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映画『ハッピー・オールド・イヤー』公開記念 リアル引っ越しドキュメント⑫「感情に溺れるな」

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前回の記事はこちら☞ 連載⑪「ゴミ箱はブラックホールなの。入れたものは消える」
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『ハッピー・オールド・イヤー』では主人公ジーンが、北欧に留学に旅立つ時に結果的に別れてしまうことになった元恋人エムから預かっていたカメラを家の断捨離中に見つけ、エムに送り返そうと思い立つところからドラマが展開して行きます。で、“捨て方STEP 3”は「感情に溺れるな」

「感情に溺れるな」と謳いつつ、本作では声を荒げて感情を爆発させるようなシーンはほとんどありません(母と娘の“親子げんか”のシーンは、ちょっと声大きめですが)。主人公も、元カレも、元カレの今カノも、感情を抑えて冷静さを保つように努力しているように見えます。しかし、表には露わにならなくても、心の中には感情がうねっていて、その渦に自ら巻き込まれ溺れないように皆必死に足を踏ん張っているのかもしれません。

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※主人公ジーン、元カレのエム、エムの今カノのミーのスリーショット。画像の各々の表情は、ちょっとシリアスな感じに映りますが、実際の劇中での同場面は(表面上は)和気あいあいです。

会社の引っ越し、断捨離作業には「感情に溺れそう」になる瞬間は、皆無と言ってもいいでしょう。元々、激昂し易い社長、社員が集まっている会社であれば(笑)、一つの品物を巡って、「捨てる」「捨てない」で議論になったり、喧嘩になったりすることも有り得ますが、幸いうちの会社では今のところそんな状況は勃発していません。もしかして「えぇぇ~!アレ捨てちゃったの~??」みたいなことは、これから起こるのかもしれませんが…。

今回の断捨離作業で、皆疲れが溜まって些細なことで言い争いが生じそうな状況であることは前に書きましたが、それとてホントに些細なことなので(「ゴミ袋にちょっとしかゴミが入ってないのに、45ℓのゴミ処理券を貼るのは、もったいないからやめて」みたいな。笑)感情に溺れることはないのですが、唯一私の感情が動いた瞬間があります。それは20数年を過ごしたオフィスが空っぽになったのを見た時。トップ画像をご覧頂くとお分かりのとおり、ついこの間まで連載1回目に貼った画像のように、オフィス家具、35ミリプリント、テープ、書類、書籍、パンフレット、ポスター、チラシの在庫の段ボールが所せましと置かれていました。そのオフィスが、2ヵ月に渡る断捨離の末に行われた引っ越しで、何一つ無くなって「よくここまで断捨離頑張った!」という感慨が湧いたのはもちろんなのですが、それとは別の心の奥がチリチリとする謎の感情が…。それは“この場所で過ごしてきた20数年”のいろんな出来事が胸に去来したからでしょうか?

リサイズ12回目

※引っ越し屋さんの到着を待つばかりとなった、オフィス家具類。窓際に並んだキャビネットは、エレベーターに入らない大きさの物もあり、7階から階段を使って下ろす、という、引っ越し屋さん曰く「シビれる作業」が行われました。

退職してから10年前後経っている、今も親交のある元社員の皆にも今回の引っ越しのお知らせハガキを出したのですが、その中の複数が「毎日通っていた事務所が無くなるのは、ちょっと寂しい」とメールをくれました。それを読んだ時は、「へぇ~、そうなんだ」と他人事のような気持ちだったのですが、いざ空っぽになった事務所を見た時は、確かに感情が動きました。それを簡単に一言で言語化したら、もしかしたら「寂しい」って言葉なのかもしれません。でも、その気持ちもほんの一瞬。どんな形になろうと、会社は続けて行かなければいけませんし、人生は続きます…、って連載最終回みたいな話になってきました(笑)。

『ハッピー・オールド・イヤー』の主人公ジーンは、すべての断捨離作業を終えて、リフォームに取り掛かる直前の空っぽの空間を見た時、どんな気持ちになるのでしょう…?

◆映画『ハッピー・オールド・イヤー』
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12/11(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開! 

次回の記事はこちら☞ 連載⑬「親の世代の作ったものはもう機能していない。老人はなぜ変化を嫌がるの?」




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