変愛教室 2


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セミナーの内容は、頭に入ってこない。

ただただ、端っこの席の葉山さんが、今この瞬間どんな表情をしているのだろうかということだけが気になった。

あっという間に、二時間がすぎた。

「ソレツ」は、お開きになった。

参加者は、バラバラと帰っていく。

葉山さんに、話しかける。

「どうでした?」

「あ、楽しかったです」

会話が続かない。

こんなとき、コミュニケーションが得意な男なら、何を言うのだろうか。

「おお、よかったですね」

「はい」

私はもっとも意味のない言葉を発し、葉山さんはもっとも明るい笑顔で返した。

吉岡さんは、PCなどを片づけ終わり、

「はい、皆さん、そろそろ撤収でお願いしますねえ」

と呼びかけた。

私を含め、残っていた四、五人は、だらだらと外に出て、エレベーターに乗り込んだ。

渋谷駅までの十分間、葉山さんに話しかける。

「普段、何をされているんですか」

「あ、101屋という定食屋で働いています」

「101屋!よく行きますよ。おいしいですよね」

「ありがとうございます」

101屋に行っているのは本当で、私はウルトラバカ定食という、これでもかというくらい肉と米だらけの定食を注文する。

きっとこれは、ストレス発散したいだけのやけ食いなのだろうと、頭の片隅で思いつつも、やめられない。

吉岡さんによると、ストレスさえ減らせば、お金はどんどん増えるらしい。

私にお金がたまらないのは、日頃の仕事でのストレスによるのかもしれない。

「何線ですか」

渋谷駅に着いて、葉山さんに利用する路線を聞く。

「あ、私は湘南新宿ラインです。ホーム遠いんですよね」

「ああ、奥の方ですもんね。一駅分歩いているんじゃないかという気になりますよね」

「そうなんですよ。困ってしまいます。迫田さんは、何線ですか」

「私は半蔵門線なので、ここでお別れですね」

乗り込む路線によって、吉岡さんを含む六名は、ここで散り散りになった。

私は、同じ半蔵門線の岩井さんと二人で、帰宅した。

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