見出し画像

X-18を読み解く (模型における黒の話)

「X-18」の文字列と、六角形のあのマーク。
これだけで「セミグロスブラック」と空で言えるのは間違いなく“タミヤの子“だと思います。

なんのこっちゃという方に説明すると、タミヤのプラモデルは、説明書の塗装指示を自社製品の製品番号で示しています。
「ホワイト」は「X-2」、「レッド」は「X-7」といった具合です。

画像2

なかでも頻繁に登場する“半ツヤの黒”である「セミグロスブラック」に割り当てられた番号が「X-18」というわけです。
どのモデルにも必ずと言っていいほど頻繁に登場するので、タミヤのキットを組むうちに無意識に品番を覚えてしまいます。

画像4

ところがこの”半ツヤ黒“というのが、実はクセものです。
“半ツヤ”というのは”ツヤあり“と”ツヤ消し”の中間のツヤという意味ですが、ツヤの度合いは相対的なものであり、説明図で示されている“半ツヤ黒”の範囲は途方もなく広いのです。

画像3

例えば、手元にあるタミヤの説明書をパラパラとめくって「X-18」の指示を探してみると...
・カーモデルのワイパー(ゴムと樹脂成形品)
・1/12 ストリートライダーの革ジャンと靴(革)
・1/12 ドゥカティ1199パニガーレSのフロントフェンダー(カーボンファイバー素材)
などが“半ツヤの黒”とされています

人の目は意外といい加減なので、同じ色と質感の塗料で塗られたパーツでも、カタチが違うとちゃんと違う物体として認識できる、というのはありますが、上にあげたような全然違う素材を一括りに同じ色で塗れというのは少々無理があると思います。

「X-18」の塗装指示が割り振られているのは、「X-18」の塗料の質感がバッチリ当てはまりますよ!
ではなく、あくまで自社製品のみで説明書の塗装指示を割り振る都合上、しかたなく割り振られた近似色であると考えるべきでしょう。

で、その塗装指示を受け取る側のモデラーも、塗装指示通りに”半ツヤ黒“を塗っているかというと、必ずしもそうじゃないんじゃないでしょうか。そもそも、黒いものを模すために、縮小された模型に黒の塗料を塗ると“黒すぎて黒“になります。なんか「黒が強すぎない?」って感じです。
それには2つの理由が考えられます。

・空気遠近法

遠くのものは輪郭がボヤけて、彩度は落ちて、黒はグレーよりに見えます、ってことだと思ってます
すみません、自分も正しく理解できてないと思うんで詳しくはググってください()
ここで言いたいのは、黒をグレー寄りにした方がより遠くにあるように、巨大に感じられるという事です
例えば1/35の戦車を手元30cmで見たときのサイズ感は、実物大に換算すると10mほど離れた距離から見たサイズ感、ということになります
その分”真っ黒“ではなく黒に近いグレーに塗った方が、より自然に見えるということです。スケールエフェクトって言った方が正しいのでしょうか。

・黒と思ってるだけで実際は暗いグレーのパターン

黒いものは黒い、という思考停止で真っ黒を塗るから不自然になっているということも考えられます。
身の回りに塗料の黒みたいな真っ黒って意外と存在していません
例えばタクシーや商用バンの黒い樹脂バンパー、よく見ると結構グレーです
塗料で言うとクレオス40番ジャーマングレー相当かな〜とか。

画像5

このJPNタクシーのバンパーはまさに40番ジャーマングレーです。

以上のような理由から、「X-18」の塗装指示をみたモデラーは言われた通りに黒だけを塗っているというわけではないんじゃないかなぁとおもいます。

「X-18」の塗装指示は、プラモメーカーから送られた「ほかに当てはまる色無いからX-18ってしとくけど、どんな色かは想像して各自やってよ」というメッセージであり、モデラーにとっても質感を想像するためのとっかかりでしかないんじゃないでしょうか。
そんな、説明書を介して交わされる無言のやりとりもプラモの面白さだなぁと思った次第です。

ちなみに、私は「X-18」の塗装指示に対してこんな感じの色を使っています。

画像1

左から TエナメルX-18、G22セミグロスブラック、C黒サフ1500、TエナメルXF-1、Gニュートラルグレー5、Cミッドナイトブルー、T  NATOブラック、Cジャーマングレー、C513ドゥンケルグラウ、Tエナメルジャーマングレイ

皆さまはどんな色を使っていますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?