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詩・ショートショート

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#ショートストーリー

森のお菓子屋さん(下)【絵のない絵本】

※題名に書いた「絵のない絵本」は、アンデルセンの短編集とは関係ありません。絵本のイメージで書いたお話、という意味合いです。本当は絵も書けたらよかったのですが……(察し)※ ↓ 本編スタート *** 次の日。お店はいつも以上に大繁盛。朝にやって来たネズミのサンが会う人会う人にお菓子の話をしたようです。 「こんなに美味しくなるなんて!」 「私も色々試してみようかな」 新しい木の実も途端に大人気に。そして、最後の一袋を買ったねこのグレースおばあちゃんは、 「チェルシーちゃんの

森のお菓子屋さん(上)【絵のない絵本】

※題名に書いた「絵のない絵本」は、アンデルセンの短編集とは関係ありません。絵本のイメージで書いたお話、という意味合いです。本当は絵も書けたらよかったのですが……(察し)※ ↓ 本編スタート *** とある森の中にある集落。ここでは、色んな動物たちが分け隔てなく仲良く暮らしています。リスのチェルシーのお父さんが営む木の実屋さんは、この集落で人気なお店の一つ。毎日ひっきりなしにお客さんがやってきます。 ある日の夜、お父さんが溜息をついていました。チェルシーが「どうしたの?

クレープのために【ショートストーリー】

「ジャムは絶対いちごなのに、クレープはいつもバナナだよね」 サヤは移動販売のクレープ屋さんからクレープを受け取り、すぐ隣にいたミユに話しかけた。一口目を頬張ろうと大きな口を開けた瞬間だったミユは、その勢いのままサヤの方を向いた。 「甘味に酸っぱさはいらないのよ!」 「ごめん、タイミングが悪かった」 そのやりとりを聞いていたレイカは、自分のクレープに視線を向けたままぼそりと呟いた。 「あー、『文字通りタイプ』ね」 「何そのタイプ笑」 サヤはレイカの不意打ちに吹き出

もしもゲーム【ショートストーリー】

平日の昼下がり、ミユとサヤとレイカの三人は、いつものように大学構内の食堂でテーブルを囲んでいた。金曜日は三人とも次の講義まで時間があるため、ここで駄弁るのが習慣のようになっている。 「ねえねえ、“もしもゲーム”しない?」 ひとしきり一週間の近況報告を終えた頃、ミユが思いついたように提案した。 「いつもながら突然だね? 全然いいけど」 栗色の髪の毛を揺らし、まん丸の瞳を更にキラキラさせて返答を持つミユに、サヤは苦笑混じりで答えた。もはやここまでがいつもの流れのようなもの