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サラダバス(#毎週ショートショートnote)
「ねえ、マジでなんとかならないの?」
僕は苛立ちながら添乗員に囁いた。
楽しみにしていたこの屋根なしバスツアーには、なぜか癖のある客ばかりが揃っていた。
彼らは乗り込んだ時から些細なことで言い争いばかりしている。
やれ一番背が高いのは俺だ、色白なのは私よ、家の歴史がお前らより古いだの、暑さに強いだの寒さに強いだの。
よくまあ、と呆れるほど次々に対立の種が生まれ、車内の雰囲気は最悪だった。
なのに添乗員は呑気に言い放つのだ。
「大丈夫ですよ。当ツアーは、最後には皆さま必ず仲良くおなりです」
適当なこと言うな。金返せ!
――そう言いかけた瞬間、突然天と地がひっくり返った。
「うわあっ!」
僕らは上になり下になり、折り重なって、大きな木の枝にひっかかり何度もバウンドした。
強い衝撃に気が遠くなる。
血色の雨に打たれ、僕は気を失った。
◇
「サラダは混ぜるほどおいしんだよ」
「わかってるって。それよかこれ、バス型サラダボウル?超カワイイんだけど!」
(410字)
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