英文法を分類する

さて、「文型」=「動詞がもつ固有の型」を中心に英文法を捉え直すことが良い、という話を延々としてきたが、この前提をもとに、英語の特徴(=英文法)を以下のように整理していく。

【英文法の分類】

①文型決定のためのルール ・語句節の範囲を定めるもの
  ・動詞の基本的な意味を決めるもの
  ・見た目の文型に変化を及ぼすもの

②時制・助動詞に関わるルール =文型を崩さずに動詞に意味を付与するもの

③同じ形の繰り返し =同じ形を繰り返す表現をまとめたもの

④その他「文法」という括りからは外れる、英語特有の表現・特徴

このようなまとめ方を見て、それぞれに該当する項目が何となく浮かぶ人も多いだろう。一方で、学校の英文法の授業においてはそれらがバラバラな順番で与えられていることにも気づくだろう。

例えば、助動詞は比較的初期の段階で習うはずだが、これは文型決定にはほとんど影響を及ぼさない。また、助動詞はその性質上、どうしても覚えるしかない表現が多く、文型をやった直後に時制・助動詞と進んでいくことが多いため、頭を使って文型を判断する手順を最初に習ったとしても、それが霧散してしまう。

全ての英文に文型は存在し、それが意味を決定するものだ、と最初に習うはずなのに、いつの間にかどこかにいってしまう。ほとんどの高校生にとって英文法の一単元でしかない文型の項目が、最も大事なのだ。ひたすら単元別にやるのではなく、学ぶ順番が大切である。そのため、まずは文型を決定するために必要な項目から順番に学んでいこう。

その前に、これは「大学入試対策」であるから、そのことに関連した話をする。

大学入試における制約=短期間での上達
単元の特定を効率よく進める武器=抽象化

これから君たちは「大学入試で英語の問題を解く」ことを目標として、この英文法の学習に取り掛かる。そのために必要なことは、英語に限った話ではないのだが、

問われていることの特定=単元の特定

に他ならない。問われていることが何かわからなければ、答えようがない。数学や物理や日本史などどの科目でもそうだろう。

英語において、単元の特定のためには、先述した「知識=英語の基本ルール」が頭に入っていないといけない。それだけでなく、基本ルールがそこにあることに「気づく」練習が必要である。基本ルールを学んだ上で、観察力を養成し、基本ルールがそこで動いているということを、英文を読んで気がつけるように訓練が必要だ。

これは決して、英語の表現と日本語の意味を一対一で結びつけていくことではない。多くの人が、英語と日本語の表現の対応を覚えることが、「英語を勉強する」ことだと勘違いしている。

言葉の背後に動くシステムが違うものを、同じように理解することはできない。


英文法を正確に理解して、英語を自分のもののように読んでいる人も、「英語を日本語のように読む」わけではない。英語のシステムを理解して、それを活用することで英語を読んでいるのだ。「英語は英語のまま理解する」とは、この意味であり、決して、前から直感で意味を取っていくと大体あっている、ということではない。あくまで背後のルール・システムを理解することが必要なのだ。

ところが、背後に同じルールが働いていても、表現が異なるものを、「同一の現象である」と認識することは、極めて難しい。人間は印象の生き物であり、予め警戒していなければ、違う表現は違う意味だと捉えてしまう。基本ルールを詳細に学ぶことで「何に警戒すべきか」は学ぶことができるが、「表現が違うものの背後の同じルール」を見抜くためにはさらなる工夫が必要になってくる。

単元の特定に必要なこと=見た目が違う表現でも、背後のルールが同じなら、同じ意味のグループだと判断すること

この「違うものを同じものだと捉える」のは、短期間で入試を突破していくためには必要不可欠なスキルであり、おおよそ受験生のほとんどが自然には身につかない力である。

なぜ必要か。英文は一文一文その表現が異なるため、どれだけ「英語表現と日本語訳の対応暗記」を進めていっても、背後のルールを見抜かない限りは、これまでやったものと同じ意味だとは気づかない。その状態でどれだけの演習を重ねていっても、一言一句同じ問題に出会わない限りは点数にならない。

普段から、1つ1つの演習において、どれだけの「ルールの特定」ができたかが大事なのだが、ほとんどの人は頭の中から自分が見たことのあるものから適当そうなものを選んでいくだけであり、背後のルールを見抜くという発想がない。

形が違う問題でも、その背後に流れるルールは、英語である以上は同じである。「表現が違うものを同じだと捉える」スキルは、そのことを見抜くために必要なスキルなのだ。見たことがある表現を切りはりするだけでは、相当に記憶が優秀な受験生か、自然と抽象化ができるような受験生しか合格しない。短期間で英語を上達させるためには、延々と問題を解くのではなく、1つ1つの問題を解く中で、背後のルールを見抜く力を高めていかなくてはいけない。

できる人の答案にだけ読み解くヒントが書いてあるわけがないのだ。誰でも目の前の文章は同じ。それが読み解けない理由は、普段から「表現の背後にあるルール」を見抜こうとしていないからに他ならない。

基本問題を繰り返していても、見覚えのある表現を当てはめるだけにしかなっていない人が、どれだけやっても抽象化できることはほとんどないだろう。問題を取り組む態度そのものを変えなくてはいけない。

そして、なぜ身につかないのか。それはこれまで繰り返したように、「場当たり的に日本語訳を当てはめて並べ替える」ことを行うことが、英語を読む(笑)ことだと思っており、その手順から全く抜け出すことがないからだ。日本語に何かしら直せればそれで安心してしまい、そもそも、目の前の表現の背後のルールを見抜く、ということをやろうとしないのだ。

発想がないのでやらない、やらなければ練習も積めない。そもそも「英語の勉強」の捉え方を根底から間違っているのが、高校生の大半である。

【「違うものを同じものだと捉える」抽象化のスキル】
なぜ必要か… ルールは同じでも、目の前の表現は1つ1つ異なる。何のルールが適用されているか把握できれば、問題を解く手がかりにつながる。
なぜ身につかないか …そもそもこの発想がなく、練習してない

本稿のまとめ

そうは言っても、これまで日本語訳を断片的に知っている英単語・熟語を適当につないで意味をとってきた人にとっては、抽象化だの、「違うものを同じだと捉える」だの言われても、その指針が見えないのではないかと察する。そのための指針として、次の記事で、いくつかの用語を説明する。

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