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エモーショナル・ハードコアの裁定関係のまとめ その2

約1年前にエモーショナル・ハードコアの裁定関係をまとめた記事を作成しました。

その後もQ&Aが追加されておりますので,メモ代わりに新しく出た裁定をまとめようという趣旨で本記事を作成しました。

もっとも,目新しい内容は多くありません。基本的には,前回記事における基本的な考え方の応用で十分理解できるはずです。

それでは,みていきましょう。


1 ひとつの能力としてまとめられている能力を途中から無視することはできない(待機している遅延誘発型能力について)

まずは,下記裁定をご覧ください。

樹食の超人の殿堂入りにより実際に目にする場面がめっきり減ったシチュエーションではありますが,参考になるので紹介します。

Qカード名として《樹食の超人》を選んだ相手の《あたりポンの助》がバトルゾーンにいる状況で、自分は《樹食の超人》をコストを少なくして召喚できますか?
また、召喚できる場合、コストを少なくする際に選んだ手札とマナゾーンのカードは墓地に置かれますか?
類似例:《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》
Aはい、コストを少なくして召喚できます。出た時、選んだ手札とマナゾーンのカードは墓地に置かれます。
《あたりポンの助》などが持つ「クリーチャーの能力を無視する」能力は、バトルゾーンのクリーチャーの能力しか無視しません。ですので、手札の《樹食の超人》の能力は無視されません。
また、「クリーチャーの能力を無視する」能力は、すでに待機している遅延誘発型能力も無視しません。「このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、選んだカードを墓地に置く。 」は、バトルゾーンに出る前に生成される遅延誘発型能力ですので、バトルゾーンに出た時、その能力は無視されず、選んだカードは墓地に置かれます。

「あたりポンの助などが持つ」以下の部分は,エモーショナル・ハードコアの能力によって能力を無視できるのはバトルゾーンにいるクリーチャーだけという基本的な話です。

本題は後半部分(「また,」以下の部分)です。


参考として樹食の超人の1つ目の能力を引用します。

■このクリーチャーを召喚する時、自分のマナゾーンまたは手札から、好きな枚数の他のカードを選んでもよい。このようにして選んだカード1枚につき、このクリーチャーの召喚コストを1少なくする。ただし、コストは0以下にはならない。このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、選んだカードを墓地に置く。

樹食の超人の1つ目の能力は,
①クリーチャーを召喚する時に好きなカードを選ぶ
②召喚の際に選んだカードの分だけコストを下げる
③バトルゾーンに出た時に選んだカードを墓地に置く
といった複数の能力がひとつの能力としてまとめられています。

ひとつにまとめられた能力については,その能力の処理が始まった時点でその能力に含まれるそれぞれの能力が待機状態になります(上の例で言えば,①の処理を始めた時点で③についても待機状態になるということです。)。

そして,既に待機中の能力・効果については,エモーショナル・ハードコアの能力によって無視することはできません。

その結果,能力の一部だけを見ると場に出た時に効力が発動する能力に見えたとしても,エモーショナル・ハードコアの能力では無効化できないのです。

これもまた最近では見ないカードですが,灼熱連鎖テスタ・ロッサの灼熱ドロン・ゴーも同じ理屈です(前回記事でも簡単に紹介しました。)。


さて,以下の各裁定も同じように考えれば理解できるはずです。
これらは実際の大会等でも割とよく出くわすシチュエーションなのではないでしょうか?

ガイアール・ブランドのコスト軽減能力もクラッシュ覇道のB・A・D2も破壊されるところまでがひとつの能力としてまとめられています。
そのため,エモーショナル・ハードコアの能力でこれらカードの能力を無視しても,破壊は止められません。
他方,ガイアール・ブランドの離れた時の能力,クラッシュ覇道の破壊された時の能力は,別の能力ですからエモーショナル・ハードコアの能力で無視されます。


最近登場したアビスラッシュも同様に考えて下さい。


ついでですが,バイケンの処理も同様ですね。


2 与えられた能力について

下記裁定の「なお」以下の部分は結構難しいです(前半部分は既に解決された効果は遡って無効化できないという基本的な話です。)。

Q《バーンメア・ザ・シルバー/オラオラ・スラッシュ》の「出た時」の能力でGR召喚したGRクリーチャー2体に「スピードアタッカー」を与えました。その1体目が相手を攻撃したら、相手は「S・トリガー」で《ドラゴンズ・サイン》を唱えて《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を出し、「出た時」の能力で≪バーンメア・ザ・シルバー≫を選びました。2体目のGRクリーチャーは「スピードアタッカー」で攻撃できますか?
Aはい、攻撃できます。≪バーンメア・ザ・シルバー≫の能力を無視しても、既に解決した効果は無視されないので、与えられた「スピードアタッカー」は無くなりません。なお、無視するクリーチャーとして2体目のGRクリーチャーの名前を選ぶと、与えられた「スピードアタッカー」が無視されますので、それは召喚酔いにより攻撃できなくなります。

