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ふりかえるとよみがえる(#毎週ショートショートnote)

「あ、忘れた」

ふりかえると、カッチャンが口をポカンとあけ固まっていた。
げ、まただ。
今日は何だろう。宿題のプリントか、体操服か。

「パンツはいとらん」
ぎょえ。久しぶりのパンツ。

「どうする?帰る?」
「ううん、ガッコウ行く」

カッチャンは忘れ物の天才だ。
毎日何度も、幾つも忘れる。だけどそれはカッチャンの脳で、何かが悪さをしているから、らしい。
だからクラス全員で話し合った。

「みんなでカッチャンの応援団になろう。」

カッチャンは土日でも学校へ行きたがった。
それくらい学校と皆のことが大好きだったのだ。
時々びっくりさせられたけど、僕もカッチャンが好きだった。


二学期が始まると、カッチャンは東京の病院に入院した。
皆またすぐに会えると思っていた。先生がそう言ったからだ。

でもそれきり、カッチャンは戻らなかった。



営業マン3年目の夏。
今年も猛暑だ。


『あ、忘れた』

ふいに懐かしい声がする。

僕は汗を拭き拭きふりかえる。





カッチャン。

忘れてないさ。

(410字)


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