頭痛

男は、電車に乗っている

つり革につかまって、目を閉じている

男は、片頭痛に苦しんでいた

五時に目が覚めたとき、雨による頭痛だと悟った

頭痛薬を飲み、また一時間ばかり眠ったが、おさまらなかった

片頭痛というのは、偏頭痛と書く人が多く、メールなどで片頭痛と書くと、返信の中で偏頭痛と書かれて、暗に「こうですよ」と教えてくれているのかもしれないと思って、申し訳なくなることが多かった

あるとき、ためしに病院で問診票に「偏頭痛」と書いてみたら、医師は偏の字を線で消して、「片頭痛」と書き換えていた

男は、ああ、やはりへんずつうは、片頭痛と書くようだと確証を得たので、以来「片頭痛」と書くようにしている

頭痛薬は通常、二時間ほどで効いてくる

効かなければ、その日は治らない

七時半になり、多少痛みが和らいできている

男は、引き続き目を閉じたまま、仕事が終わったらゲームをしようかなどと、頭の中で夜の計画を立てていた