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全力で作られたペーパーマリオ最新作を、シリーズの現状も鑑みて全力でレビューしていく【ペーパーマリオ オリガミキング】

1.はじめに

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今作を非常に楽しみにしていた。

ペーパーマリオシリーズは、丁寧なゲームデザイン、どこか変で魅力的なキャラクター達、彼らによる細かな小ネタの数々、その土台の上で繰り広げられる起伏に富んだ強烈なストーリー進行が魅力だと思っており、ペーパーマリオの次回作にもそれを期待していた。

と同時に、不安もあった。

近年のペーパーマリオシリーズは、4作目のスーパーシールにおいてオリジナルキャラクターを出しにくくなったこと、ストーリーをあまり全面に押し出さないゲームデザインに方向を変更したことなどから、その路線を継いだ5作目も含めファンからの評価はあまり芳しくなかった部分もある(※これについて詳細は後述する)。次の作品もその路線を続けるのなら、シリーズにはもう期待できなくなると思っていた人は居るかもしれない。

だが、そこへきて今年の5月になり突如公開されたペーパーマリオ オリガミキングのトレーラーこれを見た時自分は、「もしかしたら今作はすごく面白いかもしれない。開発元も現状のペーパーマリオシリーズの状況を理解していて、従来のストーリー路線にできる限り戻そうと考えているのだろうか」という風に感じた。そのトレーラーでは、オリガミと"ペラペラ"の戦いという奇妙な構図が明確に押し出されていて、クッパもどうやら味方ポジションにいるようだった。これなら、先の予測のできないストーリーが今作には存在しているのではないかと感じたのだ。

戦闘システムもかなりひねられたものになっているし、文房具がボスだとか、ピーチ城ごと連れ去るだとかも強烈で面白いと思った。だが、その後公開された紹介映像では相変わらずキノピオの数が多く、明確なオリジナルキャラクターがあまり居ない印象はスーパーシールを彷彿とさせた。

そのため、期待半分、不安半分だったのだが、それ故に、逆に今作の発売を非常に楽しみに待っていた。

そのペーパーマリオ オリガミキングがついに、7月17日に発売した。
ここから、筆者が実際にクリアまでプレイして感じたゲームの詳しい内容とその大きな魅力、そして、残念だった点と、シリーズに課せられた厳しい状況についての話に入っていく。

2.ペーパーマリオ オリガミキングの魅力とその完成度

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まず、今作はタイトルにオリガミキングとあるように、オリガミがテーマになっている。敵として登場するキャラクターはほぼ全てオリガミで、明確にオリガミが敵対する勢力として描かれている。しかし、敵として登場するオリガミのキャラクターは、実は元はマリオと同じ紙のキャラクター達、その、ゲーム内におけるいわゆる"ペラペラ"達を、オリガミキングであるオリー王がオリガミに折って洗脳したキャラクター達だ。この時点で意外にもブラックな設定だが、なんとオリガミにされたキャラクター達はもう二度ともとに戻ることはできないらしく、理性を失って敵対する数々のオリガミ達をマリオは倒していくことになる。

今作は、ペーパーマリオの名の通り、世界観のほぼ全てが紙でできていて、マップをうろついているだけでも紙でできた世界に癒やされるのだが、ゲームデザインも、世界が紙でできているということを全面に押し出したものになっている。ギミック面では、例えば、紙でできた壁のうち、違和感のある部分をはがして謎を解く場面があったり、演出面では、キャラクターが実際に紙からオリガミに組み立てられていく様子が描かれるような場面もある。

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グラフィックの面でも、建物や地面、木々はもちろん、水や炎といったものですら、紙を使って巧みに描かれていることがわかる。そして、詳しくは言えないが、ストーリーにおいても、前述したとおりオリガミとの戦いという構図になっていることから、キャラクター達が紙でできているということが前提となった話の運びになっている。

これらの、前提として紙があるという要素が随所と非常に上手く噛み合っていて、ゲーム全体の方向性が明確になっているため、細かいところのクオリティに注力できている印象だ。

一方で、戦闘システムにおいては、シリーズのRPG風戦闘がアレンジされて使われているため、「紙の世界でこの戦闘システムにする必要があるのか」と問われれば別に噛み合っているわけではない。
ただ、今作の戦闘システムは、シリーズでみても、ゲーム全体でみても、かなり変わっていて、「RPG風の戦闘システムアクションコマンドバトル、そしてパズルを組み合わせたもの」になっている。一見して相反するものを組み合わせたゲテモノ料理のようなシステムなので、面白いのかと疑問に思うかもしれないが、今作においてはかなりひねられていて、意外と楽しいものになっている。