バーンメアによってスピードアタッカーを与えられたGRクリーチャーの名称を指定することで,そのGRクリーチャーのテキストだけでなく,与えられたスピードアタッカーも無効化されます。

つまり,エモーショナル・ハードコアの能力は,当該カードのテキストに書かれた能力だけでなく,他のカードによって与えられた能力であっても無効化できるということです。

そうすると,どういったものがエモーショナル・ハードコアで無効化できる与えられた能力にあたるのかが問題になります。


以上の問題を考えるための参考として,前回の記事でも引用した裁定を再度引用します。

Q《あたりポンの助》によって選んだ名前を持つクリーチャーに、呪文やクロスギアなど他の効果によって能力を得たり与えられたりしていた場合、それは無視されますか?
Aはい、クリーチャーが呪文やクロスギアなど他の効果によって能力を得たり与えられたりしていた場合、それはクリーチャーの能力となりますので無視されます。(「ブロッカー」や「スピード・アタッカー」得たり与えられた場合、それはクリーチャーの持つテキストの一部とみなします。)
ただし、パワーの増減や、クリーチャーに関する特性を定義するもの(文明を追加したり、ブロックされない状態にしたり、破壊されなくしたり)はテキストとして得ているわけではないので無視されません。

また,以下の裁定も参考になるでしょう。

Q《∞龍 ゲンムエンペラー》がバトルゾーンにいる状況で、自分の《ジョバートの心絵》の上にコスト5の進化クリーチャーを重ねました。このコスト5の進化クリーチャーが「シンカパワー」で得た「ブロッカー」と「このターンの終わりにアンタップする」は、それぞれ無視されますか?
A「ブロッカー」は無視されますが、「このターンの終わりにアンタップする」は無視されません。
「~を得る(与える)」とテキストにある場合、その効果によってクリーチャーに能力が与えられることになります。「ブロッカー」は「シンカパワー」によって進化クリーチャーに与えられている能力ですので、進化クリーチャーの能力が無視された場合、無視されます。
「このターンの終わりにアンタップする」は《ジョバートの心絵》が発生源である効果が発揮しているだけで、与えられた能力ではありませんので、無視されません。
(総合ルール 110.1)

そして,総合ルール 110.1も引用します。

110.1. 能力とは、カードの持つ特性で、そのカードがゲームに影響を与えられるようにするも のです。カードの能力はそのルール文章によって定義されます。能力は、ルールや効果によって カードに与えられることもありえます。(「持つ」「得る」と書かれている効果によって与えら れます) 能力は効果を生み出します。


以上の裁定等をまとめると以下のような話になるようです。
①効果の発生源のカードテキストに「得る」や「与える」と書かれている場合,それによって与えられたり,得られた能力は,能力を与えられたクリーチャーの能力になる。
②そのため,エモーショナル・ハードコアが当該クリーチャーの名称を指定した場合,当該クリーチャーのテキストには与えられた能力が書かれていないにもかかわらず,その能力も無視される。
③他方,効果の発生源のカードテキストに「得る」,「与える」,「持つ」と書かれていない場合,当該クリーチャーに一定の効果が発生しているとしても,当該クリーチャーに与えられた能力ではないので,エモーショナル・ハードコアで無効化できない。


抽象的でわかりづらい話ですから,上記各裁定を暗記するか,「与える」,「得る」といったテキストに注意する程度でよろしいかと思います。


3 革命チェンジに関する処理(出すときと出たときの区別)

以下の2つの裁定をご覧ください。

Q自分のマナゾーンにカードが7枚で、自分の《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》(《ベイB セガーレ》を指定)と相手の《ベイB セガーレ》がバトルゾーンにいる状況です。この《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》が攻撃する時に《時の法皇 ミラダンテⅫ》の「革命チェンジ」の宣言をしました。この場合、入れ替えられますか?
Aはい、入れ替えられます。《ベイB セガーレ》の能力は無視されていますので、置換効果は適用できません。

