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【吸死考】ドラルクは何故ロナルド事務所にやって来たのか?

割引あり

いやまさか、畏怖すべき吸血鬼が罠にかかる筈ないだろ。
しかもそれが『退治人の事務所』で、抜け出せない罠とか、そんなわけないだろ。

※この文章は漫画『吸血鬼すぐ死ぬ(盆ノ木至著)』の読者による非公式で個人的な解釈です。
※漫画『吸血鬼すぐ死ぬ(盆ノ木至著)』のネタバレを多分に含みます。
※作品内容の引用は適法な範囲内で行っております。また、記事中の出典は簡易記載です。詳細情報は参考文献と共に記事末尾に記載しております。

【!!本編以外もネタバレ注意!!】
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ノースディン過去編『氷笑卿の手記』 / クラージィの後日談『黒い杭のクラージィ』/
モブキャラ三木ifルート『mob



そもそも。

何故ドラルクは、ロナルドの事務所へわざわざやってきたんだろうか。

いや。だって自分を倒しに来た人じゃん。急に武器もって乗り込んできたじゃん。

何で一緒に住むんだよ

それに出会ったその日にゲーム機踏まれたし、城はなんか壊れちゃったし、朝日でマジ死しそうになるし。相手ときたら、死んだと思って帰っちゃうし。

そこから「確かロナルドって言ってたっけ」って検索してわざわざ押しかけたってことになるけども。追いかけて、埼玉から見知らぬシンヨコに……来たことになるけども。

いや、検索て……。流れで仕方なく、とかじゃなくて、自分で能動的に「あの退治人のところ!」と目掛けてやってきとる。

な……なんで……?

……「弁償させるべきだと感じたから」?
「城が壊れて住むところがないから」?

まあドラルク自身はそう言っている。2死で。この時の勢いがすごいので「確かに」と流されかけるのだが。後から考えるほど……この理由。

全然理由になっていないのだ。


ドラルクの言い分

再会直後の2死にて、ドラルクなりに理由として挙げていた内容。

ドラルク城再建までの仮の住処としてここを思いついたのだ

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』2死 ,p.31

我が城崩壊の原因は君がqsqをぶっ壊したことだ!!
弁償責任を追求するぞ
qsq!城!qsq!

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』2死 , p.32

主張をまとめるとこうだ。
君(ロナルド)が城崩壊の原因なので、再建の代金を弁償してね。そして城が再建できるまでは(仮の住居が必要なので)ここに住む」……。

な、なんとなく『それっぽい』。
でもそれっぽいだけで実際ムチャクチャしか言っていない。

(1)責任追求?

まず城崩壊の原因はロナルドではない

ドラルクがあまりにもメッチャ堂々としている為に騙されそうになるが、城爆発の事故原因となった「毒ガス」も「メビヤツ」も、本来「対侵入者用の罠」。つまりそう、あの罠部屋のバカでか刃物諸々と同じ括りのアイテムなのだ。
あの、見るからに「人をザク切りにして押しつぶして串刺しにしたいぜ〜〜!」なソレらと……同じ……。毒ガスも、メビヤツも、そういう物騒な武器なのだ。ジョークグッズではない。モノホンだ。その武器を使ったら、事故った……自爆した訳であって。
ロナルドはその武器で消し炭にされそうになった側だ。

銃を誰かに向けて撃って、運悪く暴発した」みたいな話だ。
それについて、撃たれそうになった誰か(推定被害者)に責任が問えるのか?

うーん、客観的に言って無理そう。

qsqは弁償するのが道理だけど、そんなんすぐ済むし、居候も事務所突撃も必要ない。実際壊れたはずのqsqで遊んでいる姿が17死で見られる(さっさと弁償したっぽい)。

それにこれ、客観的な話だけではなくて、「ドラルクの認識」としても別に「ロナルドに責任があるかどうか」なんてぶっちゃけどうでも良かったのではないか?という疑惑がある。

25死の血族新年会でも、「城のことは共犯じゃないか」とサラッと自分の非を認めているし。

一番怪しげなのは「城崩壊が父にバレたら法に訴えるかも」というロジックである。
だって……責任取らせたいなら、相手が完全に悪いと思うなら

ドラルク自身こそ最初から法に訴えたらいいじゃん

だがドラルクはそうしなかった。そういう手段があるのを知っていて、しなかった。初っ端に「追求するぞ」と言っておいて、ゲームやって牛乳飲んで料理しているだけ。
そして、父が知れば訴訟を起こすかもとか言いながら、「それ」を極力避けようと画策する……。

どうも、ドラルクにとって『責任追求と不利益の補填』は目的ではない……「城が壊れたムキーッ!弁償しろーッ」が動機とは言えなさそうなのだ。
ま、補填がもらえるんだったら、欲しいんだろうけども。

(2)住む場所がない?