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今作は、シリーズにおける主な攻撃方法の「ジャンプ」と「ハンマー」を全面に押し出すことで、パズルと上手く組み合わせることができている。敵の配置に対してジャンプとハンマーの攻撃範囲が明確なので、敵を並べ替えた上でまとめて攻撃する、というシステムがかなり分かりやすい。

とにかく綺麗に揃えて、かっこよく攻撃!
という案外爽快な戦闘になっていて、序盤はかなり新鮮な気持ちで楽しめる。ただ、そのシンプルさ故に、中盤以降次第に戦闘が面倒に感じるようになっていくのは否めない。敵を揃えることで得られるメリットが非常に大きいのに対して、後半になるとパズルの難易度が上がって揃えるのが困難になる場面も多く、根幹の戦闘がシンプルな分、パズルの部分をいかに楽しめるかで、戦闘に関しては評価が変わってくるだろう。パズルが苦手な人は、敵と戦闘するのが嫌になってしまうかもしれない。

ただ、それに関しては、今作はレベルの概念がなく、敵を倒すメリットがコインを稼げることしかないので、逆に言えば気兼ねなく無視できるので意外と問題はない。むしろ、中盤あたりからは、敵といかにバトルせずに先に進めるか、というゲームデザインになっていて、実際ダンジョンにおいても、敵を避けることを推奨するような場面が多くあるので、逆に戦闘を避けられないことへの恐れをダンジョンデザインの要素として利用している印象がある。

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かといって、戦闘の爽快感自体はしっかりあるので、上手く揃えてかっこよく決められた時の嬉しさは比較的大きいものになっている。

一方で、ボス戦は最初から最後までかなり面白い。ボス戦は通常の戦闘とはまた別のパズルをすることになるのだが、ボスなので、各固有の特徴があり、その特徴を存分に生かしたギミックが、どれも起伏に富んで凝ったものになっている。

一部ギミックのネタバレになるが、例えば、ボスとして登場する文房具、ブンボー軍団のうちの一つ「セロハンテープ」は、操作するパネル同士をテープでくっつけてしまい、くっついている場所は別々に動かすことができなくなったりする。操作パネルの上をマリオが歩くことになるので、そこにトラップを仕掛けるタイプの敵も多く居るし、演出面もかなり凝っているので、今作のボス戦は戦闘面と演出面の両面で、各ボスのキャラクター性をしっかり描くことに成功している印象を受けた。

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ボス自体の数もかなり多いため、バトルがつまらないゲームでは決して無い。むしろ個人的にはとても楽しかったと感じているが、上記のように、人によっては賛否の分かれる部分があるかもしれない。パズルが難しい人のための救済措置はかなり用意されている。それも世界観にしっかり合ったシステムになっており、抵抗なく使用できるため、パズルができないとクリアできない、ということは全く無い。

このようにかなり独特な戦闘システムになっているため、長々とバトルの話をしたのだが、実際にはこのゲームにおいてバトルはただのスパイスでしかない。このゲームの魅力は、行く先々で起こるイベントの展開の面白さ。これに尽きると言える。

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そもそもペーパーマリオシリーズはそこが魅力のシリーズで、今作においてもそこが本当に楽しい要素になっており、バトルはそれを盛り上げてくれるための要素として機能している。

そして、このゲームは、どこか抜けているキャラクター達の繰り広げる展開の予想できないイベントが行く先々で鬼のように待ち構えるゲームになっている。

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一見してくだらないネタも、全力でやられてしまうと逆に面白い。というような雰囲気のイベント群でプレイヤーを楽しませてくれる。今作はある意味、最上級のクオリティで送られる、シュールギャグツアーのような側面も持ち合わせていると言える。

そして、今作においてそういうストーリーをより魅力的にしてくれている存在、それが「オリビア」だ。

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オリビアはオリガミキングであるオリー王の妹で、オリガミ側の存在でありながら、マリオと協力する形になる、今作の相棒キャラクターだ。そして、今作において唯一"味方側のオリガミ"となっている。彼女は多くの事象に対して無知で、性格も何処か抜けている、いわゆるアホの子なのだが、世間知らずな一面がある彼女は、起こる展開展開、いちいち全てに新鮮なリアクションをしてくれる。

