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楽園で最高の夕日と星空を見た


マーク島初日、私は宿に荷物を置くと、徒歩で散策に出た。

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この島はマジで何もない。未開発な南の島といえば、人が足を踏み入れないジャングルなんかがあり、そこには猛獣や裸族が潜んでいたりするイメージだが、ここには猛獣や裸族が暮らせるような深い自然はない。

19世紀に中国系の5氏族が入植し、ココナッツ農場を拓いたのがマーク島の始まり。ココナッツとゴムを栽培するために広範囲が開墾された結果、南の島らしい大自然が失われてしまったのだ。
数十年前まで電気すら通っていなかった非文明的な場所という意味では未開発な島なのだが、文明人が思い描く姿とはちょっとイメージが異なる。

では魅力のない島なのかというとそんなことはなく。
島ではのんびりとした時間が流れており、上陸した瞬間、日本での忙しない日々やバンコクのカオスを忘れられる。
明るくなったら起床し、日が暮れてきたら宿に帰る。この島では時間の感覚が大雑把になるのを実感できる。
現地の人たちはヌクモリティが高く、かつて微笑みの国と呼ばれたタイのイメージが蘇る。
警察不在なとこを見ると治安は安定しているので、夜に出歩いても安心。夜に外出しても、何もやることはないが。


宿から歩くこと数十分、メインストリートっぽいとこに出る。写真は撮り忘れたのでストリートビューで。

https://maps.app.goo.gl/38sFNzvEjXWosTqU6

ここから更に数十分歩くと、食堂やサイクルショップなんかが出現する。

マーク島は北海道みたいな形をしているが、近隣のチャーン島、クート島と比べるとちっちゃいどう。その気になれば徒歩でも踏破可能と見ていたが、甘い考えだった。
マーク島も実はかなりのでっかいどう。メインストリートの果てに東西部への分岐点があり、そこで一旦散策をやめた。これ以上進むと日が暮れる前に宿に帰れなくなる可能性がある。

適当な食堂に入りカオパッド(チャーハン)を注文。メニューに英語表記があるが、女将さんに英語は通じない。

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指差しでカオパッドとLサイズの水を頼むと、カオパッドと白飯と水が出てきた。

メニューにはwater(L)とあったので、Lサイズの水が出てくるもんだと思っていたが、どうやら水(ライス付き)という意味だったようだ。
「な、なんでチャーハンと白飯が??」と私は困惑したが、女将さんは女将さんで「こいつチャーハンと白飯一緒に食うのか??」と思っていたに違いない。

食事中、女将さんの娘さんが学校から帰ってくる。小学校高学年くらいで、タナー段階ステップ3程度まで膨らんだ乳が危険なエロスを醸し出している。
その娘さんに日本から持ってきた飴ちゃんを恵んでやると、両手を合わせてお礼を言ってくれた。


うむ、良い子だ。バンコクで乞食のガキに飴ちゃんを渡そうとした時は、興味なさげに「ああ、そこら辺に置いといてや」と礼も言わず冷たくされたものだった。
乞食のガキにお金を渡しても、ほぼ全額がその親の懐に納まってしまうだろう。それならお菓子類を直接ガキに渡した方が、ガキは喜んでくれるはず……。
そう期待しての施しだったが、見事に裏切られてしまい、私は心に傷を負っていた。

聞いた話では、乞食はそれなりに稼げる仕事らしい。その多くは近隣国出身で、普通に働くよりバンコクで乞食する方が稼げるという。

そういえば、コンビニで売られている超特大サイズのジュースの容器を銭入れとして使ってる乞食をよく見かけた。
あの特大サイズのジュースは私には高くて買えない代物である。ひょっとしたら乞食は私より経済的に豊かで、気軽にジュースやお菓子を買えるのかもしれない。
だから乞食してる汚いガキは、飴ちゃん程度じゃ特に喜びもしなかったのだ。

たとえショボい施しでも、恩を受けたらお礼を言ってほしいのが日本人の感覚。Vtuberにスパチャを送ったのにシカトされて病んでるヲタクを見てもわかる通り、ありがとうの一言だけで人は充たされるのだ。

その日本人の感覚を外国人、しかもまともに教育を受けてないであろう乞食のガキに求めるのは間違いだとわかっているが、複雑な気持ちは解消されない。


ともかく、食堂の娘さんの元気良い「コップンカッ!(ありがとう)」によって私の気持ちは充たされた。
一気に機嫌が良くなったので、代金を支払う際はちょっとチップをはずんでやろう…と思いながら食事したが、チップを払うのを忘れて食堂を後にしてしまった。

宿に帰る途中、バイクに乗ったおっさんに絡まれる。後ろに乗れやと言っている。

マーク島では一軒隣が数百メートル離れているということも珍しくなく、お隣さんへ行くのにもみんなバイクで移動する。
なので旅行者も現地人も徒歩で移動する人は皆無。

景色を楽しみながら歩きたいからと断ると、おっさんは「マジか…」とドン引きしながら走り去って行った。楽しめる景色なんてないやろと言いたげだった。

確かにこの島にフォトジェニックなスポットはない。でも、ヤシの木が生えてるだけで私のような北海道人はウキウキしてしまうのだ。

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来た道を戻り続けること数十分。何かの気配を感じて振り返ると、犬がついてきていた。
お腹を空かせた野犬か?と身構えたが、この島は犬が野生化できるような環境ではない。どこかで飼われている犬が暇潰しに私をストーキングしてるだけだろう。
この島の犬は基本的に食うか寝るかしかしていない。放し飼いだから好きな時に散歩できるし、何不自由ない暮らしをしている。犬に生まれ変われば、ニートになっても可愛がってもらえるのになぁと羨ましくなった。

