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【2020年ひとり名画座】1月②「家族の肖像」

①の『若者のすべて』が長くなってしまったので、二本目の『家族の肖像』はこちらに書くことにする。


家族の肖像

『若者のすべて』と違い、こちらはカラーかつ英語の映画。上映時間も『若者のすべて』と比べるとずっと短い。デジタル修復されていたのか、結構画質も綺麗だし音も割れていなかった。

使用人のみ雇い、絵画を収集しながら独りで暮らす教授の老人のところに、ある日絵と引き換えに住んでいる建物の上の階をしばらく貸してくれないか、と四人組がやってきて、それまでの静かな暮らしが滅茶苦茶になっていく。

おまけにこの四人組、どうにも素性がよく分からない(一応有名な人も一人いるが)。全く合わない相手に振り回され辟易としたかと思えば、四人組―――特にその中でも一番謎の多いコンラッド青年と少しずつ打ち解けていったりもする。

というのが、めちゃくちゃザックリとした粗筋。実にザックリである。


ストーリーや小道具、部屋のデザインなどはこちらの方が好みだったので、「考えながら古典を観る」というよりも、単純に映画として楽しんでしまった。感想が短めなのはそのせいです。

ええ、決して『若者のすべて』で長々と書きすぎて力尽きたわけではありませんとも。

こちらも『若者のすべて』と同じく、ヨーロッパの近現代史もっとやっていたら更に色々分かって面白かったと思うので、日頃の己をやや反省。それでも多少はかじっていたおかげで話にはついていけたので、少しはやっておいて良かった。何事も無駄じゃないんだなぁ。人間だもの。みつを。


以下、ネタバレ込みの感想。『若者のすべて』ほどまとまった話も特にないので、箇条書きにて記載。

・初めの「下見」と称してどんどん相手の人が増えていく描写、以前観た『マザー!』の出だしが過ったせいで脳内でずっと警戒警報が鳴っていた。自分のテリトリーによそ者軍団の方が少しずつ増えていき、気付けばこちらの方がアウェイみたいになっているという状況、自分だったらめちゃくちゃ怖いし不安になるんだが。

・リエッタ(娘の方)の

「無邪気で悪気がなく、単に思いついた自分の中での名案をあれこれ言っているだけであり、相手の信条や領域を踏みにじっていることには気が付かないどころか、そんなことがあろうとは思いもしていない」

みたいな言動のあれこれが凄い。

具体的にどの人と思い浮かぶ訳ではないが、過去にやられて素直にいいね、と言えず、「あー……(苦笑)」みたいな曖昧な相槌しか打てなかったあれこれを思い出す感じだ。リアルにあるよなぁこういうこと。

しかもこのタイプ、怖いのは言われた方が、自分のそれまで大切にしたことを脇に置いて「ありかもしれない」と思わされてしまう可能性があることだ…。(※あくまで個人の感想です)

・時々出てくる幼少期の回想のようなものが凄く好きなのでもっと見たかったような、あのわずかしか語られないのが更に個人的ポイントの高さを生み出しているのでこのままでもいいような。ああいう「全てを語らない背景」みたいなのがとても好きだ。

・友人は好きだが個人のテリトリーに断りなく入られるのが滅茶苦茶苦手、かつひとりの時間もないと死んでしまう人間なので、そういう部分はしっかりと作中の一人の意見としてでも良いから否定してほしいというか、教授も怒りをうやむやにされたままにするなよ……ともやついた部分がちらほらあった。

・それはそうとして「血の繋がらない家族のような何か」とか「名詞の当てはまらない絆」(友情とも家族愛ともロマンスとも言えないやつ)みたいな要素にてんで弱いので、教授とコンラッドの関係は最後まで凄くポイント高かったぞ!

・舞台が教授のいる建物の上の階と下の階のみで展開されているんだが、後になってから監督のヴィスコンティが病気のせいで移動範囲が限られていたため、という話を聞いてめちゃくちゃ興味深かった。へぇええ。

限られたスペースで見せる、というのは演劇のセットみたいなのに、カメラがあるか無いかと、動けないのが観客か監督かでこんなに色々違うんだなぁ。どちらも素人なので勉強になった。

・教授の部屋のセットが好きだなぁ。本棚の中の隠し部屋、ソファ、部屋の隅かつ窓際の書き物机、一面の本と絵画とか、「住みたい部屋ポイント」がめちゃくちゃ高い。



とりあえずはこんな感じでした。

二月も一応、二月内には観たのでそのうち感想をぼそぼそと載せようと思います(一月の映画の感想を書き終わったのが三月ってどういうことだ?)

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