オリビアが居なくともわけがわからない展開が起こっているのに、オリビアが居るせいで更にカオスになる。そういうイベントを次々進めていくのが基本的なストーリーになっている。

今作におけるチュートリアルも彼女が努めてくれる場面が多いのだが、たとえチュートリアル中であろうと彼女はアホの子なので、そもそも彼女自身がシステムを理解していないような側面が描写されたりする。

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その上で意外と簡潔でテンポのいいチュートリアルになっているので、自分の場合はチュートリアルの時点でオリビアに対してはかなり好印象だった。

とにかく、このオリビアが今作のストーリーテリングにおいて非常に重要な存在となっており、オリビアを中心とした魅力的なキャラクター達の駆け引きがとても楽しく、時に切なく、時に頭を抱える内容になっている。

ゲームにおける相棒キャラクターというのは、ゲームのストーリーやギミックなどの進行において、ヒントや目的をプレイヤーに示してくれるので、ゲームデザインにおいて非常に分かりやすくて使いやすい手法だ。

その相棒キャラクターが完全にストーリーの中心にいて、それを前提にゲームが進行していくというのはかなりベタな印象だが、今作においてはそれが非常に有効に働いている。その上で、オリビア自体がすごく魅力的なキャラクターに仕上がっているので、プレイヤーを「どんな場面でも、オリビアさえいれば楽しめる」という気持ちにさせてくれるようなデザインが中心のゲームになっていると感じた。

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逆に、オリビアのことをプレイヤーに好きになってもらえなかったらゲームプレイ全体が完全に崩壊してしまうので、オリビアを魅力的なキャラクターとして描くための演出は非常に多い。実際のところ、今作をプレイしてオリビアが好きではないという人はほぼ居ないのではないだろうか。

このゲームの、マリオとオリビア、そしていろいろな仲間達との旅は非常に魅力的なものに仕上がっているため、今作の冒険は、常に新鮮で飽きさせない、常に楽しいと思えるものになっているとクリアまでプレイして強く感じた。

もちろんそれは、平坦なストーリーではないという意味でもある。そもそも、ペーパーマリオシリーズ自体、どのイベントも起伏に富んでいて、ちょっとヤバいストーリー進行が魅力のゲームシリーズだ。そのイベントの一つ一つを丁寧に、全力のクオリティで描いている。

今作もその側面は非常に強く、今作においても、時に「マリオでこんな展開が本当にあっていいのか」と思うような展開がいくつも用意されているおり、また、その描き方の一つ一つが毎回非常に丁寧な作りになっている。フィールド上のNPCはストーリーの進行に合わせて段々と、セリフや配置が変わっていることが多く、オリビアを含めた仲間たちがプレイヤーのインタラクションにいちいち反応してくれたりする場面も多い。

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また、筆者の個人的なお気に入りポイントなのだが、オリガミ側の敵キャラクターは、ペラペラのキャラクターと"セリフの吹き出し"が差別化されている。通常の、厚紙を切ったような整った吹き出しではなく、オリガミでできた吹き出しになっているのだ。こういった細かな部分まで演出されていることも手触りの良さに貢献しているだろう。

今作は仮にもNintendo Switchという最新ハードで作られており、非常に豊かな紙の質感で世界が表現されているが、そのグラフィックの向上も、もちろん演出に貢献している。紙でできているからと侮るなかれと、全力でグラフィックを作り込んでいることもプレイすれば感じる部分だろう。

今作のやりこみ要素についても触れておきたい。

今作におけるやりこみ要素は、とにかく鬼のようにステージに隠されたギミックを解いていくという要素が強い。オリガミにされたキノピオを助ける、というPVで紹介されていた要素ももちろんだが、単純にストーリー進行とは関係のない意外なギミックやネタが数多く仕掛けられているため、とにかくしっかり考えて探索すればなにか見つかるデザインになっている。

そして、今作のやりこみ要素において何よりうれしいのは、その"報酬"だ
今作のやりこみ要素によって得られる報酬は、博物館という場所に飾られていく形になるのだが、飾られる報酬は様々で、印象的なキャラクターやオブジェクトの、3Dで眺められるフィギュアや、ゲーム内で使われている楽曲を聴くことが出来るゲーム内サントラ、果てはコンセプトアートまで、その他様々な報酬を順次受け取ることができるようになっている。