え? 何? 城が壊れたから仮の住居が必要??
ホホホ……お戯れを……。

確かに城は爆発した。したし、流れで拾ってくれた少年の家からは追い出されたものの……。
そこからわざわざ吸血鬼退治人の家に転がり込むしかないほど住む場所に困っていたか?と言われると。ドラルクさん。別にそんなことはないよね

<ドラルク>
もしもしお祖父様?
新横浜に吸血鬼らしい城とか用意できる?
今すぐ

<御真祖様>
できる

『吸血鬼すぐ死ぬ 12』142死,p.101

「できる」んじゃん。爆速で出来るんじゃん。おじいちゃんに頼めばできるんじゃん。城。新しい城。

では頼まなかったのは何故なのかというと
ドラルク曰く、「城崩壊」を報告できなかった。「さすがにちょっと怒られるかなって」という理由で(25死)。

そ、そんな認識…?

い や、まあ、そこはいい。ロナルド視点からすると「ちょっと怒られるだけで済む」と言う時点で有り得ない感覚だが、今はドラルクの動機の話をしているので其処(人間庶民の感覚)は一旦置いておこう。

ドラルクが言っている理由……「怒られると思ったから隠す」というやつだが。

『ドラルクっぽい思考』という意味では、突飛な話でもないんだ、確かに。ロナ戦原稿捏造回(73死)でも、そんな事を言っていた。

自分に否がある状況で怒られるのが嫌だから全力で隠蔽したい』という理屈だった。その一心で「消去されてしまったロナ戦原稿」を大仏限界ギリギリ味噌汁ドラゴンにしたのだ。

「怒られるの嫌い。隠そう」という思考は自分的には当然のこと。だから、今回もそういうやつ。
ドラルクにしたら、きっとそんな話だろうけども……。

ちょっと、それに関して言いたい事がある。

ロナルド君がやりました

『吸血鬼すぐ死ぬ 3』26死,p.48

この……城爆発の。「ロナルドくんのせいにする」という手段で最後逃げたコレね。本当にあの時は躊躇いがなかったな……。一緒に隠してスゴロク頑張ったのに、バレたと思ったらすぐさま裏切って。

でもさ。そんなに秒で「ロナルドくんがやりました」できるならさ。

最初から「それ」でいいじゃん。
だって「ロナルドくんがやりました」なら自分の責任にはならないし、怒られないし。

机まわりをPCごと粉砕して隕石が落ちたと言うのも手だが

『吸血鬼すぐ死ぬ 7』73死,p.6

73死でも「隕石のせい」にしようと真っ先に考える。原稿を捏造するよりずっと簡単だからだ。

城爆もそう。
「壊したものの代わりを用意する」よりも、「壊れたのはアレのせいです!私悪くないです!」てやるほうがず〜〜っと簡単。お手軽。
というか『祖父や父が気まぐれに訪れない内に自力(弁償)で城を全部元通りに!』なんて限りなく不可能なの、流石にドラルクもわかってたと思うし。
そら、おじいちゃんの力があれば爆速で城も立つけど、それを頼れないなら話は違う。時間も金も足りない。

一方、「ロナルドへの責任転嫁」はドラルクにとって「いつでもできること」だった。

ただ「ロナルドのせい」だと、そう話せばいいだけなのだから。隕石のせいにする為PCを壊す、なんて手間も必要ない。それこそ城爆した朝、電話でもなんでもして「退治人が来たせいで……」と同じ説明をすればそれで完了。

なのに。
ドラルクは、祖父に城跡を発見されるまでは秘密にしていた。
さっさと人のせいにしてしまえば、ヒヤヒヤしながらバレる時を待つ必要すらないのに。

お手軽な方法を無視して、わざわざ手間のかかる余分な寄り道をした?

「怒られたくない」だけが目的ならば、この行動は説明がつかない

大暴れの謎

やっぱり2死でドラルクが説明した「事務所に来た理由」、軒並み辻褄が合わないし、根こそぎ適当っぽいな……。

と、確認したところで何なのだが。

正直言うとドラルクって、2死どころじゃなく、1死からもう謎思考全開なんだよな。

*1死と2死の不思議

例えば初っ端、なんか雰囲気ありげに脅したドラルク。と、思いきや急に死んで降参していたドラルク。そこまでビビるんだなぁと思ったら、今度は「子供の安全を脅かす発言」でわざわざ煽ったりするドラルク。退治人を罠にかけ、ビームで攻撃までして大暴れするドラルク。

……どういう情緒?

しかも後半の大暴れ、退治人の目的が「子供を無事連れ帰ること」だと分かった後でのこと、なんだよな。

ロナルドは警告した。「退治人の目的(子供の無事)を邪魔したらただではすまない」と。
逆に言えば、この瞬間にドラルクは「邪魔さえしなければ自分は安全」とわかった筈である。「子供を守る仕事を必死にしてるだけの人」だと知ってみれば、「仕事を逸脱するような事はしないだろ」という保証が出てくる。

急に武器持って家に入ってきた男が怖かったとしても、意図がわかればまあ冷静になれる

何もしなければ安全』。

なのに彼は、煽り、攻撃し。わざわざ話をややこしくした

??? 退治されたくないから降参したんじゃなかったのか……?

