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【行き詰まったアスリート向け】 「ちゃんとしない」「打とうとしない」「振ろうとしない」 「〜しない」メンタルトレーニング

スポーツ選手は、さまざまな問題を発見するのが得意です。

腰の動きが悪い。クラブやバットの動きがおかしい。ヘッドが走らない。下半身が動かない。そして、その問題をなんとか直そうとします。

しかし、こうした問題解決のアプローチは上手くいかないことが多いのです。

実は、問題だと思っている箇所は本当の問題ではありません。問題の箇所をダイレクトに直そうとするほど、逆に全体のバランスを崩す場合がよくあります。

違和感を感じている箇所は、問題へのアプローチの手がかりではあります。メンタルトレーニングでは、いかに問題に直接アプローチしないかという視点から取り組んでいきます。放っておくというのではなく、それを引き起こしている本当の要因を探していくのです。


オリンピック出場を目指している走り幅跳びの選手は、上半身と下半身の連動が上手くいかないことが悩みでした。下半身が強くなると上半身がついていかない。上半身に力が入ると下半身が止まってしまうのです。それまでは、どこか違和感があれば、その部分をいかに直すかに取り組んできました。私が出会ったときには、腹の使い方が悪いのではないかと、腹の筋力の強化に取り組んでいました。しかし、なかなか思ったようには上手くいきません。一つを直そうとすると、また次の問題が出てくるということを繰り返していました。

これは、「遠くに飛ぼう」とすることに意識が行き過ぎていたのです。そこでメンタルトレーニングでは、いかに「飛ぼうとしないか」をテーマにしました。

この選手の場合、飛ぼうとすると、強く正確に地面を踏み込もうとします。すると足が地面に着地するときに焦りが出るので間がなくなるのです。また強くという意識で踏み込んだ結果、直角的に地面に当たりやすくなります。その反作用で逆にブレーキをかけていることも分かってきました。無理に前への力に変えようとするので、全身のバランスが崩れるのです。それがお腹の違和感に顕れていたのです。強く踏み込むのではなく、ブレーキがかからない踏み込みを探究する中で、本人いわく直角からまあるい踏み込みへと変わっていきました。飛ぼうとしないトレーニングを重ねる中で、自然に問題は消えていました。


あるプロゴルファーは、試合で緊張すると腰が回らなくなるのが課題でした。腰を回そうとすると、スウィングのバランスを崩してしまうのです。また、動かない体を無理に動かそうとするので、右肩を痛めていました。部分にこだわったフォームの修正は、他の身体のパーツに負担をかけるようになり、結果的に怪我につながりやすいです。

これは「ちゃんと打とう」という意識が強すぎたのです。

ゴルフという競技は、一回しか打てません。なので、一打ごとに成功と失敗という結果がはっきり現れます。だから、失敗をしたくないという意識が強くなる傾向があります。このプロゴルファーの場合は、ミスをしたいくないという気持ちの裏返しで「ちゃんと打たなければ」という意識が強化されていました。

いかに、「ちゃんと打たなければ」という意識を薄めていけるか。そのために、染みついた結果へのこだわりをリセットすることに取り組みました。それは、結果への意識を一度捨ててプレーすること。スコアカードにはスコアの他に、振ったときの気持ちよさを点数化してもらいました。意識をスコアから自分自身の内側の感覚に戻していくのです。

また、ちゃんと打たなければという意識は身体に余計な力みを生み出します。特にボールがクラブに当たるインパクトに対してそれが強くなっていたのです。インパクトではちゃんとボールを捉えなければならない、右に押し出してはいけない、左にひっかけてはいけないという意識が働くのです。プレッシャーがかかった場面でミスが許されないと思うと、「ちゃんとスイッチ」が発動します。その結果、インパクトへの意識が強くなりすぎて、腰が回らなくなっていたのです。いかに、インパクトへの意識を薄めていけるかをトレーニングするなかで、少しずつ腰が自然に回り始めました。


ある野球選手は、中途半端なバッティングになるのが課題でした。振り切れとコーチからは言われて振り切ろうとすると、大振りになってしまい、今度はコンパクトに振れと言われる。振ろうとすると力んで、コンパクトに振ろうとすると小さくなってしまう。これは、「振る」ことに意識が行き過ぎているのです。

いかに「振る」という意識から離れるか。

ちなみに振ろうとするほど、目に力が入ります。また、歯を食いしばります。振るという意識には、さまざまな要素が含まれています。そのために、ボールを見るという意識から、ボールが自分に向かってくるという受け取る目のトレーニングをします。また、振ろうとすると前半身ばかりが力んでいました。後ろ半身、つまり背中側とのバランスをいかにとるか。こうしたトレーニングを重ねていく中で、徐々に振るという意識が薄くなる、結果的に「振れている」という状態になっていきました。



もし、あなた自身やあなたのコーチが、問題点に直接アプローチしようとしていたら一旦立ち止まることをオススメします。ただ誤解がないように申しあげると、それはコーチが悪いのではありません。コーチがあなたのことを懸命に考えているからです。

ただ、懸命になりすぎてしまうと、コーチも選手と同じ視点から問題を見てしまうのです。早く調子を取り戻して欲しい。そうすると、問題箇所を直接直そうとしてしまうのです。

問題というのは、真の課題を発見するための手がかりになります。いかに、本当のテーマに気づけるか。そのためには、一度立ち止まって、すぐに直したいという焦った心を鎮めましょう。紹介したアプローチは遠回りに思えるかもしれません。ただこうしたアプローチはまどろっこしいかもしれませんが、真のテーマに辿り着くために必要なプロセスなのです。


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