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やりこみ要素によって得られる報酬がかなり豪華なため、探索に精を出す楽しみも増えることだろう。

こういった、一つ一つの丁寧なこだわりがゲーム全体のクオリティを底上げしている。このゲームを触ったプレイヤーに、とにかくいい手触りで、全力で楽しんでもらいたいという開発側の意図がしっかりとした技術とアイデアでゲームに反映されているため、このゲームが、単純にゲームとして非常に高品質であることは間違いないと感じている。

3.今作の問題点と、開発に課せられた厳しい縛り

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さて、ここまで多くの面でこのゲームの品質の高さを訴えてきた本稿だが、
とはいえ個人的にやはり残念な部分もあった。トレーラーを見た時に感じた「キノピオが多すぎるのではないか」という不安。やはりこれは当たっていた。主要キャラクターであっても、かなりの割合をキノピオが占めている状態なのだ。いくら魅力的で起伏に富んだキャラクターやイベントの数々があっても、正直に言って「またキノピオ?」と思ってしまった人はいるだろう。

新しい魅力的な土地に行って、どんなキャラクターが居るのだろうとおもったら、コスプレしたキノピオだった。というような残念さは、このゲームにおいて、正直に言えば無いとは言えなかった。

ただし、これには開発元には解決できない理由がある。この部分を話さないと誤解が生まれてしまうので、知っている人もいるかも知れないが、ペーパーマリオシリーズに起こった悲劇の歴史(?)を、順をおって丁寧にお話する。

さて、この記事の最初の方に書いていた、シリーズ4作目、ペーパーマリオ スーパーシール以降のペーパーマリオは、全体的に見てファンからの評価が芳しくなかったという話を覚えているだろうか。ペーパーマリオに興味がある人なら、なんとなくそういった話は知っているかもしれない。実際にスーパーシールの次であるペーパーマリオ カラースプラッシュは売上自体も芳しくなかった。(これに関しては、ハードの普及台数も関係しているため一概には言えないが)

何故シリーズが突然4作目にして路線を変えてしまったのか、明確な理由が、任天堂の公式サイト社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』に載っている。
社長が訊くは、前任天堂社長の岩田聡氏が、開発者に直接ゲームの開発の裏話などを対談形式で訊く記事シリーズだったのだが、3DSで2012年に発売されたペーパーマリオスーパーシールの記事も掲載されている。

そこに書かれている内容の中で、やはり一番気になるのは、この部分だ。

"2. 「ぜんぶシールでいこう」"より

田邊:
そうだと思います。そういう意味では
今回は前作までのスタッフを
ほぼ一新してはじまっています。

(中略)

田邊:
いちばんの理由は宮本さんから
「今度『ペーパーマリオ』をやるときは、
 これまでの世界観と大きく変えたものにしてほしい」
という要望があったんです。
宮本さんの中で『マリオ』シリーズの扱いを
悩まれていた時期がしばらくあって、
それでいろいろ思うところがあったと聞いています。

"3. RPGの構造を捨てる"より

岩田:
宮本さんが今回の『ペーパーマリオ』で
ねばって、こだわっていたところというのは、
具体的にはどんなところだったんですか?

田邊:
「これまでの世界観と大きく変えたものにしてほしい」
ということのほかに、宮本さんにプロジェクト当初から
言われてきたことは大きくは2つあって、
「ストーリーはなくていい、必要なのか?」ということと、
「可能な限り『マリオ』の世界のキャラだけで完結してほしい」
ということでした。

(中略)

田邊:
ただ「新しいキャラが出せない」というのは
相当きびしい「しばり」なんです。
当然新しい敵キャラはつくれないわけですが
『マリオ』のキャラ、とくに味方側って、
実質、色ちがいのキノピオだけですし・・・。

つまり、この記事によれば、マリオシリーズの生みの親である宮本氏による指示で、マリオの世界観を守る目的から、この作品からペーパーマリオシリーズでは、完全に新しいキャラクターなどは作りにくくなり、また、マリオシリーズの構造から言って、ストーリーは必要ではないのではないかという指示があったということになる。