Q自分のマナゾーンにカードが7枚で、自分の《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》(《天翼 クリティブ-1》を指定)と相手の《天翼 クリティブ-1》がバトルゾーンにいる状況です。この《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》が攻撃する時に《時の法皇 ミラダンテⅫ》の「革命チェンジ」の宣言をし、入れ替えました。この《時の法皇 ミラダンテⅫ》はどうなりますか?
Aその《時の法皇 ミラダンテⅫ》は「出た時」の能力を使った後、《天翼 クリティブ-1》の効果で山札の一番下に置かれます。《天翼 クリティブ-1》の能力は無視されていましたが、《時の法皇 ミラダンテⅫ》が出た時点で《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》は離れているため、能力がトリガーします。

両裁定で結論が異なりますところ,両裁定のポイントは「出る時」と「出た時」の区別です。
革命チェンジ先が出る時点では,革命チェンジ元であるエモーショナル・ハードコアはバトルゾーンにいる一方,出た時点でエモーショナル・ハードコアはバトルゾーンから離れています。

この裁定に限らず,「出る時」と「出た時」の区別は結構重要ですから意識しておきましょう。


4 S-MAX進化に関する処理

以下の2つの裁定をご覧ください。

Q《あたりポンの助》の「出た時」の能力で《モモキングーMAX》を選びました。この状況で、自分の《モモキングーMAX》をバトルゾーンに2体残せますか?
Aいいえ、残せません。「S-MAX進化」クリーチャーが持つ「自分のS-MAX進化クリーチャーが2体以上あれば、そのうちの1体を残し、残りをすべて手札に戻す」という効果は、S-MAX進化クリーチャーが進化元を必要としないのと同じく、カードのルールですので、能力が無視されている状況でも適用されます。

Q《あたりポンの助》の「出た時」の能力で《モモキングーMAX》を選びました。この状況で、自分がゲームに負ける時、《モモキングーMAX》の「負ける時、かわりに」の置換効果を使えますか?
Aいいえ、使えません。《モモキングーMAX》の「負ける時、かわりに」の置換効果は、能力が無視されている状況では何もしません。


そのうえで,S-MAX進化のテキストを確認してみましょう。

■S-MAX進化:自分がゲームに負ける時、かわりにこのクリーチャーを破壊するか、自分の手札から《モモキングーMAX》を1枚捨てる。(このクリーチャーは進化元を必要としない。自分のS-MAX進化クリーチャーが2体以上あれば、そのうちの1体を残し、残りをすべて手札に戻す)


上記各裁定をみると,本文部分はエモーショナル・ハードコアで無効化できるものの,かっこ書き部分はエモーショナル・ハードコアで無効化できないようです。

同じ能力に関する記載なのにこのような違いが出るのはどういうことでしょう?


以下は,∞龍ゲンムエンペラーの裁定ではありますが,上記の問題が端的にまとめられています。

Q《∞龍 ゲンムエンペラー》がバトルゾーンにいる状況で、自分の《ブランド-MAX》の「S-MAX進化」は、どこまでが無視されますか?
A「自分がゲームに負ける時、かわりにこのクリーチャーを破壊するか、自分の手札から《ブランド-MAX》を1枚捨てる」が無視されます。注釈として書かれている「このクリーチャーは進化元を必要としない。自分のS-MAX進化クリーチャーが2体以上あれば、そのうちの1体を残し、残りをすべて手札に戻す」は無視されません。


どうやら本文部分は能力に関するテキストで,かっこ書き部分はカードタイプの注釈という位置づけのようです。

Q「S-MAX進化クリーチャー」とはなんですか?
A「S-MAX進化クリーチャー」とは、進化元を必要としない、新しい進化クリーチャーです。進化クリーチャーですので、出たターンから召喚酔いがありません。また、《魔龍バベルギヌス》の「出た時」の能力でいう「進化ではないクリーチャー」に該当しませんので、その効果では墓地から出せません。
自分の「S-MAX進化クリーチャー」がバトルゾーンに2体以上いる状況になった場合、そのうちの1体を残し、残りをすべて手札に戻す必要があります。

カードタイプごとの特性については,エモーショナル・ハードコアの能力でも無効化できません(進化クリーチャーが召喚酔いしないことやスター進化の除去耐性を無効化できないのと同様の話です。)。

