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ショートショート部屋

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たらはかにさん主催の #毎週ショートショートnote  に参加した作品をまとめています。
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2022年7月の記事一覧

ふりかえるとよみがえる(#毎週ショートショートnote)

「あ、忘れた」 ふりかえると、カッチャンが口をポカンとあけ固まっていた。 げ、まただ。 今日は何だろう。宿題のプリントか、体操服か。 「パンツはいとらん」 ぎょえ。久しぶりのパンツ。 「どうする?帰る?」 「ううん、ガッコウ行く」 カッチャンは忘れ物の天才だ。 毎日何度も、幾つも忘れる。だけどそれはカッチャンの脳で、何かが悪さをしているから、らしい。 だからクラス全員で話し合った。 「みんなでカッチャンの応援団になろう。」 カッチャンは土日でも学校へ行きたがった。

サラダバス(#毎週ショートショートnote)

「ねえ、マジでなんとかならないの?」 僕は苛立ちながら添乗員に囁いた。 楽しみにしていたこの屋根なしバスツアーには、なぜか癖のある客ばかりが揃っていた。 彼らは乗り込んだ時から些細なことで言い争いばかりしている。 やれ一番背が高いのは俺だ、色白なのは私よ、家の歴史がお前らより古いだの、暑さに強いだの寒さに強いだの。 よくまあ、と呆れるほど次々に対立の種が生まれ、車内の雰囲気は最悪だった。 なのに添乗員は呑気に言い放つのだ。 「大丈夫ですよ。当ツアーは、最後には皆さま必ず

カミングアウトコンビニ(#毎週ショートショートnote)

店員がバーコードを通し終えると、ピロピロローンと妙な音楽が流れた。 「おめでとうございます!下3桁スリーセブン!」 受け取ったレシートを見る。777か。 ここはコンビニだが、この並びはなぜか浮かれちまう。 「何かくれるの?」 「こちらのクジをお引きください」 なんだ、コーラかお茶1本ってとこか。 気が抜けたが、店員が持ってきた小箱に手を突っ込んだ。最初に指にふれたクジを迷わず引きあげる。 「凄い、大当たりです!!」 店員の声が上ずった。 「店内の商品、いつでも好きなだ