懺悔の夜、或いはただの嘘吐き
真夏の真昼の海を散々眺めた後で見る夜の海の漆黒は、本当にただただ黒く、暗い。波の音は日中のそれと同じはずなのに、全くの別の顔をしてこちらを見返してくる。満月と満点の星空でも広がっていればまだ安心感があるが、この日に限っては台風前ということもあり、雲が多く朧な半月が見え隠れする程度の弱い光だけが、墨汁のようなさざ波をうっすらと照らすのみで、不穏以外の何物も感じられない。私は、過去観た映画「アングスト」のジャケットを思い出し、少しだけ震えた。
ホテルの部屋の大きな窓辺のチェアに