなだから、その子供はうちの店というよりはこの場所に何かあって来てるんだろうとの事だった。
従業員の大半はその少年を見かけていて、俺もいつかみるのかもしれない。
そう思っていたがついにみる事はなく、その話を聞いた数ヶ月後に勤めていた店に閉店の辞令が出され、併せて俺も近隣の別店舗へ異動となった。
閉店した店の跡地には違う店が入っていたが、俺が勤めていた店やその前の店よりも閉店時間が早いので、従業員達が白い子供を見かけているのかは知らない。
店に用がないなら閉店時間でも、そもそも入居する店舗がなくても子供は来ているのではあろうが

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