即降参するほど恐ろしがってる……し、大人しくして退治人に協力すればその場を乗り切れる。という状況で、あの無闇な敵対的な態度。退治人視点だと本当に意味が分からない
それほどの無茶をするくらいだから「人間」や「退治人」に悪感情があるんじゃないかと思ってしまうのだが……。
そんな敵対的な態度をとった上で、2死でノコノコと事務所にやってきて「私は友好的な吸血鬼だから助けろ!」と言い始まったんだよな……このオジサン……。

退治人の相手は下等吸血鬼や
悪意を持ち人に害なす輩
私のような知的で友好的な高等吸血鬼
人間社会と共存し得るのだよ

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』2死,p.32

いや、アンタ攻撃してきて……ええ……。友好??……とは……???
しかも、これ言った直後に一般市民(武々夫)を吸血したりするし……。
オ〜イ。友好的って主張で行くなら一貫して穏便な態度とってくれ〜〜〜!

と、端から見て「やりたいこと」が二転三転しているドラルクだが……。
実は。
この1死から2死の流れに関しては、彼の行動原理を一本化して説明することができる。

キーワードは、「畏怖」。


ドラルクは人間を畏怖させたかった

それによって「退治されない吸血鬼の立ち位置」を確立しようとしたのだ。

……

え、でも畏怖させるような敵対行動をとったら敵性吸血鬼だし、それって退治されるよね……?

?????
??🤔??
?????

何を言っているのかわからなくて不安になっている人がいるかもしれないが、安心して欲しい

これを書いてる私も「何言ってんだコイツ?」とちょっと思っているので……。

でもこの「何言ってんだコイツ?」が、ドラルクの中では完璧に筋の通った理屈なのである。


畏怖の力

なんだかんだ人間どもに
恐るべき吸血鬼として畏怖されたいってのは
みんな あるよね

『吸血鬼すぐ死ぬ 12』142死,p.105

吸血鬼には「畏怖欲」がある。「人に恐れられたい」という欲求

恐ろしい吸血鬼だ!と思われることが、彼ら(吸血鬼)には理屈抜きに快いことなのだ。「吸血鬼は人に恐れられてこそ」。そう本能的に思っている。
そしてドラルクはこの「畏怖欲」が強いらしい。

【ドラルク】モテはともかく畏怖欲に関しては実際、畏怖ケベ親父。ジョン相手に畏怖られ練習をし、ジョンは大袈裟にヌヒ~とか言ってあげている。

『吸血鬼すぐ死ぬ 20』250死柱情報,p.161

1死の初登場初会話、何の事情もわからん内に「問おう 愚かな侵入者よ」などと大仰な態度をとっていたのも、「畏怖欲」からくる行動と考えられる。

とにかく人間と来たら出会い頭に、畏怖練の成果、出しちゃう

264死でも「夜の散歩で遭遇した見知らぬ子供を開口一番怖がらせる」とかやっている。ヒナイチの過去編だが、あれは本編開始前。旧ドラルク城にドラルクが住んでいた頃の時制だった筈だ。これも同じ事だろうな、1死と。

ドラルクは会った人間を、とにかく畏怖させたかったわけだ。

畏怖欲が強い彼にとっては「こんな畏怖らせチャンス、逃せないね」と。

(1)「畏怖」と「退治」

ただ……「畏怖」と「退治」の関係について、ドラルクはかなり不思議な感性を持っているようだ。

いや…何その反応?
もっとあるでしょ畏怖するとか
今すごくキマってたでしょうが
怖がりなさいよ
言うに事欠いて退治って

『吸血鬼すぐ死ぬ 22』264死,p.7

「畏怖らせ」に応じて負けじと戦う意思を見せた子供(幼少ヒナイチ)に対してこの台詞である。まるで「退治する」という発想特殊で、常識はずれとでも思っている様子ではないか……。

ドラルクがあんまりにも自信満々で混乱しちゃうかもしれないので、改めて確認しておこう。

人が吸血鬼を恐れるのは、「人間を害する存在」だと思うからだ。安全と思うなら怖がったりしなかろう。
そして「自分にとって危険なものから身を守る為に戦闘態勢となる」のは人間からみればごく自然なこと。つまり怖がるからこそ、畏怖するからこそ退治するのだ。
弱気な者が逃げたとして、本当に脅威に思われたなら「強い奴」が代わりに倒しに来る。身の安全を守る為に。

しかし、どうやらドラルクの理屈ではそうではない

吸血鬼が吸血鬼らしく恐ろしげな登場をしたなら、人間は怖がるものであって退治なんてするもんじゃない、と。
「畏怖」と「退治」はドラルクの中では、とてもとても遠い概念らしい。

(2)幻想の畏怖り人間

「人間を畏怖させたなら、退治なんてされるはずがない」。

いやそんな論理成立すんの? どうやって? という気がしないでもないが、ヒントはある。
彼の父、ドラウスだ。

<ドラウス>
ひれ伏すがいい 人間どもよ
お前たちが野卑な真似をせねば我々も野を屍で汚すまい
だがお前たちの命は我が手中にあると忘れるな…!

