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楽園で最高のビーチを一人占め



マーク島2日目の朝。夜は涼しかったのに、日が昇った瞬間クソ暑くなった。
今日は何をしようかと考えながら洗濯物をベランダに干す。天日干しなんて何年ぶりだろうか。

マジで直射日光が凄まじいというレベルを超えていたので外出したくなかったが、私が南の島に来たのは綺麗な海を見るためである。海へ行かず引きこもるなんて何しにここまで来たのって感じだ。
この宿にもビーチはあるが、若干ゴミが浮いていたりと私が求めているレベルには達していない。
この島には東西にメインビーチがあるとの情報を掴んでいたので、今日はビーチを目指すことにした。


サイクルショップで自転車をレンタルし、旅行者が多く集う西側へ向かう。サドルを一番低くしてるのに地面に足が届かない。ジャップとタイ人ってそんなに足の長さに差があるのか?

途中でミニマートを発見し、小休止。道中おなかが空くだろうから、ジュースとおやつでも買っておこう。
店員はピチピチのヤングな小娘で、ニコニコ接客してくれた。
バンコクのコンビニで働く小娘の9割は常にスマホぼちぼちでそっけない態度で接客してくるが、マーク島ではそんなことはない。


ジュースは数十年前の日本のお下がりと思われるナショナル製の業務用冷蔵庫で冷やされているが、ジュースを取り出してみるとヌルい。クソ暑いのでキンキンに冷えたコーラが飲みたかったのだが、古い冷蔵庫だと限界があるのだろう。

おやつは300円まで!と思ったのだが、どれも糞高く、適当な物を買っただけで500円以上した。

タイは物価が安い国…ではあるが、お菓子は別である。基本的に日本と同じくらいかそれ以上の値段。日本の方が安くてクオリティの高いお菓子が買える。


チョコパイとコーラを買って店を出る。コーラは直射日光によって超速で熱を帯びていくので、沸騰する前に飲んだ。道中で喉が渇いた時のために、普通の水も買っておいたのでこの先安心。

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タイのコーラはお馴染みのコカ・コーラ、ペプシ、あとはestというブランドがメイン。estは大手のサームスック社から出ているもので、ペプシっぽい味。estが一番飲みやすく感じる。
元々サームスック社はペプシを販売してたが、ペプシコと険悪になりオリジナルのestコーラを開発・売り出したのだという。
コカ・コーラやペプシと比べて値段が安く、クオリティも負けてない。東南アジアの発展途上国のワケわからん炭酸飲料なんて飲めるか!絶対ヤバいの入ってるやろ!という心配性な人でも信頼のサームスック社の商品なら安心だ。


チョコパイも気温でチョコが溶けてしまうと予想されるので、1個だけパクり。
マズイ。パサパサしていてしつこい味がする。
こんなのに540円も払ったのか。チョコパイは後6個残っている。どうしようかこれ。バンコクに戻ったら乞食のガキにでもあげるか。


自転車を走らせ、マーク島唯一の繁華街に着く。白人観光客向けのボッタ値商店やレストランがズラリと並んでいる。
金がある白人様のことだからボッタ値でも「タイの物価安過ぎlol lol lol lol lol 」とチップ盛り盛りで金を落としていくのだろう。

経済的にギリギリな私にはそんな白人様向けの店に足を踏み入れることすら許されない。繁華街をスルーして西側のビーチに到着。

海には海遊エリアを限定する黄色いアレが浮いており、ごく狭い範囲でしか泳ぐのを許されてなかった。
クラゲでも大発生してるのだろうか。なんかゲンナリして、砂浜をちょっと散歩した程度でビーチを後にした。

念願の綺麗なビーチに到達したというのに、微妙な気持ちで終わってしまった。海には黄色いアレが浮いてるから写真を撮る気もわかず。
ビーチはクート島に期待しよう。

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続いて、西部から東部へ移動。メインストリートにはバラック小屋みたいなボロ家が並んでいて、いかにも南の島の田舎的な風情があったが、東部には近代的な造りの住宅街があった。
他の地域とは明らかに文明レベルが違う。おそらく金持ちの別荘かなんかだろう。

更に東進し、東側のメインビーチ、アオタイビーチに到着する。

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西側と違い、こちらは求めていた理想的なビーチだった。

グラデーションがかった遠浅が美しく、黄色いアレも浮いていない。

最高の景観。他に誰もおらず、一人でビーチを独占。まるで夢の世界だ。


……しかし、このビーチに着いた時、不思議と感動は沸かなかった。
目の前の光景が現実だと理解するのに時間がかかっていたのだ。

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海に向かってとぼとぼ歩いていく。視界に広がる絶景を現実だとわかり、徐々に足が早くなっていく。

靴を脱ぎ捨て、貴重品が入ったナップサックを砂浜にぶん投げる。

波を蹴りながら全力疾走し、「フォーーー!!!!」と叫びながら海に飛び込んだ。

気づけば今年一番の笑顔になっていた。

ビーチは無人だからこんな真似してはしゃいでもまったく恥ずかしくない。
そのかわり、泳いでる最中にクラゲに刺されて溺れたとしても誰も助けてくれない。

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でも、美しい海を一人占めできるんだから死んでも文句はない。私は、二時間ほど泳ぎの練習をしたり、日陰でコーラを飲みながらくつろいだりして充実した時間を過ごした。

長時間泳いでおなかが空いたので、とある食堂でヌアピンをいただく。
ヌアピンは牛の串焼きで、餅米のおにぎりと一緒に甘辛いソースで食べるものだ。
タイでは豚や鳥はどこでも安く食べられるが、牛肉は貴重。別に牛肉は好きじゃないが、貴重だと思うと食べたくなる。

「あんた中国人かい?」と食堂のババアに聞かれる。
「ジャパニーズだよ」
「ジャパリー?なんやそれ」
ババアは15歳くらいの娘さんにジャパリーって知ってるか?と訊ねた。
タイは親日国だと聞いていたが、田舎では知名度が低いのか…?
「ニッポンのことよ、ババア」
娘さんから教えてもらうとババアは納得した。一定の年齢層以上になると、ジャパニーズよりニッポンと言う方が通じやすいようだ。

日本人大好きなのか、ババアはずっとニコニコであった。
若者、特に女の子は韓国系アイドルに夢中らしいが、ババアはみんな日本人贔屓であり、国籍のおかげで何度か得をしたことがある。昔の日本人たちの外交努力には頭が下がる。
コップンカッとタイ語でお礼を言うと、ババアは「日本人様が我々の言語でお礼をッッ!?」と言いたげに喜んでいた。

島内を散策していて気付いたのだが、現地人は若い娘さんが多い。
日本では田舎といえばジジババばかりだが、ここはそこら中に美少女がいる。
逆に男はあまり見かけなかった。おそらく皆が外へ仕事に出ているのだろう。

キレイな海、素朴な人々、笑顔が素敵な美少女たち。まさに楽園である。


もうクート島に行かなくていいか。ここに永住したい…….。
明日、島を出なきゃならんと思うと気が滅入るのだった。

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