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宿に帰還してすぐに落日が始まった。ちょうどいいタイミングだ。私はビーチでスマホを構え、シャッターチャンスを待つ。

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太陽は沈み始めると空を焼きながらものすごい勢いで水平線へと沈んでいく。夕日ってこんなに沈むのが早いものだったのか。

私が撮影する傍らで他の宿泊者のカップルが肩を寄せ合いながら夕日を眺めており、思わず舌打ちした。
お前らリア充の関係は夕日のように燃えているが沈むのも早いんだよと心の中で悪態をついた。


日が沈むと食堂に灯りがともり、オーナーの一家と宿泊者たちが集合する。

さっきチャーハンと白米のセットを食べたばかりだが、こう何もない環境だと食べることくらいしか楽しみがない。
美少女なお孫さんとふれ合いたいという想いもあり、私は食堂へ足を運んだ。

3~5才くらいのチビ兄妹がいたので飴ちゃんを恵んでやると、無言で受け取られたので思わず「恩を受けたら気持ちだけでもお礼言ってほしいのが日本人なんだよ」とキレそうになった。


厨房から「ハロー」とお孫さんが出現し、メニューを渡してくる。厨房にいたってことは、お孫さんが料理を作ってくれるのか。若い女の子の手作り料理なんて永遠に縁がないと思っていた。

メニューは田舎の宿にしては品数豊富。
中華風焼きそばなるものが気になる。あんかけ焼きそば的な物だろうか。それとも上海焼きそば的な物なのだろうか。

期待しながら待っていると、料理が到着した。

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私の嫌いなニンジンとベビーコーンがふんだんに使われている。ゼラチン質の麺は臭く、食えたもんではない。
オイスターソースやその他中華系調味料を使っているんだろうなぁという味。

食材がマジでカス過ぎて無理。ニンジンとベビーコーンは百歩譲るが、このプルプルした麺は何なんだ。バミー(中華麺)使ってくれればまだ食えたはず。

「どや?うめえか?」と金色モヒカンが特徴的な白人のねーちゃんに絡まれる。長期間この宿に沈んでる客らしい。
おめーが作った訳じゃないのに何でおめーが評価聞きたがるねんと思いながら「ベリーデリシャス」と答える。ゲロまずを意味する英語を知らなかったのでそう答えるしかなかった。
このねーちゃんめっちゃ怖い。話してみるとめっちゃ優しくて良い人なのだが、見た目がパンク過ぎる。

お孫さんにも「うまいぜ!あんた天才だ!」と親指を立てたりしながら頑張って中華風焼きそばを平らげたものの、気分が悪くなりしばらく動けなくなった。
ほんとに臭い料理だった。タイって何故かくっせぇ飯ばっかだよな。日本食レストランがいっぱいあるから味覚の差はないと思うんだけど。


仕事を終えたお孫さんが座ってスマホをぼちぼちし始め、おばあちゃんに「めっちゃ面白いもんあったwwww」とやたらと画面を見せる。
人生の大半を電気が無い環境で生きてきたであろうおばあちゃんが、スマホという文明の最先端を理解できるのか不明だが、うんうんとお孫さんに同調して頷いていた。孫が何を言ってるのかさっぱり理解できんが、元気ならそれでええ……。そんな心の声が聞こえてくるようだった。

部屋に戻り、シャワーを浴びる。シャワー室には、なんと最新の湯沸し器が設置されており、シャワーからお湯が出てきた。
バンコクにある安宿の大半はシャワーから水しか出ない。この宿のようにお湯が出てくるシャワーを備えているのは稀である。マーク島の日中は糞暑いが、夜になると肌寒いくらいに気温が下がるので、お湯シャワーは素直に嬉しい。

ちなみに、水シャワーと聞くと風邪ひいてしまいそうなイメージがあるが、日本と違ってキンキンに冷えた水が出てくることはまず無い。
水シャワー=実質ぬるま湯。バンコクだと夜でも糞暑いので、もっと冷たい水が出てほしいと思ってしまうくらいだ。


シャワーを浴びた後、寝転がってスマホでエロサイトを漁っていると、隣のバンガローの奴らがベランダではしゃぐ声が聞こえてきた。

何があるんや?と私もベランダに出てみると、なんということか。夜空には満天の星々が輝いてるではないか。こんなに綺麗な夜空、見たことない。

頻繁に流れ星が落ちていく。
夜になると島内の灯りがほぼ消えるマーク島ならではの絶景だ。
スマホで星空を撮影するのは難しかったので残念ながら写真はない。

旅行の計画を立てる時、綺麗な星空見られる所行きてー!と思って最終的にその条件は妥協したが、思わぬ所でその願いが叶ってしまった。

マーク島最高。部屋から毛布を持ってきて横になり、何時間も波の音と星空を堪楽しんだ。


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