<畏怖畏怖クラブスタッフたち>
は…はいっ…
どうかお慈悲を…!
ああ 夜を光で荒らすべきではなかったのだ…!

『吸血鬼すぐ死ぬ 19』230死,p.70

これはドラウスが訪れた「畏怖畏怖クラブ」での「"吸血鬼様"に"最高の畏怖をお届けする"接客サービス」の様子である。

一応流れを説明すると、
「酒場の客たちが吸血鬼(ドラウス)を恐れるあまり退治をしようとするも出来ず、慈悲を乞い降伏する
というシチュエーションになっている。

ドラウスからは「お前たちの命は我が手中にある」と物騒な脅し文句が飛び出す。だが、それを受けてなお人間たちは「命を奪られないこと」を「慈悲」と表現し縮こまり、反抗する気をすっかりなくして頭を垂れていたりして……。

そう、まさにこれは「畏怖されたからこそ退治されない」という状況なのである。

しかも、そんな畏怖接客を体感したドラウスは興奮気味に「遥か世紀」に思いを馳せ、「人間が我々を恐れ敬った時代そのもの」とコメントした訳だ。

成程どうも…遠い過去にこういう状況は確かに在ったらしい。
まあ、「在った」というだけで、吸死世界の現代では『高級なクラブで味わうしかないくらい幻のシチュエーション』なのだが……。

たぶん、その「吸血鬼畏怖すぎて退治されないエピソード」を父ドラウスから聞いていたんじゃなかろうかと思う。ドラルクは。

実体験として語られる「畏怖い吸血鬼像」
畏怖欲の強い彼が、それに自分を重ねて想像していたとしたら……。そうやって本物の人間を然程知らないまま、父の話の中に出てくる「畏怖って退治できなくなっちゃう人間」の幻想を……200年間膨らませてきたのだとしたら?

彼は、人間の創るエンタメ(ゲーム・本・映画)を好んでもいる。
その物語たちの中でも、「強くて恐ろしい吸血鬼が退治される描写」など目にする機会は散々有ったはずだが……。
争いから守られ、人間社会に入り込んだ事がないドラルクにとっては「どこまでがフィクションによって作られたイメージなのか」なんて、実際問題判断のしようがなかった筈だ。

弁護士じゃない人が、弁護士のドラマを見ても「どれくらい事実に即しているか」わからないと思う。それと同じ。
そしてそんな時、「弁護士をやっている友人」が「ドラマと違って、こういう事があるんだ」と教えてくれたらどうだろうか?

『信じちゃう』んじゃないか?

「身近な誰かの体験談」と「フィクションの中の描写」が食い違っていたら。「フィクション」の方を事実から乖離しているものだと思うのは……ごく自然なことだろう。

しかもドラルクは、殆ど会えない母について父からよくよく聞かされて、それを信じて誇りに思うような……そんな素直な息子だったのだ。

「強い吸血鬼が倒される描写」を見る度に、「人間の娯楽なんだから人間の願望を描くのが当然だよね」、なんて。

「ヘルシング氏と御真祖様の出会い」と「映画で描かれた英雄ヘルシングと吸血鬼の王の戦い」に関しては正にその通りのことが起きているので、それが更に彼の思い込みを加速させたところはあるかもしれない。

ははーん、そうか。例え事実を元にしていてもフィクションならば、大袈裟かつ都合の良い感じに脚色されるものなのだ。
人間は強い吸血鬼を倒したいに違いない。倒せないからだ。だから願望で思い描く。時に「本当に退治しよう」なんて気を起こすが、本物の畏怖を目の前にしたらそんなことはできない……。
フィクションの通りにはならない。畏怖でひれ伏しちゃう。だってお父様もそう言っていたんだし、と。

いや…何その反応?
もっとあるでしょ畏怖するとか

『吸血鬼すぐ死ぬ 22』264死,p.7

旧ドラルク城に住んでいた頃のドラルクは、言ってしまえば道ゆく全員に「高級クラブ接客のようなリアクション」を求めるオジサン状態だった訳だ。幻想の中の「それ」こそが実態に即した正しい人間の姿だと思っていた。
しかも本人としては、「フィクションの見過ぎで勘違いしちゃってるのかな?ほんと今ドキの子はさぁ……」くらいの認識で。
だから「退治」なんて常識はずれ、こちらの吸血鬼らしさが理解できれば「畏怖するとか」でしょ普通、という論調になる。


(3)畏怖があれば

そんな思考回路を前提にすれば、1死2死ドラルクから滲み出る心理的矛盾何がしたいかわからん謎が、だいぶシンプルに捉えられる。

ドラルクは間違いなく「退治されたくなかった」はずだ。そんなの畏怖じゃない吸血鬼がされることだし……再生が素早いとはいえ、退治人が銀弾で心臓を撃ってきたら終わる。これはファンブックの1巻にも載っている。

でも「退治されたくない」から、大人しくしとこ、とは限らん訳で。

私はコウモリになって先に行くよあの小僧の血が残っているうちに間に合うといいな退治人くん!

