自転車を漕ぐかのように空を飛ぶ
クルマを運転することが、歩くのや自転車を漕ぐのと同じ日常の一部になったのはいつからでしょうか?
免許を取ったばかりのころは、運転は緊張を伴う一大イベントでした。
クルマに乗り込んでシートベルトを締め、ミラーを確認、ブレーキを踏んでエンジン始動。
そういった、今では無意識に済ませてしまう動作の一つ一つを、初めのころは慎重に確認しながら行っていたはずです。
そんなことを思い出したのは、このフィギュアたちにとって、空を飛ぶことは日常の延長線上の出来事に過ぎないのだろうな、と思ったからです。
このフィギュアには、そう思わせる自然さがあります。
先のフィギュアはタミヤ 1/48 P-51B マスタング “ブルーノーズ“に付属の物。
既存のキットにデカールとフィギュア2体を追加した限定版のモデルのようで、エアレーサーのような派手なペイントパターンに惹かれて購入しました。
追加されたフィギュアのうち、立像の方は、シャツにネクタイ、コットンパンツにミリタリージャケットというスタイル。
軍帽を被っていなければ戦時中とは思えない自然な着こなしで、このフィギュアは自分の生活と地続きの所にいるんだ、と感じられます。
カッコいいおじさま。
着座姿勢のパイロットフィギュアは、元のキットにも一体付属していたので、追加されたものと合わせて2種類から1つを選んで乗せることができます。
追加された方のフィギュアは、操縦席から身を乗り出して左に目線を送る珍しいポーズになっています。
ヒジが操縦席からはみだしているので、キャノピー開状態しか選べません。
もし付属フィギュアが一体だけだったら、組み立ての選択肢を狭めてしまうこのポーズは難しかったはずで、
元キット付属の座席に収まったポーズの方があるからこそ、動きのあるポーズが取れたのでしょう。
パイロットは目線を左に向けつつ、片手は操縦桿を握っていつでも飛び立てる状態にあります。
それを見守るオシャレなおじさまは、ポケットに手を入れてリラックス。
2人が作り出す空間からは自然と会話が聞こえてくるようです。
パイロットは軽いジョークを言いながら飛び立っていき、帰還すれば自然と話の続きが始まる。
彼らの間にはそんな日常の空気が広がっています。
みずから操縦桿を握って空を飛ぶ、なんてことは非日常の世界だし、私は一生体験することはないでしょう。
しかし、彼らにとってそれは日常の一部で、パイロットはあたかも自転車を漕ぐように空を飛ぶのだろうな、なんてことを想像させます。
プラモデルのフィギュアは、自分が関わることのない遠い世界と自分を結びつけてくれるチケットと言えるでしょう。
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