なお,鬼S-MAX進化についても同様に考えればよいかと思います。


5 タマシード/クリーチャーに関する処理

新たに登場したタマシードとクリーチャーという2つのカードタイプを併せ持つカードですが,その裁定はちょっと複雑です。


下記(1)及び(2)は,∞龍ゲンムエンペラーに関する裁定です。

ゲンムエンペラーの無視する能力は常在能力ですから,エモーショナル・ハードコアと全く同じように考えることはできません。

もっとも,以下の各裁定については,「エモーショナル・ハードコアが先に場に出ていて,かつ当該タマシード/クリーチャーの名称を指定していた場合(以下,「エモーショナル・ハードコアが先に出ている場合」とします。)」または,「先にタマシード/クリーチャーが場にいるときに,エモーショナル・ハードコアを場に出して,当該タマシード/クリーチャーの名称を指定した場合(以下,「エモーショナル・ハードコアが後で出た場合」とします。)」とそれぞれ読み替えることで同じような処理となります。


(1) エモーショナル・ハードコアが先に出ている場合

Q《∞龍 ゲンムエンペラー》がバトルゾーンにいる状況です。自分の《深淵の支配者 ジャシン》をバトルゾーンに出しました。その《深淵の支配者 ジャシン》はどうなりますか?
A自分の闇のクリーチャーまたはタマシードの数に関わらず、能力が無視されたタマシード/クリーチャーになります。
《∞龍 ゲンムエンペラー》が出ている状況で、後から《深淵の支配者 ジャシン》を出した場合、「クリーチャーとして扱わない」能力が適用される前に、《∞龍 ゲンムエンペラー》によって能力が全て無視されます。これにより「クリーチャーとして扱わない」能力自体が無視されるため、それ以降、《∞龍 ゲンムエンペラー》の能力が存在する限り、能力が無視されたタマシード/クリーチャーになります。

エモーショナル・ハードコアが先に場に出ている場合,名称を指定されたタマシード/クリーチャーの持つ「クリーチャーとして扱わない」能力も無効化される結果,能力を持たないクリーチャーとして場に出ることになります。


そのため,以下の裁定のようになります。



(2) エモーショナル・ハードコアが後で出た場合

Q自分の《深淵の支配者 ジャシン》のみがバトルゾーンにいる状況です。《∞龍 ゲンムエンペラー》がバトルゾーンに出た場合、その《深淵の支配者 ジャシン》はどうなりますか?
A《深淵の支配者 ジャシン》は自身の能力でクリーチャーではないタマシードになっているので、能力は無視されません。
ただし、その後に自分の闇のクリーチャーまたは闇のタマシードがバトルゾーンに合計4つ以上ある状況になった場合、《深淵の支配者 ジャシン》はクリーチャーとしても扱われ、これにより《∞龍 ゲンムエンペラー》の能力の対象となり、能力がすべて無視されたタマシード/クリーチャーとなります。また、無視されている状況で自分の闇のクリーチャーまたは闇のタマシードがバトルゾーンに合計3つ以下になったとしても、「クリーチャーとして扱わない」能力自体が無視されているため、能力がすべて無視されたタマシード/クリーチャーのままです。

他方,先にタマシード/クリーチャーが場に出ていてかつ,クリーチャーとして扱われない状態の場合,エモーショナル・ハードコアの能力では,タマシードの能力を無効化することができませんから,タマシード/クリーチャーの能力を無効化することができません。

もっとも,「クリーチャーとして扱わない」能力が解除されてクリーチャーとなった時点で,エモーショナル・ハードコアの能力の影響を受けて,能力を持たないクリーチャーになります。


6 ゴッド・リンクに関する処理

ゴッドについては,以下の裁定を確認しておきましょう。

ポイントは,
①G・リンクも能力なので,エモーショナル・ハードコアの能力で無効化される
②既にリンクしているゴッドのうち1体を指定すると,リンクが解除される
③G・リンクを付け直せるのはゴッドが出るとき
④G・リンクは「出た時」ではなく「出る時」の効果なので,エモーショナル・ハードコアの影響を受けない
の4点かと思います。

下2つの裁定は,ゲンムエンペラー特有の問題があること(ゴッドがリンクすることでコストが合算される。),G・リンクするゴッドが極限龍神メタルと極限龍神ヘヴィであること(G・リンクを持つゴッドではなく,特定の名称を持つゴッドともG・リンクできるため。名称は無効化できない。)を別途考慮する必要があります。

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