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.13

ドラルクは、「畏怖の力」を信じ込んでいた。

「ガキに何かあったらただじゃおかねえ」と警告したロナルドに対し、逆に子供を襲う宣言をして煽ったドラルク……こんな言動、人間の視点から見れば、「退治待った無し」だが…。

ドラルクからすれば……「畏怖の力」があれば、難しい問題は何もない

畏怖接客では、プラチナコースの退治人役スタッフでさえ「退治…」と言いかけてやめ、「一戦願いたい」と申し出る。
「退治してやる」、なんて言わないのだ。一戦を交えるかどうかだって、吸血鬼側の選択。人間はそれに従い、委ねて、有難がるのみ。

1度、畏怖さえされれば。
「戦いを拒否」したって、畏怖いまんまだ。畏怖畏怖クラブでのドラウスと同じ、「野卑な真似」を禁じただけなんだから。
そんなことをしたら分かっているな、と怖がらせておけば良い。それで平和。退治なんかされないし、自分は畏怖されて気持ちが良い

畏怖畏怖クラブの接客は「吸血鬼の妄想としてありがち」なものを再現しているのだろうから……たぶん、ドラルクが思い描いていた流れも、あんな感じなのだろう。

だから、「退治されたくない!」と「攻撃しよ!」は全然両立するし。畏怖が有れば相手は従順になり対立構図にもならないので、そのまま「友好な関係」を語ることさえできるのだ。

ブレブレで矛盾しているように見えた1死2死ドラルクの言動が、なんとスッキリ。
「畏怖畏怖クラブ的世界観」で一本化できる。

畏怖する様子のないロナルド。「何かあったらタダじゃおかねぇ」と脅してくるロナルド
こんなの、畏怖畏怖クラブの世界観なら有り得ない態度だ。「恐怖による支配」は吸血鬼が人間に行うものなんだし……。
いわばロナルドは「大間違い」を犯していて、不適切な状況だったわけである。

その「間違い」を訂正する手段として「攻撃」を選ぶというのは……「畏怖畏怖クラブ的世界観」なら違和感がない。
(ドラウスの言う「お前たちの命は我が手中にある」というのを実演する形)

「誘拐の疑いがほぼ晴れて、もう子供を帰すだけ」という状況でわざわざ暴れ出したのって変じゃない?
……という疑問も、畏怖クラ世界では「そんな人間の理屈知らん」、でしかない。
きっと、誘拐だとかそうじゃないとかよりも「畏怖されていない」という話の方がドラルクには重大だったのだろう。

そりゃ、犯罪者として見られるのは流石に「畏怖」どころじゃない。社会的に不味い。そんなのは避けたいと考える……人間だったら。が、そこは、社会なんて経験したことのないドラルクである。
法律を知識として知っていても、文字越し、画面越しの遠い世界(人間社会)のルールだ。
それが自分にも適用されるなんて、咄嗟に想像がつかなくてもおかしくはない

ミツバチ社会では「働き蜂が花から蜜を集めてハチミツを作る」らしい、なんかそういうルールで回っているらしいと知っている。大体の人が。でも、まさか「自分も花から蜜を集めなきゃ」とは発想しないだろう。自分がその社会の一員とは思っていないからだ。
ドラルクにとって人間社会がそれほど遠く、不慣れな世界なら、まあしょうがない。

犯罪の不味ささえ直感的に察せないほど、「社会」に不慣れなドラルク。

と考えてみると……それこそ攻撃をためらう理由なぞ、ない。彼はそんなもの持たない。だって何が悪いのか良いのか、感覚で見当がつかないんだもの。
加えて、ドラルクは死にやすい体質から「死の重み」や「死の恐怖」を感じていない
まあまあ連載が進んだ時点でも、「死ぬってそんなに怖いかねぇ?」なんて言うくらいだ……(137死)。

いつ出てもおかしくない発想』だったと思う。「人間を攻撃しよう」というのは。それこそ引き金を引けば応じて発射される、銃の実弾のように。それくらい、ドラルクの価値観は「異質」で、危うかった

そんな果てしなく低いハードル……軽い認識を加味すれば余計、「相手が畏怖しないので、畏怖させようと暴れ始めた」という理屈で1死の行動を説明できそうだ。

できそう、なのだが……。


さて、ここでの注目は、この低〜〜いハードルだ。
「人間に殺傷攻撃吸血をするかどうか」というハードル。

これをドラルクが、ずっと越えずにいたということである。本編開始の時点まで、ずっと。

ここまでの話でだいぶ「畏怖欲の権化」っぷりや「認識のズレ」を強調してしまったので、もう……ドラルクの印象が

畏怖されなかった=即大暴れ」!いつ爆発してもおかしくない!

