Too late to die
(一)
一九四五年二月二十三日、私は神様に会った。
戦闘機を撃墜された私は落下傘で脱出し、木の枝に引っかかってぶら下がった。二発の銃弾を受けた右の太ももからは、絵の具のような真っ赤な血が流れて止まりそうになかった。「このまま死ぬのかな」と思った。
二十一年間の人生の記憶が順不同でよみがえってきた。完全に忘れ去っていたはずの幼少期の記憶も浮かび上がった。兄と遊んだ近所の公園。出征前日に父と食べたぜんざいの味。仲間と歌った「同期の桜」。お調子者の木村義明が得意とした隠し芸。青山