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多様な部活動のありかたについて。

長沼科研第2回公開研究会
11/15(日)「持続可能な部活動のあり方を考える~2023 年度からの休日の地域展開を視野に入れて~」

昨日、この公開研究会を拝聴しました。

私は、米国でスポーツ報道に携わりながら、米国の運動部活動を日本語で紹介することもしています。(拙著の宣伝です! なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか

研究会では3つの高校の事例と、NPOの1事例の報告がありました。これは米国では、どういうことに当てはまるか、というふうに比較、考えながら聞いていたのですが、私なりの気づきがあったのでここにまとめます。

高校の1事例とNPOの1事例では、他の学校と競うのではなく、その学校の校内で活動することが中心のようでした。

米国では学校運動部は ATHLETICS というカテゴリーに入っています。学業がACADEMICSです。

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この写真は、私の隣の街の高校のホームページのトップをスクリーンショットしたものです。各運動部の紹介はATHLETICをクリックすると出てきます。

学校の課外活動はATHLETICだけでなく、演劇、ブラスバンドなどもあります。このほかにCLUBSというカテゴリーがあります。このCLUBSは、このホームページの右端のSTUDENTSのなかに入っています。

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全てをスクリーンショットに収めることができなかったので、クラブ数はこの写真に映っているよりも多いのですが、ディベート、美術部、日本語クラブなどがあり、日本の文化部にあたるものが多いです。でも、この高校は、フィギュアスケートクラブもあります。


CLUBの活動も、学外交流や、他の学校と競うこともあるのですが、一般的には、その回数は運動部よりも少なく、活動時間そのものも、運動部よりやや少ないと思います。放課後に残らずに昼休みに活動しているクラブもあるようです。CLUBの顧問をする教員もいるのですが、教員の課外活動指導に対する報酬は、運動部の指導をする教員よりも少ないのです。活動時間(つまり仕事時間)が少ないからです。

私の観察している範囲では、CLUBは生徒による立ち上げが行われやすいという特徴があると思います。次男の高校には事務室に「CLUB立ち上げ申請書」というのが置いてあり、書式も簡単なものでした。生徒自身がやりたいことがあり、仲間を募って、学校のクラブ活動としてやりたい。そこで教員に顧問やスーパーバイザーを依頼する、という手順であり、生徒の自治、結社的自治に近いです。


ATHLETICSのカテゴリーに入っている運動部、特に一軍は、学校の代表とみなされていますし、出場時間やポジションもコーチ(主に教員)が決めることが多いと思います(例外の学校はあるでしょうが)。生徒の自治が発揮される場面は、CLUBに比べると少ないと思います。

米国の公立高校では一般的かどうか知らないのですが、intra school sportsという活動もあります。これは学内スポーツ活動ということで、他校と競うことはせず、校内の範囲でスポーツ活動をするということです。

この言葉を初めて知ったのは今から5−6年前に、フィリップス・エクスター・アカデミー高というボーディングスクールの説明会でした。この高校は、全米トップの私立高のひとつで、多くの生徒をアイビーリーグへ送り込んでいます。エクスターでは、生徒全員が何からの運動部活動に参加するそうです。質疑応答のときに、ある女子中学生が「運動が苦手なので、運動部のトライアウトに受かるとは思えないのですが、それでも運動部に入るのでしょうか」と質問しました。この回答が「校内スポーツ部がありますよ」ということでした。


私の長男も寮のある私立高に在籍していました。この学校では体育の授業がないため、全員が何らかの運動部活動に参加するのですが、彼の話によると「トレーニング部」というものがあり、この部は対外試合はなく、校内のジムなどで体を動かすという内容だと言っていました。

今まで、私は米国高校のATHLETICSを中心に取材をしていたのですが、これからは、CLUBやintra school sportsにも目を向けて、多元的な課外活動のありかたに目を向けるべきだというのが、昨日の研究会での感想です。

もうひとつの事例は、週末の運動部活動は、保護者が会費を支払って、コーチ(おそらく教員)から指導を受ける受益者負担の私立高校の紹介でした。
教員に時間外労働をさせない、もしくは休日に運動部の指導をするときには、その対価を支払うことのあらわれだと思います。

教員への報酬、ということを米国から考えると、教員は正規の勤務に対する契約のほかに、学校運動部の指導をする教員は、supplemental contractという補助的な契約を結んでいることが多いようです。仕事とそれに対する報酬を時間内と時間外に分けるという考えは、昨日、紹介された私立高の休日の活動のあり方と考え方としては似ていると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。記事は無料で公開し、みなさまからのご支援は、今後の取材の経費とさせていただきます。