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手間の要らない空気清浄化計画

上の方を使ったあとの万能ネギの根っこの部分、あれを植えると育つんだよ、みたいな話を耳にして試してみたんですね。したところ、ほんとだ、へええ、こんなんで育つんかいな、おもろいのぉ、なんてんで楽しくなりました。かれこれ20年前ぐらいかな。根が幼稚なのでしょう、そこそこの勢いがつき、青紫蘇、バジル、パセリ、唐辛子、オクラ、なんてなやつらを育て始めるにいたった次第。これがですね、特に頑張らなくても勝手に育ってくれて、我が家の食卓を幾許か潤してくれるようになったんです。素晴らしい。
ただ、パセリだけはキアゲハの幼虫に全面的にやられまして、というか、これじゃ幼虫の食べるもんが足りないよってことになり、慌てて育ったパセリを買ってきました。まさに本末転倒であります。ところがですね、そのパセリを食べないんですよ、腹ぺこなはずなのに。残留農薬的なことなのかもなあ、などと訝りましたが、さて。
それはそれとして、パセリが駄目なら何か他のものをってことで手軽に手に入るものだとアシタバの苗だねってんで、じゃんじゃか買ってきて植えまくり、結句、食欲旺盛な幼虫連中のためのキアゲハ農場みたいな展開になってしまったのでした。食欲旺盛/幼虫連中/黄揚羽農場/大展開……って、漢字だけにしてラップの歌詞にどう?……って、そういう話じゃなかった。
戻ります。なおも、連中は活躍し、そこらで買ってくる小さい苗じゃ追いつかなくなり、でっか目のやつを根っこごと八丈島の親戚から送ってもらうような展開に。最終的にはそこそこの面積をアシタバのために、というか、キアゲハの幼虫たちのために用意した次第。何をやっているのやら……ってな話をからす新聞にあれこれ書いたような気がするなあ。今やそれも遠い昔。たびたび話題になるけれど、からす新聞再開の日は来るのだろうか。あの顔ぶれで打ち合わせと称して呑むの、楽しいんだよね。
唐辛子の使い勝手が良かったので、調子にのって、次の年には当時世界一辛いとされていたハバネロを植え、さらにその翌年にはハバネロを超えて新チャンピオンになったブート・ジョロキアを植え……って危ない方向に進んだんだけれど、結局のところ、おれって、そんなに辛いものが得意じゃないんだなと思い知らされるに終わり、普通の唐辛子に回帰した次第。
なんてなプチ菜園生活を送った数年がありましたが、その後、団地の建て替えの間、引越しを余儀なくされまして、それっきりになってしまったんです。「SCIENCE TOP」なんて英字新聞の小見出しみたいな響きですな、菜園ストップ。

世界をコロナの一大ムーヴメント……っていう表現は微妙だけれども……が覆っています。ようわからんことが多い。おかげで、今まで考えなかったようなことを学ぶところはありますな。その中のひとつに部屋の中の二酸化炭素濃度を測るってことがありました。
音楽部屋というのは音をなるべく外に出さないように作られています。防音ってことは、つまり、空気の振動が出ていかないようにするということ。あたりまえですかね。二酸化炭素濃度モニタってのを導入してみると、明白でした。人が(つまり私ですが)そこにいるとがんがん上がっていく。その数値に対する評価ってのはあれこれあるわけですが、作業効率が下がっていくのは確かなようで、1,000ppmまでってのが厚労省の室内濃度の目安だったかな。うちの測定器だと800でイエロー、1,200でレッドが点灯します。そうなると、おいおい、換気が必要だぜってことでございます。これがまあまああっという間。
で、もっと上がっていくと作業効率って段階ではなく、個人差があるとはいえ、眠気におそわれたり、さらに進むと頭痛や眩暈、はてには意識が危うくなったりもするそうですよ。おっかねえ。換気は重要なんだなあ。そういうことを考慮して、学業等々に差し支えが出ないようにきちんと教室内の二酸化炭素濃度を計測している学校もあるそうです。立派なもんだ。杉並区もがんばりなはれ。
で、そんなようなことをあれこれ呟いていたところ、空気環境をよくするには緑でしょう、という友だちからの助言があり、おお、そりゃそうだよな、と。ちょこちょこ調べて、育てるのがものすごく楽で空気清浄効果が高いというサンスベリア・ハニーってやつに決定。Sansevieria Hahniiってスペルなので、学名っぽく読むならサンセヴィエリア・ハーニーって感じでしょうか。固有名詞の発音はようわかりませんけれども。
早速ゲットした苗を眺めつつ、これが我が音楽部屋の空気を清浄化するために活躍する若人ですよ、ふふふふなどと阿呆面さげて独りごちたりしていたところ、様子を見にやってきたのは三猫きょうだいのうち愛嬌担当の銅くん、くんくんとちょっと匂いをかいだと思ったら、すかさず葉っぱの先端を齧る。齧る。齧る。齧る。おーい、何やってんだよ、と声をかけるとダッシュで逃走。4枚しかない葉っぱの先端数ミリが全部食べられてしまったのでした。慌てて、猫に有害ではないか検索したところ、問題なさそうで一安心したわけですが、さて、サンスベリアの方はどうなんだろう。初日からこんな目に遭遇するようじゃ頑張れませんよ、と枯れたりしてしまわないかと懸念した次第ですが、とにもかくにも、育てていきました。
育て方が簡単という噂は本当でしたね。水も忘れた頃にあげるだけ。害虫よけに葉水ってことをするといいよってことなので、ときどき霧吹きでちょいちょい湿らしたりして。そんぐらいのことしかしていないのに、枯れることも萎れることもなく日々が過ぎました。
そんなこんなのうちに暖かい季節がやってきた。驚いたことに数センチ離れたところから、新しい葉っぱが顔を出してきたんです。大きめの鉢に移しておいて正解だったな。これ、ひとつには銅くんが葉先の成長点ってのを齧っちゃっからなのかもしれません。葉っぱってのは先端の成長点ってところを中心に育っていくものらしいんですね。そこがなくなっちゃったから、エネルギーのやり場に困り、根っこが分岐して、脇の方から新しい葉が出てきたのかも、なんて。専門的なことはわかりませんけれども。まあ、とにもかくにも、親株子株のふたつになった次第。
さらにですね、このサンスベリア・ハニーってやつは切り取った葉っぱを直に土に植えても、水に挿しても根が出てくるぜよという情報を得て、試してみたところ、時間はかかりましたが、成功しました。そんなわけで、いつのまにか、我が家はヤング・サンスベリア・ハニー農園化しつつあり、近所の友だちにお分けしたりしており、ですよ。
これから寒い季節に向かうので、室内でのんびりって感じにしていくことになります。なので、さらなる飛躍はまた来春以降かな。一株ぐらいは庭に直で植えて日本の冬を自力で乗り越えられるか試してみたい誘惑にもかられますが、さて、どうしたものか。

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