みたいになってしまったと思う。だが、思い返してみると。

1死のアレは初犯だ。

理由は単純、「畏怖畏怖クラブ的世界観」という幻想を維持したまま生きていたからである。
もし過去に人間に危害を及ぼすようなことをしていたなら、人間社会はドラルクを放ってはおかなかっただろう。そうやって人間社会が自分を罰したりしたら、彼の幻想の世界観は壊れてしまう
やったことがないから、「やったあとどうなるか」を知らずに都合の良い夢を見ていられたのだ。

そしてご存知の通り本編1死とは、「保護者なしで暮らし始めてからウン十年後」の話。つまりドラルクには、「畏怖欲滾りつつ1死みたいなことを起こさなかったン十年間」という空白の期間が存在する。

嘘……? あんなに畏怖欲滾ってるのに!?
夜道の第一声で人間を脅かしたりとか余裕でしていたのに!?
1死みたいなことを、それまで起こさなかった……?

「攻撃するのは流石に」みたいな精神的なストッパーもなかっただろうに……

……

いや。本当のところ、ストッパーはあったのだ。
ただ、もちろん人間的が共感できるような「死や攻撃への抵抗感」があった訳ではない

おそらく1人の悪魔祓い……

クラージィのお陰なのだ。


安全装置クラージィ

(1)懐柔せしめた思い出

悪魔祓いクラージィが訪問してきた時の記憶を、ドラルクはこう語っている。

ドラルク:超昔、私が悪魔祓いの人を懐柔せしめたことがあったでしょう。

『氷笑卿の手記』-盆

彼にとってアレは、成功体験。守られて育った弱いドラルクが、見知らぬ人間と1人で対面して無事だった。そういう自信の裏付けにもなる記憶だ。師匠ノースディンも、「クラージィ訪問事件」の成功を参考に修行をつけている。

そうだ!お前は人畜無害なフリをして人間どもを影から操る者となれ!

『吸血鬼すぐ死ぬ 23』278死,p.25

つまり、1死までのドラルクは「戦術」として「クラージィへの対応」をブラッシュアップしたものを身につけており……過去の経験を根拠にそれが通用するイメージで行動していたのだ。

そう見ると確かに、1死より前の時制である264死の行動は「対クラージィ式戦法」の範囲から出てはいない

夜道で出会った「小僧」、幼少ヒナイチにも「言葉や変身での畏怖アピール」はしたけれど。攻撃や吸血は……しなかった。そして結局、会話や弱さで敵意を削ぎ、「穏便に協力関係となる」という流れを辿った。最初から最後までずっと偉そうだったのは偉そうだったのだが、それだけである。

これはクラージィに「私はこんなにも可愛いのに!」という主張をぶつけていたのと基本スタンスが一緒だ。会話でアピールする。かわいいでしょ、と見せる。それ以上はナシ、という。

こっちがデフォルトだったとするなら、「1死までずっと攻撃・吸血をしてこなかった」のも自然なことだろう。
身体的に不得手なのに加え……ドラルクの意識上では「暴力」なんて、駆使するまでもないもの。自分には違うやり方がある。「悪魔祓いの人を懐柔せしめた」時と同じようにすればいい。

……そう思うように、いい感じに誘導したのだと思う。ノースディンが。

何せ対立時代ときたら、クソザコの身で攻撃なんかしようものなら一貫の終わりである。例えクラージィのような男でも、攻撃されれば「やはり悪魔は敵だ」と判断して退治してしまっただろう。

ドラルクの身を守る為というなら、「自分から攻撃」なんか、してはダメだ。「攻撃しないように」は、修行の必須要素

(2)「降参」っていいな

そういう意味で言うと。
1死の序盤でやっていた「降参」も、「対立時代を想定して身につけた戦法」なんだろうな。

「ドラルクが自分から攻撃しないように」と仕込むのはいいとして……それだけじゃ万全とは言えない

もしも、相手が出会って即攻撃してきたら?

……やはり終わりだ。為す術がない
弱すぎて敵意を削ぐ才能」があるとしても、油断させる会話術を磨いても。
結局は「それらをアピールする時間」が必要。話を聞いて貰わなきゃ……。

特に「殺るか殺られるか」の時代の悪魔祓い相手なら、まずは攻撃を留まらせないと。となれは最重要は、時間稼ぎ」。

何?
落ち着け整理しろ おそらくこれは悪魔の幼体だ
で なんで死んだ? 何も分からん

『吸血鬼すぐ死ぬ 23』278死,p.16

その最重要を、15歳ドラルクが偶然にもこなしていたのが、このシーン。

読みなおしてみるとクラージィは、「その心臓に今日こそ」と強く念じ門を開けたところだった。いつ敵が出てきても攻撃できるよう杭を構え、気を張り詰めていた様子なのだが……。そこへ、攻撃するよりも速く子供が現れ、目の前で塵になり……。

戸惑い、思考停止した。黒い杭のクラージィ、何もわからない。神よ。
引用の字面だけでも混乱しているのがわかる。

そして混乱する間に、ドラルクの「もてなし」や「おしゃべり」が始まったのだ。その後もクラージィはドラルクが死ぬたび混乱し……流されていった……。

そう、ドラルクの「死」は……時間稼ぎや撹乱として極めて有効なのである。
そりゃまあ、何もしてないのに相手が死んだら意味不明すぎるし、呆然とするっきゃないだろう。
シンヨコの面々は慣れすぎて無反応だが……女子会潜入回(111死)に出てくる吸血犯の男とか見ると、凄い。ドラルクが急に死んで慌てふためいていた。それでポロッと自白して、遅れて駆けつけたマリアたちに退治されてしまって……。
その後「死んだだけよアタシは〜」とドラルク(ドラ美)は笑っていたが、あれは見事な「撹乱」「時間稼ぎ」だった。
びっくりするのだ、普通は。殺意満点の猛者でもそれは同じだ。
「敵の死」という目的が想像を追い越して現れたら混乱する。間違いなく。クラージィでなくとも。

