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価格と価額-どう違う?

(全裸不動産 全裸幡随院)
不動産取引にかかわらず、およそあらゆる場面で“価格”という表現が用いられることもあれば“価額”という表現が用いられることがあり、一体この両者はどう違っているのだろうかという疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。違いを意識することなく適当に“価格”あるいは“価額”を用いている人もいれば、自分なりの違いを意識して両者を使い分けて用いているという人もいることでしょう。

土地の値段についても、あるときは“価格”、あるときは“価額”と表記されていたりしますし、税務でも、そうした場面に遭遇することもあります。不動産鑑定評価にしても、“評価格”だったり“評価額”だったり分かれていますが、どうも厳密に使い分けられているようには見えない。そう思う人が圧倒的ではないかと思われます。

ただ、よく観察してみると、単価表現する際には、例えば“1㎡あたりの価格”といいつつ、他方で総額表現する際には、例えば“鑑定評価額〇円”という風に用いられているきらいはあります。

では、単価表現の際には“価格”、総額表現の際には“価額”を用いればよいのでしょうか。どうも、そうとも言えないようです。“試算価格”とか“比準価格”という表現は見られても、“試算価額”とか“比準価額”という表現は見られません。しかし、不動産鑑定理論では、“試算価格”を調整した上で算出される“鑑定評価額”には“価額”が用いられているのです。

相続税評価の場面に移ってみてみると、取得財産の“価額”から債務と葬式費用の金額を差し引いたものを“純資産価額”とし、これに死亡前3年以内に贈与された“財産価額”を加えたものを“課税価格”と呼びならわしています。“課税価格”から基礎控除を引いたものが相続税の総額となり、これに税率を乗じることから税額の計算が開始されるわけですが、この場合の“価格”は、決して単位表現ではなく総額表現のはずです。

ということは、“価格”は単位表現の際に、“価額”は総額表現の際に用いられるとばかり言っていられないことがわかります。しかし、何らかの違いを読み取ることができそうです。先ほどからみてきた“価格”の用いられ方は、最終的な値段としては決して用いられていないということです。

すなわち、計算過程にある数字、いまだ最終的な値段が確定していない段階での途中の計算過程に登場する抽象的な数字として“価格”が使われていることがわかってきます。逆に“価額”とは、実際に取引された値段だったり、計算の終局として算出された結論としての値段という意味で用いられているように思われます。

仮に、両者を厳密に使い分けずに用いることで具体的な不利益が生じることは考えにくいですが、“価格”と“価額”は似たようでいて、一応使い分けられている現実がある以上、ちょっとは意識して両者を使い分けして用いてみるのもいいかもしれませんね。

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