人の弱さと期待のかけ方

 もう3年くらい前に交流の無くなった人について、思うところがあるので記録する。

以前に、たぶん8歳くらい年上の人とネット上で知り合った。
その人は絵がとても上手で、勉強も好きな人だったと思う。

 当時、自分は何もかもに自信がなく、2年くらいプラプラした後にようやく正社員になれたと思ったら、騙されて契約社員として働いていた頃だったと思う。
(今は某市の正規の役人として働けているので、なんとか人並の自信は取り戻せたよ。)

薄給の非正規雇用として働く日々。
無能が就職できる最大のチャンスである新卒カードを失った自分は果たしてまともな職を得られるのかと、うっすら人生に絶望していた時期。
そんな時分であったから、人との対話にも自信の無さが表れていたのだろう…ものすごく仲良くしたくてたまらなかった人に愛想を尽かされた。
どうして愛想を尽かされてしまったのか、どうすれば挽回できるのか───
その悩みを、その8歳くらい年上の人に相談してみたのだ。

当時の自分は本当に愚かで、自分より年上の人間は皆、優れた知見と余裕を持っているものだと信じて疑わなかったのだ。
なので、それまでの関係性で話しやすかったのもあって、その人に相談をした。

しかし、その人は回答をくれなかった。
早い話、無視されたわけだ。
確か、空リプのような形で、「私は自分のことで精一杯だから、他人のことになんてかまってられないよ」という旨のツイートをその人がしていたと思う。
当時はそれを受け入れつつも、なんとなく寂しく、悲しくなった。
「相談なんて迷惑だったな」
「でも、せめてそういうことを返信という形で言ってくれたらいいのに」
「完全に無視するのは、なんだかこれまで仲良くしてもらってたというのが錯覚なんだと意思表示された気分だ…」
とモヤモヤした。

その後、1年くらいは残念な気持ちを抱えたまま、その人との関係は維持された。

 それから、新型コロナウイルスが猛威をふるい、その人はいわゆる陰謀論にはまった。
ディープステートが画策した騒動だとか、ワクチンは毒だとか、そういう話ばかりするようになったし
日本を内政干渉するようにホワイトハウスに依頼するような馬鹿げた署名などもやっていた。(←個人的には、無関係なご家族の名前まで署名に書いていたことについては、ちょっと軽蔑している。)
そのせいか、その人のアカウントは運営にBANされてしまった。
BANされる少し前に、カルトじみたものを許さない自分はその人をブロックしてもいた。

 陰謀論にハマって運営からBANされたその人を少し心配していたので、その人が以前に紹介していた別のアカウントをたまに見に行っていた。

その別のアカウントでは、それまでその人が明るみにしていなかったことを目にすることとなった。

元々はその人について、勝手に「老いた両親をしかたなく介護している、派遣社員とかの非正規雇用労働者」なんだと思い込んでいた。
普段のツイートから、そういうことを言っていたからだ。
ところが実際は、「老いた両親に養ってもらっている、最近ようやく短時間のアルバイトを始めたほぼ無職」なのであった。

その人がこれらを語ったのは後述のとおり、もっと後のことだったのだが、先に状況をまとめると、
・中学からほぼ不登校で、なんとかギリギリ高校は卒業した。そこから引きこもりの無職。
・両親は高齢で体が衰えているが、働いているのか年金暮らしなのか、いずれにせよその人を養っている。
というものだった。

これらの状況を知る前には、その人の不満ツイートなどに対して、
「ああ、(当時)まだ30代前半なのに、親の介護なんて可哀想だな」
「なんとなく、働き方が定職っぽくないから派遣なのかな?親の介護があって、そのへん苦労してるのかな?」
と思っていたのだが、知ってからは
「なんだ…前に『親がデイサービスサボった』とか言って怒ってたけど、ずっと家にいるんじゃないか…。」
「そんだけ養ってもらってるなら、文句言わずに親が物を取ってほしいと言えば、物くらい取ってあげなさいよ。」
「バイト、短時間のものを少しやっては辞めてというのを繰り返しているのか…。」
と、呆れていた。

