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さしいれはしんちょうに

夫の両親がそろってコロナに感染しました。
両親は昭和9年生まれ、88歳のカップルです。

父から「コロナ感染した」と連絡が入ったのは7月下旬。
母が先に発症しすぐに父も症状が出て、母はすでに自宅療養4日目ということでした。
年齢の割にかなりアクティブで、コロナ禍でもじっとしていられない2人。どうやら祇園祭・前祭りの山鉾巡行を観に行っていたらしい。
「3年ぶりの山鉾巡行、14万人の人出」
巡行当日の17日は日曜日で、家でお昼のニュースを観ながら、ひとで埋め尽くされる河原町通に、
「観に行く人いはんにゃねぇ、感染怖くないんかなぁ」
などとのんきな感想を述べあっていた私たち夫婦。
まさかうちの親が14万人中の2人だとは思ってもいませんでした。
(怒られるから本当は内緒にしときたかったらしいです)

幸いにも軽症の部類で、特に先に発症した母はすでに食事つくりに精を出していました。
後追いの父からはのどが痛いからのど飴が欲しい、というリクエストがあったぐらいで、熱も高くなく心配ないと。
そうは言っても高齢者の2人暮らし、父は糖尿病も持ってるし、88歳という年齢もあり心配です。
そこで我々夫婦と孫である長男夫婦とで、自宅療養明けまで毎日交代で、電話を掛けたり差し入れを届けたりすることになりました。

私が差し入れを担当したのは最初の連絡から3日後。
冷凍庫の備蓄食材を順番に料理していると言っていた母に、生野菜、果物、豆腐、卵などを届けました。
両親の家に着きポストに買ってきたものを入れ、すぐに電話。母は
「おおきにおおきに。お野菜とお豆腐欲しかってん」
と喜んでくれました。

玄関前で母と話し込んでいたら、ドアがガチャっと開き、父が顔を出しました。
「なんや、まだいたんかいな」
思わずぎょっとしました。父、ノーマスクだったから。
あからさまに顔をそむけるのも気ぃ悪いし、半ば半身の体勢で言葉を捻り出しました。
「うわっっおとうさん、思ったより顔色いいですねー♪」

もちろん私はマスクをしていたし、至近距離で顔を合わせていた時間は1分にも満たない。それでも心穏やかではいられませんでした。まさに「ほうほうのていで」逃げるように帰って来ました。

3日後。
私、激しいのどの痛みと発熱で発症しました。
PCR検査の結果、陽性。現在、自宅療養中です。
幸いなことに私も両親同様軽症で、仕事の引継ぎは大儀でしたけど(10日間の欠勤はやはりきつい)それもどうにかうまく運び、回復を待っています。

これだけ感染者が増えている状況で、感染経路なんて探っても意味ないように思うし、私の場合も必ずしもあの「差し入れ」が決定打だったとは言い切れません。

でも。
せやんなぁ、やっぱそうとしか考えられん。

さしいれはしんちょうに。
「今、ポストに入れたよ、取りに来てー」の電話は、
玄関から離れてから掛ける、教訓です。

両親はおかげさまで無事に完治しました。
自宅療養最後の差し入れは、母からのリクエストによる「重曹」でした。
大掃除始めたらしいです。あっぱれ、88際。

#コラム・エッセイ
#コロナ
#88歳
#祇園祭

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