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有事に備える台湾と、準備が進んでいない日本

はじめに

 7月23日に台湾で年に一度の防空避難訓練「第47回萬安演習」が実施され、全国民が地下シェルターに避難し、街はトップ写真のように無人となった。
 また、7月22日から26日には中国侵攻に備える全軍の「第40回漢光演習」も行われた。
 筆者の友人の台湾人によれば、中国の台湾侵攻リスクは高くないため、危機感はあまりないが、毎年の演習で備えが進められている。日本は東日本大震災以降、防災意識が高まっているが、有事の準備は進んでいないため。台湾の例を参考に有事への備えの必要性を考えたい。

漢光演習

 漢光演習は中国侵攻を念頭に置いた台湾全土で行われる防衛訓練で、今年で40回目を迎える。台湾有事の可能性が高まる中、今年はより実践的な訓練が行われ、事前の演習シナリオなしに通信手段が途絶した状態での各部隊の作戦遂行が試される。陸海空軍に加え、インフラや空港のサイバー防御演習も含まれる。自衛隊は主に演習場で訓練を行うが、台湾は市街地や高速道路を滑走路化して飛行訓練も実施する。
 今年から台湾国防部はAIを用いた在住外国人向けに18カ国語の広報を行い、子供向けにアニメでの説明も提供している。

萬安演習

 萬安演習は台湾各地で毎年行われる防空演習で、有事発生時の避難対応を訓練する。演習中、バスや車、バイクは路肩に停車し、屋内避難が義務付けられ、レストランは電気、ガス、水道が制限されるため提供メニューも制限される。MRTは下車しても駅から出られず、通行人は地下シェルターに避難する。参加しない人や指示に従わない場合、最大で約50万円の罰金が科される。日本語など外国語でのアナウンスもあり、外国人も意識を持つよう促されている。

萬安演習の告知

台湾の危機感

 筆者の友人によれば、台湾国民の危機感はそれほど高くない。しかし、高校では銃器の取り扱いや包帯の巻き方などの救護訓練が必須科目となり、徴兵は4ヶ月から1年に延長され、毎年の全国民参加の演習で有事に備えている。
 台湾内政部によると、全国に約11万の防空避難設備があり、8,665万人を収容可能で、これは全人口の約4倍に相当する。これらの避難設備には食料や水の備蓄はないが、一時的に爆風を防ぐことができる。
 国民は有事には勇敢に戦う覚悟があり、台湾国防部の訓練予告ビデオでも「自己國家 自己守護」(自分の国家は自分で守る)と強調している。

報道ステーション
インタビューより
報道ステーション
インタビューより
台湾国防部 漢光40演習
予告ビデオより
台湾にはあらゆる所に防空シェルターが整備されていて
収容可能人数も示されている。

有事への準備が進んでいない日本

 日本の自衛隊では富士総合火力演習などの演習場での大規模演習は行われているが、左派勢力や市民団体の反対で、台湾のような自衛隊、警察、消防、国民が参加する有事に備えた市街地演習は行われていない。
 また、シェルター整備も進んでおらず、2023年4月1日現在、全国の緊急一時避難施設は約5.6万ヶ所、そのうち地下シェルターは約3,000ヶ所のみである。(台湾は約11万ヶ所) 東京都は2024年1月にやっと思い腰を上げて地下鉄麻布十番駅に大規模地下シェルターを整備する方針を固めた。
 内閣官房は「国民保護ポータルサイト」を設置し、有事の際の身の守り方のマニュアルや避難場所を提供しているので、一読することを勧める。

訓練に反対する左派勢力とプロ市民
市街地の移動などの訓練に反対する左派勢力とプロ市民
災害救助に自衛隊の制服着用に反対するプロ市民

まとめ

政治的イデオロギーに関係なく、日本人は皆「戦争反対」であり、日本が戦場になることを望んでいない。
 しかし、日本は価値観を共通しない「ならずもの国家」に囲まれているため、自然災害と同様に有事への備えが必要である。
 「自分の国は自分で守る」という意識を持ち、自衛隊、警察、消防と国民が連携した実践的な演習・避難訓練が抑止力向上のために求められ、野党は有事の際の避難手順や避難場所の整備を政府に強く求めるべきだ。
 国民に「自分の国は自分で守る」意識を育てるために、教育から始めることが重要であり、正しい歴史観を持つことが大切である。そのために、ぜひ令和書籍の「国史教科書」を活用してもらいたい。


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