競技ゴルフと私 4.1
前回の続きを書いていきます。
ユタでプロ転向間近の選手を目の前で見た試合のことを書いていますが、私が感動したのはその事ではありません。
彼の人柄です。そして父親です。
ティーグランドで先輩から後半キャディーをする、ナオ(アメリカではナオで生活していました)だと紹介されるとニコニコしなが握手を求められました。彼の父からも求められました。珍しい事ではないのですが、当時は経験が無かったので何となく嬉しく、何となく恥ずかしく思いました。日本で握手する事はまずありませんでしたので。
そしてスタートすると歩きながら話かけてくれました。
彼からすると、私が日本人ということもあり珍しかったのかもしれませんし、どうも高校生ぐらいに見えていたらしいです。一つ下だと言うとビックリしていました。アメリカ人からすると日本人は相当若く見えるみたいです。
2020年40歳の時にアメリカに行った時も25歳ぐらいに思われていました。
当時英語が話せる訳ではありませんでしたが、何を言っているかは理解出来ました。ジェスチャーや片言の単語で答えるのが精一杯でしたが、それでも何故か話しかけてくれてました。
通常試合中なのであまり会話しない選手が多いのですが、何故か話かけてくれ、会話を楽しんでいる様でした。さらに彼の父親も話しかけてくれ、そんなに英語が話せる訳ではないので、どちらかと言うとそっとしてもらいたいぐらいでした。
さすがに何を話したかは覚えていません。
プレーが進む中で、いろいろ感じる事がありました。
彼は同伴競技者に対してもとても親切でした。4人でラウンドしていたので、同伴者のボールもよく見ていましたし、動きにも気を使っていました。
その競技に出てくるので皆うまいのですが、誰でも球は曲がります。それを真剣に探してましたし、父親も探していました。当たり前の様に聞こえますが、意外と探すふりだけするプレーヤー、探さない人もいます。人のプレーやボールを見ない人もいます。
しかし彼や父はそう言ったプレーヤーではありませんでした。
同伴者が良いショットを放てば、「goodshot」と言う以上に喜んでいる様にも見えました。同伴者のバーディーやパーセーブも嬉しそうでした。父も同じ様に嬉しそうにしていました。
その組みには私と彼の父の二人が帯同してキャディーをしていました。他の二人は自分で担いでプレーをしていました。
なので私と父で4人のキャディーをする様な形で進行していきました。ティーグランドやセカンド、グリーン上でのヘルプをする感じです。
上手く行動すれば、他の選手のボールを拭いたり、バンカーをならしたり、ピンを持ったり戻したりしながら(当時はまだピンを抜かないといけないルール)プレー進行ができます。
私も父もその行動をとっていたので、スムーズにラウンドが出来ました。その都度、彼や同伴者に『ありがとうございます』と日本語で言われました。逆に私が他の選手のところにいると、彼がヘルプに入ってくれたりと、とても良い雰囲気でプレーが出来ていました。こういう組みだと全体的に選手のスコアもよくなってきます。
そして彼に対して一番感じたのは、穏やかで余裕のあるプレーをする選手だと感じました。
スターでプロ転向する選手。もっとガツガツしていて、自分の世界に入り、周りは関係の無いという様なプレーをする事なく、一つの組みをまとめて進んでいく様な選手でした。
彼でもミスる事はありました。しかし、特に感情を出さず微笑むかの様に受け入れて次に進むプレースタイルでした。
もちろん予選会という事もあったかもしれません。彼にとっては予選通過は当たり前にできる事だったのかもしれませんが、それでもゴルフですから何が起きるかは誰も分かりません。1ホールで大叩きだってありえます。
大叩きすれば予選通過は危うくなってきます。しかし全く感じさせない、穏やかなプレーでした。
他の選手も彼とラウンドできる事を楽しみしていたみたいで、かなり会話がはずむラウンドになっていました。もちろん皆プレーには集中しています。
2Rが終わりに近付いているにも関わらず、まだ話し足りないといった感じで進んでいました。
とても良い雰囲気の組みでした。
皆がアマチュアで競技ゴルフを楽しむ。
ゴルフのあるべき姿、正しいゴルフに感じました。
試合が終わりそれぞれが握手をして帰って行きました。
それから彼はプロ転向をし、PGAに上がる事を目指し頑張っていたとは思います。当時下部ツアーのバイコムで名前を見る事はありましたが、PGAレギュラーで名を見ることが無かったのでレギュラーには上がれなかったと思います。彼の弟はPGAのシードも取って日本の雑誌のゴルフスタイルにも載っていました。
少し前の記事で見たのが、同郷のPGA選手トニーフィナウをコーチしているみたいな事が書いてありました。
ゴルフは続けているのだと。2020年頃の記事だった様な気がします。
彼がプロゴルフ生活をしていく中でそのままの感じでゴルフをしていたかは分かりません。感情を抑えきれず、イライラしながらプレーすることもあったかもしれません。しかしあの時の彼のプレースタイルは、周りを取り込む穏やかさがありました。
私は、その時ゴルフを始めてまだ2年半ぐらいしか経っていませんでしたが、良い時期にとても良いゴルファーに出会ったと思います。彼の父もプロゴルファーでした。プロゴルファーは何か怖い印象でしたが、全く感じませんでした。日本ツアーでキャディーをやった経験がその時すでにありましたが、威圧的なプロが多かったので。
その後、競技を続けていく中で彼の様な選手に出会う事はありませんでした。
出会った中にも優しきゴルファーはいました。
ただ穏やかで、余裕のあるプレーをする選手には出会った事はありません。
皆真剣にプレーをしていますから、いろいろ感情が出てきます。感情を出す事が悪い訳ではありません。それもゴルフですから。
今の私は競技から離れていますから、感情的なプレーをする事はありませんし、
もともと競技中でもあまり感情的にはならなかったと思います。
結局、彼の様なスイングやショットをする事は私には出来ませんでした。
ただプレースタイルの真似は出来ます。
今も、あの時の彼の様な正きゴルファーでありたいと思っています。
以上です。
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