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寂しさに負ける やむにやまれぬ何かがあなたを動かす

先日、食堂で思わずスタッフを怒鳴ってしまいました。

返事や挨拶ができていないので怒ったのですが、これは表面上の理由です。

私の中のなにかが爆発したのです。

突然怒鳴られたスタッフからは「自分はまったくそんな意識はありません。そんなことをいわれるなら辞めます」と言い返されました。私たちが揉めているのを見た店長が慌てて駆け寄ってきました。

それまで、食堂での人間関係を心配していました。スタッフ同士が喧嘩をして辞めてしまうという夢もみました。

しかし、まさか私が従業員と揉めるとは。

このとき、私の心は泣いていました。「無視されているのがつらい」と言っていました。社長が従業員に言うような言葉ではないでしょう。


寂しさ・・・


これは私の抱える苦しみです。

寂しさの前では、コーチングも禅の修行も吹っ飛んでしまいます。

このとき、寂しさに負けました。

情けない社長ですね。そう思います。このとき自分は、なにかに突き動かされていました。言わざるを得ない何かがあったのです。



前回の記事で、「宿業」について、お伝えしました。
失敗だらけで人生を生ききる アドバイスより大事なものとは

仏教において「宿業」とは、生まれながらにして宿している業(カルマ)であり、過去生からの因縁ともいえます。



宿業には、良い悪いはありません。

あなたを深いところで突き動かしている、なにかです。



私の場合は、寂しさに負けました。これまでも寂しさに負け続けてきました。

人には、どんなにあがいても負けるものがあります。自分ではどうにもならない苦しみ。

でも実は、それこそがあなたを救ってくれるものなのです。私の場合は、寂しさが道を照らしてくれています。

食堂をはじめたのは、ある女性とのご縁からと以前の記事で申し上げました。「女性の夢をサポートしたい」というのが表面上の理由です。もっと深い部分では、彼女の温かさに心惹かれていたのかもしれません。

そして、この厳しい世の中だからこそ、ホッと一息できるあったかい場所を作れればと思ったのです。

いちばん温かさを求めているのは自分かもしれません。食堂は、「寂しさ」から生まれたとも言えます。



翌日の朝、私からスタッフに謝りました。

「昨日はごめんなさい。いつも本当にありがとう。本当に頑張ってくれているから、無理しないでね」ということを伝えました。スタッフも「昨日は言いすぎました」と言ってくれました。

スタッフの方は、内心呆れているかもしれません(そうでないことを祈ってはいますが・・・)。子供じみていて、自己中心的で、とっても残念な自分。そう理性は評価する一方で、私の中で「寂しさ」が溶けていくのを感じました。



また前回の記事で、底に落ちたときに支えるのがコーチの役割と申し上げました。

先日、あるクライアントさんから、嬉しい言葉を言われました。

「一番苦しい時に、どんなときも赤野さんだけは味方でいてくれた。それがなければ苦しさに耐えきれずつぶれていたでしょう」と感謝されたのです。

ドン底を経験された方は分かると思いますが、そのとき何もなすすべはありません。誰も助けてくれる人もいない。不安と焦りでいっぱいで、すべてが信じられない。絶望と孤独感の中で、生きることが色褪せます。

「なにかをする」というのは、まだ余裕があったからできていたことに気づくでしょう。

なにもない。なにもできない。どうしようもない。

そういうとき、コーチは何ができるでしょうか。なにもできません。

知識やテクニックは、通常のコーチングでは重要です。やる気を引き出すためにいかに話を傾聴し、効果的な質問するか。また、承認の言葉をいかにかけるか。

しかし、そうしたものが一切通用しないときがあるのです。

不慮の事故や病気もそうでしょう。また、愛する人の死、大切にしていたものが失われる危機。

そうした、どうしようもない状況に陥るとき、コーチも平静ではいられません。傷つきます。コーチも囚われます。ドン底では、コーチという立場でいられなくなります。

そういうときにできることは、なにもありません。ただ寄り添い、無心で話をきく。それでも何かいいアイディアが出るわけでもないし、解決への糸口も見つかりません。

これはクライアントさんにとっても、またコーチにとっても苦しいときです。


この闇は永遠に続くのではないか。

この暗黒のときをいかに耐えるか。


宿業の荒波に揺さぶられているとき、ドン底まで落ちることを運命が求めていることが多いのです。

暗黒の中で、起こっているエネルギーがあります。

それは、あなたの中にある固まった、なにかを溶かしてくれるはたらきです。

過去の生き方、固定概念、守っているもの・・・

そうしたものは、なかなか自分では変えられません。大事にしてきたものとの別れは苦しく、悲しく、痛みを伴うからです。外からの大きな力で変えざるを得ないという状況になって、少しずつ溶けていくのです。

ドン底にいるときが新しいあなたに生まれ変わるときです。

ただ、ドン底に1人でいるのは苦しすぎます。


一番寂しいときに、そばにいる。


これは、寂しさで苦しみ、寂しさに負けている傷を持っている私の生きる原点かもしれません。

それがたまたまコーチという仕事になりました。

先日、あるクライアントさんに、食堂でおこったいきさつを話しました。このクライアントさんも、今新しく生まれ変わっている真っ只中です。

普段は、ここまで自分のことは話しません。でも、なぜか話していました。そして、以下のようなメッセージをいただきました。

「私は赤野さんにコーチをお願いしていて、一番安心できることがあります。それは、赤野さんも生きていて、闘っている。闘っているというか、出逢う人たちと一緒に一生懸命生きている。赤野さんのそういう話を聞くと、私も勇気が出ます!シェアしてくれてありがとうございます。弱くていいんだなぁと素直に思えます」

この言葉をいただいたとき、心の中に涙が溢れてきました。


生きてきてよかった。


寂しさがなにかとつながった瞬間でした。そのとき、寂しさはもう1人ではありません。寂しさが溶けて、あったかい気持ちに変わっていくのが分かりました。

コーチは人をサポートするのが仕事です。でも、実は救ってもらっているのは私なのだと思います。


あなたがいつも負けているものはなんですか?

なにがあなたを突き動かすのでしょう?





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