雨上がりのぬかるみ

主に断片的な雑記を書く若者。

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最近の記事

ばら売りのにんにく

最近ちょっといいギターを買おうか迷っている。今使っているのは中古の、しかもその店にあった一番安い7000円のアコースティックギターで、子どものおもちゃの塗装のように、「深み」とは無縁の軽薄なアイボリーだ。僕のことだから長く続かない可能性の方が高くて、1万円以上払う勇気はそのときはなかった。しかし、熱心ってほどでもないけど、なんだかんだ2年以上ほぼ毎日少なくとも5分はポロポロ音を出している。そしてついにこの前、通りすがりの楽器屋でちょっといいギターを試し弾きしてみると、あら不思

    • 音無(おとな)と大人

       バッティングセンターでアルバイトをしている。  いろんな人が来る。少年野球の子どもたち、社会人野球の大人たち、彼氏が野球経験者のカップル、挙動不審でやせっぽっちな常連さん、にらみの利いた高校生(常連さん)、すごく野球がうまそうな、でも全くバットにボールが当たらない、金髪角刈り、Tシャツパツパツのアメリカ人。ほんとにいろんな人が来る。  ある日、朝の9時から10時までの貸し切りで予約をしていた少年野球団が、ユニフォームを着てぞろぞろとやってきた。  僕の座っているカウンタ

      • 優しい響きに誘われて

        ペットボトルはプラスチックだから、僕の選択に間違いはどこにもないはずだ。 「燃えるゴミ」「プラスチック類」「ペットボトル」「カン」・・・とゴミ箱が並んでいた。僕は右手に空のペットボトルを持っていた。リズミカルに指に力を入れて、パコパコ鳴らしながらゴミ箱に向かった。たぶん、そのプラスチックに独特な、角の取れた丸っこい優しい響きに体が反応したのだと思う。投げ入れたあとすぐに気づいたのだが、疑いようもなくペットボトルが吸い込まれていった先は「燃えないゴミ」だった。何か悪いことをし

        • ピンクの車

          僕(男)はピンクの可愛い車に乗っている。その車の中で、僕は肘掛に左腕を乗せて、右手一本で悠々とハンドルを操っている。コンビニでコーヒーを買って、マイルスデイビスだののジャズを大音量で流しながら、僕はピンクの可愛い車を乗りこなしている。ときどき道行く男に二度見される。なぜだろう。そんなことお構いなしに、僕はピンクの車で、海沿いを颯爽と駆け抜けている。 58号線を走らせながら、なんとなく久し振りに福山雅治を聞いていた。僕は大体Amazon music で音楽を聴くのだけど、Am

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        • 問いの痕跡
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          書くことと、掻くこと

          『書くことと、掻くこと』 愛用のPILOTキャップレス万年筆で文字を書いていると、紙の表面の極微細なざらつきが、銀色のペン先を通して僕の体に伝わってくる。 ふと、「書く」と「掻く」は同じことではないかと思った。図書館にいた私は、かく手を止めて、辞典がずらりと並ぶ書架に向かった。『日本語大辞典』で「書く」を調べてみた。思った通り、「掻く」と語源を共にしてた。 今となっては、パソコンで文字を起こすことも、書くことの一つとなっている。むしろ、多くの書かれたものは、キーボ

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