対立時代の悪魔祓い・退治人を相手にするのなら、攻撃される前に素早く負け、全力で死ぬ事だ。

それできっとドラルクは「相手とコミュニケーションする時間」を得る事ができるだろう。そして接する中で自分から攻撃さえしなければ、自ずとドラルクの弱さが伝わり、相手の敵意は削がれていくはず……。

そんな風にノースディンは考えたのだと思う。

確か、1死でドラルクが「降参」したタイミングは……ロナルドとお互いに名乗り合った直後だった。
目の前の相手が「退治人」だと知って、慌てて「降参」したのだ。

あんなに重たくて分厚い扉でドアバンできるようなムキムキ男相手にも「畏怖なセリフ」を吐ける癖、急に情けなく降参したドラルク。「度胸があるんだか無いんだかわからん挙動」は、ドラルクの「意味不明さ」を加速させていたが……。

だがなるほど。「自分が勝てない相手」に怯えて降参するのでなく、「職業」という全く別の基準で降参していたのか。

やべ!人間だから「畏怖させよ!」て飛びついたけど、「退治人相手」だと一旦「降参」しといた方がいいんだった!せっかくの畏怖アピールができん!

みたいな感じか?

……

うん……さっきから思ってたんだけど、
ここまで「対クラージィ式戦法」を仕込むんだったら、ノースディンさんよ。
「畏怖アピール」をやめさせるのは出来なかったんか???


…………出来なかったのだ……。


(3)限界独自アレンジ

対立時代においても生き残る為、師匠が弟子に身につけさせたであろう「対クラージィ式戦法」。「弱さアピール」をして敵意を削ぐ方法論。
しかしおそらく、ドラルク自身はそのミソを理解していない

当然である。
理解していたら「人畜無害なフリ」をしろ、と修行をつけられといて「畏怖アピール」なんかしない。
畏怖されたら退治されない」なんて思い込み続けていられない。

これは明らかに問題だ。戦法の効果に支障をきたしかねないバグ。

といって認識を正すのも……しづらい、どうしても。

何せ、ドラルクはクラージィに対して、最終的に吸血するつもりだった。

つまり「あの方法で吸血できるはずだった、自分は途中まで成功していた」というのが、彼のモチベーション。それを奪っては、せっかくのやる気に水を差すことになる。
会話でアピール」して「自分から攻撃しないようにする」。
この方針に意欲的に取り組ませるには……その結果として「イイコト」があると思って貰わないといけない。

「めちゃめちゃ上手く篭絡すれば、人間は自分から吸血させてくれるものなのだ」……そう、勘違いしておいて貰わないと。

おのれ 全然吸血ムードにならない
この作戦間違っているのでは?

『吸血鬼すぐ死ぬ 3』24死,p.22

で、ギルドの忘年会(24死)。「酔わせて吸血」なんて目論んだ時にまで、ずっと勘違いしていたわけだ。あの時ドラルクは、どんなに相手が泥酔したとして、自分から噛み付くことはなかった

だって、「悪魔祓いの人」の時はそうして、上手くいくところだったんだし……当時より技術を磨いた今なら、尚更出来ないはずないんだから

ひたすら「飲ませて喋る」「飲ませて喋る」を繰り返して「何故か上手くいかない!」と不思議がって。それでも「吸血ムード」という空想の存在を信じて繰り返し続けた。

……「篭絡した人間が、自分から血を吸わせてくれる」。

この考えは、彼を「敵を作らない範囲」に留まらせる安全装置だ。
吸血したいからこそ、自分から吸血しない、という選択になるから……。

が、同時にドラルクの中の「願望的な世界観」を前提としたものでもある。

『自分の存在の素晴らしさによって、相手が勝手に「その気」を起こす筈』。

いつもそんなだ。ドラルクは。

「お土産が欲しい」→「きっと自然にお土産を渡したくなるでしょ?」。
「吸血したい」→「きっと自然に吸血してもらいたくなるでしょ?」。
「畏怖されたい」→「きっ自然に畏怖しちゃうでしょ?」。

その感覚は……
「吸血鬼の存在を敬い、恐れ、有難がりつつ支配される人間」という、「畏怖畏怖クラブ的世界観」と地続きになっている。

当たり前だけども「畏怖畏怖クラブ的世界観」。「自分を無害と思わせ、敵対しないようにする」という方法論と思いっきり逆行しているんだよな。
逆行しているけれども……それも合わせて「安全装置」だ。「安全装置を破壊するわけにはいかない。ので、訂正もできないという訳だ。

