救済所勤め2

罪人は、商店街に入っていく、夕飯の材料を買うために。
「いつ来てもここは活気があって良いな、祖国を思い出す」
肉屋の前へ来るのにそう時間はかからなかった、背の高い大男と言うにふさわしい190センチはありそうな巨体を持つ肉屋の店主に罪人は話しかける。
「あの、喰牛のもも薄切り、1.5キロお願いします」
「あいよ、承った、それにしてもあんちゃん、そんな沢山の量、何に使うってんだ、俺には予想もつかない、何より、運ぶのも相当つらいものがあるだろう」
店主は肉を切っては量りの上に乗った袋に入れながら心配そうに話しかける。
「見た目よりは力ありますから、大丈夫ですよ、それに、こいつらもいますから」
店主が肉を切る動作を少し止め、罪人の足元を覗き込む、すると、ハスキー犬が2頭おり、その2頭には車輪の付いた箱が紐で結ばれ、まるで犬ゾリのソリがそのまんま車輪の付いた箱に変わったような、そんな印象を受けた。
それを見た店主は少し驚きながらも、安心したように、
「それなら安心だな、金貨1枚でどうだろう」
そう言った。
「ん〜、銀貨10枚、」
「あんちゃん、流石にそこまでは、銀貨17枚だ」
「じゃあ、15枚でどうだろう」
「ん〜、良いだろう」
してやられたような表情をして、店主は値段を確定した。
「ありがとう、また来る」
金を払い、肉を箱の中に入れ、罪人はそう礼を言い、肉屋を後にした。
「次は、ネギ、白菜、どちらも八百屋だな、あそこの店主は少しケチだからな、どうしたものか」
悩みながら歩いていると足は早く進んでいるように感じるもので、それなりに離れているのにすぐに着いたように感じた。
そこには少し歳のいった160センチほどの女性がいた、罪人は話しかける
「どうも、ネギ6本、白菜3玉、お願いします、」
少し考えた面持ちで、罪人は言った。
「はいはい、わかった、ちょっと待ってくださいね」
その女性は手際よく袋に詰めると、
「銅貨10枚だよ」
「ええ、4枚でお願いしたいです」
「ふ〜ん、じゃあ、8枚、これよりは下げない」
「うぅ、わかりました、」
罪人は少し不満そうな顔をしながら、金を払い、商品を箱に入れ、
「では、また来るかもしれないです、」
そう言って八百屋を後にした。
「白滝、は、どこにも売ってなかったな、シンに作ってもらうか」
買い物編 終わり


