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混沌のヤワラートへ
ゲストハウスへは朝帰りとなった。
シャワーを浴びてから寝ようとしたのだが、先にシャワールームへ入った白人のねーちゃんが出てこない。
もう30分は経つ。えげつないレベルの便秘と戦っているのだろうか。
ドアをノックすると「ごめん、もうちょい待ってや」と返事が返ってきた。
やがてねーちゃんが出てきて、ようやくシャワーを利用できた。
なんとお湯シャワーが出るではないか。1000円弱で泊まれるゲストハウスでは珍しい。
ヒャッハーと喜んでいると、シャワーは5秒くらいで止まってしまった。
なんとこのシャワー、1分ごとに5秒だけお湯が出るというトンデモ仕様であった。
白人ねーちゃんが30分も引きこもるわけだ。
長時間かけてシャワーを浴びて、昼近くまで眠ったのち、チェックアウト。
次はスクンビットにあるこの旅最後の宿を目指す。残り一週間をその宿で過ごす予定だ。人生初の『沈没』を体験してみようという訳だ。
本当は一週間でいろんな地域を訪れてみたかったのだが、年末年始を挟み、移動費が高くつくので沈没プランにしたのだ。
カオサン付近で最寄り駅まで送ってくれるバイタクを探す。荷物を背負って駅まで歩くのはしんどい。
「100バーツでええよ」とバイタクのおっさんが示す。明らかにボッてるが、日本人の感覚からすると激安。
値引き交渉にチャレンジしてみようと「50バーツにして」と提案してみた。するとおっさんはあからさまに不機嫌になった。
「じゃあ70バーツや」
「60バーツにして」
しつこく交渉を迫るとおっさんはぶちギレ出し、威圧感バリバリで何か必死で訴えてきた。俺はあんたら外人と違って豊かじゃねえんだよ、みたいなことを言ってた気がする。
たった10バーツ(36円)で喧嘩するのもアホくさいし、私は70バーツで了承した。
おっさんは一転してウキウキで支度しはじめた。私がバイクの後部に乗ると走り出した。
渋滞する車両の合間を縫って走るバイク、バイタクはこれが気持ちいい。日本ではできない走り方。
やがて、バイクは駅近くの寺院に止まった。駅っつったのに、寺院を目指してると勘違いしたようだ。
「ニホンジン デスカ?」とおっさんは片言の日本語で話しかけてきた。
「キヲツケテ タノシンデ」と言い残し、おっさんは去っていった。
駅はすぐ近くなので、仕方なく歩いていくことにした。寺院観光も興味深いが、先に重い荷物を下ろしたかったので、とりあえず寺院はスルー。
…しようと思ったのだが、さっきのバイタクのおっさんが戻ってきて、
「そっちは寺院じゃねえぞ、入り口はこっちだ」とご丁寧に案内してくれた。
ついでに、飯はどこどこがうまいと教えてくれたりもした。値切り交渉時の威圧的な態度が嘘かのような親切さだ。
仕方なく適当に寺院を見学した後、駅に向かった。
駅に向かう途中、町の雰囲気がなんか変わってることに気づいた。
ここはヤワラート、華人が集まる町。(画像は拾い画)
ある年代以上の日本人バックパッカーにとって、ここは特別な記憶が眠る町らしい。
バンコクにやってきた日本人の旅人は、真っ先にここを訪れ、麻薬と買春に溺れる。そんな時代があったようだ。
カオス渦巻くヤワラート。猥雑な町並みに魅入られた私は、駅に行く前にこのあたりを散策することにした。
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