背に腹はかえられない。

それに、クラージィをもてなす様子では「かわいい」に拘っていて「畏怖」にそこまで興味はない様子だった。成長するにつれて畏怖欲が強くなって、独自アレンジを加えてしまった、ということだとすれば……。尚更、ノースディンが修行の段階でどうにかするのは不可能というものだ。

まあ、前向きに考えるなら……内心で何を思っていようとも、「ある程度接することで(クソザコさが)伝わる」という意味では結果は同じだ。「生存戦略」としては成立する。

実際264死では、「対クラージィ式」に「畏怖アピールアレンジ」を加えながらも、早い段階でヒナイチの敵意を削いでいた
人間視点、結局弱いのが明白で攻撃もしてこない吸血鬼だったからだろう。

……「自ら攻撃さえしない限り」。

クラージィがくれた「成功体験」の思い出をなぞる限りは、ドラルクは安全だった。少なくとも日本で暮らし始めてからは、それで何とかなっていた。
散歩の途中で人間を脅かしたりとか、時々あったかもしれないけど……。
被害がないなら大騒ぎにはならない。

1死でも、本当ならそう。序盤ではその「いつものルート」に乗っていた。

退治人だとわかって慌てて一旦「降参」した。
相手が混乱したタイミングでシームレスに「私はこういう存在で」という話へと移行した。
自分のイメージが間違って伝わったと思ったら訂正したりした。

例えば「ザコ野郎」に対しては「ゲームとかなら強いぞ」と。「自分で畏怖だなと思うこと」を述べた。

<ロナルド>
とぼけるなショタコン!とっととさらったガキを出せ

<ドラルク>
誰がショタコンだ
私の好みは うなじのキレイな美少女

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.9

このズレた返しもそう。小児誘拐を疑われているのに、ちゃんと「濡れ衣だ」と否定せずに「好みは美少女」なんて言ってしまっているが……。

ドラルクとしては「アホの変態による謎の自白」のつもりはなく、「畏怖アピール」のつもりだ。
彼が言いたかったのは、たぶんこれ。

吸血鬼にとってもっとも美味なのはうら若き処女の生き血なのだよ

『吸血鬼すぐ死ぬ 1』6死,p.83

この「吸血鬼あるある(?)」からの引用かな……うら若き処女、つまり少女。

要は、「美少女の血を好む」なら、必然的に吸血鬼らしいということになる。つまり、「異常性癖」「ショタコン」と言われたことに対して、

私の好みは異常じゃない、ちゃんと吸血鬼らしいのだ!

と主張していた訳である。(わかる訳ねーだろ)

人間は吸血鬼を畏怖するもの、吸血鬼らしさとはつまり畏怖なので、「私は吸血鬼らしい」→「私は畏怖いのだ」というロジックだろう。

……ちなみに。「処女の生き血」が美味だの、に関しては、ドラルクが自信満々に言ってるだけで実はスラングのようなものらしい。血の好みは吸血鬼によって違うし一概に言えるものでもないとのこと(FB2/p.49)。えぇ……😅
6死、「吸血鬼とはそういうものだ」みたいな訳知り顔してたのに、あれもイメージの世界観だったんかい〜。

やっぱり「情報」は沢山得ていても、「それが実態と一致しているか」の判断はできない……ってことなんだろうな、初期ドラルク。吸血鬼のことだって、人間のことだって、実態はよく知らない。

でもとにかく、彼は自分のイメージの中の「私はこんなに素晴らしくて」「吸血鬼らしくて」「畏怖くて」というのを伝えていて。同時に「人間共の言うような強大な存在」ではないし、ましてロナルドの言う「ただのザコ野郎」でも「異常性癖」でも「変態」でもないんだ!
と、あくまで言葉で伝えようとしていた。ドラルクの思う「正確な吸血鬼ドラルク像」を伝えていたのだ。

クラージィに「かわいい完璧な私」の話をしたようにだ。

成功事例である「クラージィ訪問」の流れに寄せていっていた。
その方法で過去と同じように上手くいく、と思っていたから。

だがどうしてか、そこからドラルクは「やりすぎてしまった」。

彼に似ている

ここまでの話をまとめると……。

『ドラルクはいつ人を害してもおかしくない価値観だった』が
『過去の成功体験によって行動がワンパターン化していて安全』だった。
『でもなぜか1死では、そのパターンから行動が逸脱した』。

つまり、
『この銃って実弾入ってるけど、いつもは「安全装置」が機能してるから平気な筈なんだよね!でもあの時は何故か「安全装置」が働かなくて……。実弾出ちゃった!』

みたいな感じである。(危険すぎる)

つまり問題は、「何故、その時に安全装置が働かなかったのか」だけれども……。

これを解き明かすにあたり、ちょっとここで……別の人物の話をしたい。
ドラルクと共通項があって、大変参考になるので。

その人物は、吸血鬼ではない。人間だ。
初期ドラルクと同じような心理で動いていた「人間」がいるのだ

不気味なまでに人間社会を知らなくて、ルールなど関係ない素振りで、こちらの感情を推し量ってもくれず、話も通じない……あの日のドラルク。

と、同じような「人間」。



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