一方、少し時は戻って、罪風は、罪人と別れ、帰路に就いていた。
「はぁ〜、楽しみだな♪すき焼き♫」
商店街の裏路地に罪風の明るい声が響く、日は暮れてしまって、裏路地は暗く、恐ろしい道に変化を遂げようとしていた。
「にしても、暗いなぁ、足元が全く見えない、灯りもないから、普通、この現状を打破できないし」
罪風は立ち止まり、周りを見回しながら言う。
「シュッ」
ナイフが、罪風の胸に目掛けて正確に飛んできた、罪風は、身体をひねり、ギリギリで避ける。
「服が切れちゃったじゃん?どうしてくれんの?」
少し怒りを露わにしつつ、人差し指を立て、その先に明かりを灯す。
「シュッ、ヒュン、カンッ」
飛んでくるナイフの本数はどんどん多く、そして方向はまばらになってきた、罪風も、避けるのには疲れてきたようである、その証拠に、灯りが維持できていない。
「あ〜、面倒くさい、殺さなければいいんだもんね?」
罪風は避けつつ頭を掻きながら、防壁を作る、彼の防壁に触れたナイフは、変形し、丸い塊になり、空中で静止した、そして、ナイフを受け止めつつ、罪風は少し微笑んで、手を前にかざし、
「愚かなる彼の者を打ち払え、『狂宴』(フェト ドゥ ピッシ)」
静かにそう言った、すると、丸い塊は、ナイフを投げている者に向かって光る軌跡を残しながら飛んでいく、罪風はそれを辿って走りつつ、身をまるで踊るように動かしながら、ナイフを避ける、そして、遂に罪風は追いつき、追い詰めた、罪風は訊く、
「僕はここで君を殺してしまっても全然構わないんだよ?救済所に出しても報酬はもらえないし」
罪風はニヤニヤして、更に話す。
「そこで、君には2つ選択肢がある、このまま死ぬか、協力者になるか、どちらかだ、本当はこんな利益になりそうにない人材を匿う程の暇はないんだけど、今日は機嫌がいいから、選ばせてあげる」
周りは暗く、相手の顔はよく見えなかった、だが、声ははっきり聞こえた、相手は、よく通る綺麗な声で、
「じゃあ、協力します、いや、させて下さい、と言うのが正しいですね」
「ふ〜ん、賢明じゃん?僕の思考を読んだわけじゃないみたいだし、君、本当に無能力者?」
罪風はケラケラ笑いながら相手を立たせる。
「無能力者ですよ、疑う余地なんてないじゃないですか」
笑いつつ、少し前に歩いて出て言う。
「灯り、つけてもいいかな?」
「あ、付けないでいいですよ、僕が手を引きますから」
「何だよ、さっきまで敵意剥き出しのエグい攻撃してたくせに、唐突に変なテンションになるな」
罪風は少し警戒心を示す。
「嫌ですねぇ、僕を必ず殺すことができる者に反抗できるわけないじゃないですか、そのくらいわからないんですか?」
「お前は皮肉が好きなのか?俺とてわからない訳じゃない、只、そうだな、明るすぎないか?お前」
罪風は少し調子を崩されたような困惑した声を出す。
「開き直ってるんですよ、協力しないと殺されますからね、仕方ないことです」
さぞ当たり前のように言う、そうこうしているうちに、出口が見えてきた。
「やっとだ、やっと帰れる、ついでに隣りにいるやつの顔もわかる、」
出口からは街の明かりが見える。
「そうですねぇ〜、帰れればいいんですが?」
出口の光を背に、隣りにいた者が振り返る、それは、髪は黒く、ローブのような服を着た、色白の、紛れもない少年だった、彼はボロボロであったが、震えの無い指先で、空へ向かって合図を送る、そして、
「僕に騙されちゃったんじゃないですかぁ?罪風京介さん」
その言葉と同時に、屋根からローブを纏った暗殺者、紛れもなくそう言うべき者たちが降りてきた、その時、罪風は気がついた、上手く騙された、この時を狙われていたのだと。
「つまり、俺が上機嫌で、そんで、一人である、この時を待っていた、と、恐ろしいな。」
そう、すき焼きに気を取られたのか、ただ単に気が抜けていたのか、どちらにしても、罪風ははめられたのである。
「ふ〜ん、でも、君等を殺すことが僕にとって利益になる、それがわかっちゃったからさぁ、僕は負けないよ?」
話してる間に飛んでくるナイフを避け、言う。
「ふっ、何を言う、素顔も認識できないのに」
すごい速さで罪風の周りをぐるぐる周りながらナイフを投げつつ、言う。
「認識、出来るんだよね、利益になっちゃうからさ、素顔を知ることは利益になるし。で、君はナイフ投げしかできないのかな?それだったら実につまらないやつだけど」
「そんなわけ無いじゃないですか」
突如、辺りが爆発する、それと同時に、暗殺者たちは、罪風の位置を正確に把握した上で、そこに向かって正確に空中から落ちて、剣で刺す、計画通り、これによって性格の悪い敵である、罪風京介は死んだ、と思われた
「いや〜、残念、僕って、何でもできるんだよね」
煙が晴れると、そこには、剣を曲げられ、致命傷を負った暗殺者が倒れていた
「無傷………?あれだけやって、僕が練りに練った作戦、ただの能力者なら確実に倒せる作戦、罪風京介なら、絶対に倒せる、そんな作戦、だったのに」
少年は戦慄した、罪風のそのにやけた目に、その闇をも飲み込む黒い瞳に、状況全てに、戦慄した、そして、罪風は手を拱く、
「君も、こっちへ来るんだ、さあ」
少年の体は無意識に惹かれていく、
「嫌だ!死にたくない!生きたい!生きさせ、て、死に、たく、な、い」
身体は少年の叫びとは関係なく、罪風に近づいていく、そして、罪風のすぐ近くまで来て、止まった、罪風は少年の耳元で囁く
「公衆の面前で大乱闘しちゃったからには、それを見た人から拡散される事は間違いない、君の素顔も、拡散されてしまう、と言うことだ、それはきっと君にとって不利益だろう、だから、取引をしよう、服従すると言うならば、命だけは助けよう、但し、服従だから、命以外は貰う、もし拒めば、命さえも奪おう、さあ、どうする?」
選択肢があるようで、生きる事を求める少年には一つしかない選択肢を笑いながら突きつける罪風の声には、ただ恐怖しか感じなかった、当然、少年はこう答える、
「あ、あ、しま、す、服従、しま、す」
少年の顔は明らかに歪んでいた、それは恐怖のためである事が容易に伺えた。
「よっし、なら決まり、服従確定!」
罪風がそう言うと、少年の胸に文様が刻まれた、それは焼印のようだった。
「はぁ、はぁ、おわっ…………た?」
「うん、終わり、そこの家が僕の家、この鍵で入って、罪人にはこの紙を渡しといて」
罪風は、裏路地の出口の先にある住宅街の白い屋根を指差し、鍵と紙を渡す、すると、罪風は暗殺者を全員縛り上げ、姿を消した。
「消えた、言葉のまんま、」
驚きつつ、少年は歩き出した。


こんな所で今回はおしまいです、次回は時間かかるかも、今回よりも、ですね、だって少年の立ち絵と罪風の立ち描かないといけないんですもん、そんで、次回は罪人編(次の日まで)を書こうと思います、では、また

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