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詩・ショートショート

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2023年5月の記事一覧

羽化 【詩】

大人になれなくて 間に合わせの仮面も見当たらなくて 中途半端な顔をむき出しにして ジタバタするたびに転んでいた それは本当の話? それとも御伽噺? 実はすでに脱皮したあとで 仮面なんて必要なくて 薄い膜が触れて チクチク痛むだけだった そしたら気づいた あの子の顔の隙間 大人に見せかけて オートクチュールの仮面を被って 中途半端な顔を隠して 嗤っていただけだった それは本当の話? それとも御伽噺? どっちでもいいよ それではおさきに

ガラスの箱 【詩】

とつぜんの破裂音とともに きれつの入ったガラスの箱 オモイが詰まりすぎたかな 今はもう、スカスカだけど いまさらだけどお直ししよう かわいげのないOPPテープで かんだかい声をあげるテープが すきまを問答無用に埋めていく 歪なまま治されたガラスの箱が 光を乱反射してこっちを見てる きみはずっとこのままだけど ぼくの絆創膏はとれそうだよ

歯車と鶴 【詩】

2つの歯車 隣り合って回ってる どちらも微かに歪らしく 時々ギギギと擦る音 何かが磨り減って 雨の置き土産=錆 赤茶に染まる歯車2つ それでも無理やり回ろうと 四方に飛び散る小さな火花 何かが磨り減って そこに降り立つ一羽の鶴 純白の羽はすべてを包みこみ…… 赤く染まった鶴が飛び去っていく 燃えるような夕焼けを残して