実際、それ以前のペーパーマリオシリーズはオリジナルキャラクターがかなり多く、世界観も本編のマリオとは別のかなり独特なものになっている
スーパーペーパーマリオに至っては、舞台が異世界なためほぼキノコ王国の住人は出てこず、不思議な絵柄のオリジナルキャラクターがたくさん登場する作品になっている。

記事には、当時の宮本氏はマリオシリーズの扱いを悩んでいたとあり、生みの親自身、マリオシリーズのIPとしての方向性を考えていたタイミングで
スーパーペーパーマリオのような、見方によっては「マリオである必要性が薄い」作品に思うところがあったのだろう。

そして、それについて、今作の発売でVGCのインタビューにプロデューサーの田邊氏が回答している。それによると、どうやら本作、ペーパーマリオオリガミキングにおいても前述した「しばり」が続いているようだ。

つまり、今作においてキノピオが多すぎるように見える理由は、シリーズ4作目において課せられた縛りが今作でも続いているからということになる。
この方針についての個人的な良し悪しについての見解は控えるが、これが開発において大きな枷となってしまっていることは間違い無いだろう。

というのも、今作に登場するキャラクター達には、「マリオの世界観を壊さずに」、「かつオリジナリティをもたせようとする努力」が随所に見られるからだ。

まず、一番分かりやすいのは、やはり今作のボスとして登場する"文房具"達、ブンボー軍団だろう。

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例えばこれは、今作に登場するボスキャラクターであるブンボー軍団のうちの一人(一個?)、イロエンピツである。ボスキャラクターとしてはこれまでのほとんどのゲームで類を見ない、強烈なビジュアルをしている。ようはこれは、まんま色鉛筆なのだ。分かりやすい目や口すら存在しない。本当に何処から見ても色鉛筆とその容器としか言いようがない見た目になっている。特徴的なセリフや動きで個性付けされているが、ビジュアルに関しては一切の擬人化が行われていない

何故こんなことになってしまったのか。理由は明白だ。その「しばり」である。しかし開発はその縛りを完全に逆手に取って利用したのだ。

筆者が予想するに、プロセスはこうなる。

マリオの世界観を壊すモノは出せない

紙という材質を前提とする世界観ならば、現実世界のモノをアイデアとして利用できる
(ペーパーマリオスーパーシールなどにおいても、扇風機などの現代家具達が武器として登場した)

文房具をそのままの見た目で擬人化

むちゃくちゃである。しかし、これこそが開発が"縛り"に対してできる唯一の抵抗だったのかもしれない。そして、このような路線が縛りに対して通るのであれば、もちろん、

紙そのものを折って曲げてできたオリジナルキャラクターはマリオの世界観を崩さない

ということも言うことが出来る。それ故に、今作に登場するオリガミのキャラクターには、一部オリジナルキャラクターが含まれているのかもしれない。

もちろん、これらはあくまで筆者の想像の域を出ないので注意していただきたい。ただ、自分がこのゲームを遊んだ上では、こう解釈できたということだ。

他にも、今作に多く存在しているキノピオ自体にも、服を変えたり表情を変えたりと、個性を出そうとしている工夫が強く見られる。また、このシリーズの独特のセリフ回しを以て、全く同じ見た目のキノピオであっても、個性が出るように丁寧にデザインされている。これは、スーパーシールの時点でも見られた工夫だろう。

4.終わりに

このように、ペーパーマリオシリーズにはとても重い枷がついている。それは現在進行系のようだ。しかし、今作はその枷についた鉄球をそのままぶん回すかのように、独創的なアイデアでこれを切り抜けることを試みているように思う。結果的に、今作は縛りの穴をつき、その上で作りたいものを好きなだけ作ったのだと言うかのようなゲームになっている。

本来ペーパーマリオシリーズの持っている、コメディとしての魅力や、本編のマリオシリーズでは絶対にやらないようなブラックなネタ、そういうものは今作にも確実に存在している。

特に、ペーパーマリオRPGを楽しめた人には全力でおすすめしたいものになっているし、ペーパーマリオシリーズをやったことが無いという人にも、「マリオシリーズってこんなことができるんだ」と、驚異のストーリーを体験してほしい。

私は、少しでもこの丁寧に作られたゲームシリーズの魅力を多くの人に知ってほしい。そんな気持ちで、この記事を書き殴ることにした。

これを最後まで読んでくれたあなたに、少しでも
ペーパーマリオ オリガミキングの魅力が伝われば幸いだ。

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