ここらへんで、相談にちゃんと乗ってもらえなかった不満は消えてしまった。
その人が当時言っていたとおり、自分の相談に乗るような大人の余裕は明らかに持ち合わせていない人だったのだから。

そういうわけで、その人に対する期待値をだいぶ下げて、別アカウントのツイートを見るようになった。
すると、そのアカウントで問題が生じるのである。

その人のお父様が将来の不安を詐欺師につけ込まれ、大金を失ってしまったらしい。
それでその人は、「両親を安心させるために、skeb(※絵の依頼を受けて描くアマチュア向けのサイトのようだ)でどんどん仕事を請けたい!なので、皆さん(※そのアカウントのフォロワー)協力してください!私には絵を描くくらいしかできないから。」みたいなことを言い出した。

それに対して、自分は
「待て待て、確かにあなたの絵は上手いが、一般受けする絵柄には思えない。そして、絵を描いているジャンルがあまりにもニッチ過ぎる。ただでさえ収益の見込めない状況であるのに、フォロワーに仕事を依頼しろなんて言ったら、関係が悪くなるのじゃないか?というか、依頼が来たところでそんなに儲からないだろ。この期に及んで、絵を描くという趣味の延長で稼ごうなんて、楽な道に逃げている。現実を見ろ、バイトのシフトを増やしたほうが賢明だ!」
と忠告したかったが、当然できなかった。
そしてやはり、この懸念は後に的中してしまうのである。

次に、そのskebの件とは別に、その人の属していた趣味の界隈の中で、その人は嫌われ始めた。
元々知り合っていた当時のアカウントではそんな振舞いはあまりなかったのだが、その人は悪く言えば面倒くさい───寂しさ故に、ひねくれた愚痴をツイートするようになっていたのだ。
具体的には言わないが、「単独行動が好きなくせに、集団行動にも捨てきれない憧れがあり、単独行動がしやすいような配慮を、他の人の集団に求める」といった趣旨の愚痴を言っていた。
本人にはおそらく悪意はないのだが、他の人にはそれを厭われ、skebの件と併せて他の人から陰口を言われるようになり、それが加熱してついにはアカウント削除にまで追い込まれていた。

とりあえず、この人について語るのはこの辺にしておく。
この人の話は、この記事の結論に至るまでの導入でしかない。
この人が今幸せなのか、そうでないならどうすれば幸せになれるのかなんて、考えるべき立場にはない。
この人に対しては呆れ、少し軽蔑する部分もあるけれど…頼りにならないだけで悪い人ではないと思うよ、うん。
まぁ、幸せになってもらいたいね。


この一連の話から思うことは、相談する相手は選ばねばならないということだ。

その一、相手に相談する前に、返ってくる答えとして最も価値の無い回答を想像し、それを返される覚悟をすること。

その二、年の功を過信するな。相手のほうが経験豊かで知見に富んでいるとは限らない。

その三、人を上部だけで判断するな。
人は、恥ずかしい部分を包み隠して振る舞うものだ。
それ故に優れた人間であるかのように錯覚してしまう。

その四、相談する相手は責任感の強さで選べ。また、期待したほどの責任感が無かったことが判明したとしても憤慨するな。捨て置け。

人に期待する前に、これら四つを自問自答し、相手が相談するにあたって適任であるかを見極めなければならない。
そして、その見極めをしくじったとしても、残念がって相手を責めるべきではない。
己の見る目の無さを恨め。

……でも、ここまで考えて相談相手を探すくらいなら、自分で解決したほうが早そうだよな。
なんだかんだ、自分って世界で一番信頼できる存在だし。

という考えを、数ヶ月にわたってモヤモヤと心の中で思っていたので、文章に吐き出してみたのだ。

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