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ずっと欲しかったバッグのこと

2週間ほど前、メルカリでずっとずっとずっと欲しかったものが出品されているのを見つけた。
それは、とあるブランドのトートバッグ。
そのトートバッグを初めて見たときのことを覚えている。

大学生の時に、西千葉駅のペリエ(駅直結の商業施設です。懐かしすぎる。大好き。)の本屋さんでおしゃれなお姉さんが雑誌を立ち読みしていた。お姉さんはデニムにTシャツというラフな格好で、それがすごく似合っていた。ひと目見て、「タイプな格好だな〜」と思った。そのお姉さんが持っていたトートバッグが、とてもとてもかわいかった。そのトートバッグがずっとずっとずっと欲しかった。

素材はおそらくコットンかリネンで、割とぺらぺらな感じ。でもその風合いがなんともいい感じ。お姉さんはおそらく近所に住んでいそうな雰囲気で、ちょっとスーパーに買い物に、という感じかなと思った。A4くらいは入りそうなサイズ。でもお財布と携帯くらいしか入ってなさそうで、トートバッグは「まだまだ入りますよ!」という風に見えた。そのちょうどいいサイズ感もまた、なんだかとても素敵だった。そして何よりプリントが、もうとにかくすごくかわいかった。白地に青のプリントで動物が描かれていた。「なにそれ!!めちゃくちゃかわいい!」と釘付けになった。でも、お姉さんは知らない人だったので「それはどこのブランドのものですか?」とは聞けなかった。(今のわたしなら、もっと図々しくなっているので、聞けると思う。)

その後しばらくして、そのバッグがどこのブランドのものか判明した。でも、残念ながらもう売っていなかった。シーズン限定のものだったようだ。そのブランドでは毎シーズン、プリントを変えて同じ形のバッグが出ている。だから同じものが作られることはなさそうだった。「あ〜残念だ…」と落ち込んだけれど、あの頃はメルカリはなかったし、かといってヤフオクで探そうか、とまでもならなかった。その時は大学生で、アルバイトで貯めたお金で欲しいものが他にもたくさんたくさんあった。欲しいものリストの中で埋れていってしまったんだと思う。

だけど、思った以上にそのバッグのことが忘れられなかった。

そのブランドのことはそれからもずっと好きなので、お店に行ったり、SNSで情報を追いかけている。でもどのデザインを見てもやっぱりお姉さんの持っていたトートバッグのかわいさには敵わない。「あのバッグよりかわいいのがあったら買おう」と思うようになった。

数年前に、そのブランドの過去の作品を見る機会があった。その中に、わたしの心の中に残り続ける、そのトートバッグがあった。10年ぶりくらいに見たけれど、やっぱりかわいい。ほしい…!!!だけどそれは当然展示品であり非売品だった。「探しても、もう無いんだろうな。」手に入らないという現実に直面したくなくて、探すこともしないまま、展示品のバッグを見たくてもう1度見に行って、目に焼きつけようと思ってじーーっと見つめて帰ってきた。

そしてそれから数年経った今年のはじめ。なんのきっかけだったかは忘れてしまったが、またそのバッグのことを考えていた。そういうことはその数年の中で波のように何度か訪れていたわけなのだけど、突然、本気で探すことにした。理由は「やっぱり諦められないから。」
早速調べてみるとそのバッグはなんと、2008年に作られていたものだった。
「え...16年前…?」
調べて初めて、そんなに前に見たものだったんだと驚いた。
そして、そんなに時間が経っても心をつかまれていたのかと思うと、そこまでのものは今までになかったのでやっぱりわたしの中で特別なんだなと思った。そしてデザイナーさんのすごさを感じた。人の心に残るデザインを、その人は作っているんだ。

メルカリの検索条件にブランド名とそのデザイン名を入れて調べるが、そのデザインの商品は本当に少ししか出品されていないし、全て売り切れている。そしてわたしの記憶の中のバッグは見当たらなかった。とりあえず、検索条件を保存するという機能を使って、そのキーワードの入った出品があった場合はわたしにメールが来るという設定もした。(こうやって書いていて思うけど、本当に本当に便利な機能。)

そして待つこと約半年。
なんと!ついにこの間、わたしが探していたトートバッグがヒットした。通知のメールを見て「あっ!」と声が出てしまうほどだった。残念ながら、わたしが探していた「白地に青のプリント」ではなくて色違いだったけれど、それでも大興奮した。やっぱり、すごくすごくすごくかわいい!!
ただ、出品されていたのは、かなり難ありな商品であるとわかった。破けている箇所が2つもあったし、いくつかのシミも写真で確認できた。そのこと自体はそんなに問題ではなかった。破けている箇所(しかも2箇所)は縫えばいいし、シミもダーニングすればいい。どちらも大好きな作業だ。16年前のバッグなんだから、当然といえば当然だと思った。とにかく出品されたことが奇跡なんだ。

問題はもう1枚全く違うデザインのバッグとセット売りされていることだった。そちらのほうは、はっきり言って全然好みではないデザインだった。2枚セットにしてはお得そうな値段ではあったけれど、「こっちはいらないな〜」と思った。一応、「いいね!」だけしてしばらく様子を見ることにした。さらっと書いたけど、この判断はわたしの中ではかなりギャンブルで、決断するまでにものすごく真剣に考えた。もしかしたら2枚セットで買う人もいるだろうから、その時にはやっと見つけたバッグともおさらばだ。でもなんとなく…わたしの納得いく条件になるまで待ってみようと思った。それで先に買われてしまったら仕方ない。またチャンスを待とう、と思えたのでそうすることにした。

それからは1日に何回か、そのページにアクセスして動向をチェックした。出品者は早く売ってしまいたいのか、一時的に1000円値下げをしたり、また戻したり、というのを繰り返しているようだった。(これすごく不思議な動きでした。)1000円値下げされた時は一瞬心が動いたけれど、明日になっても売れていなかったら、この金額なら買おうかな、くらいにしておいた。そして次の日見てみると、値段は元に戻っているし、売れてもいなかった。こういう日が何日か続いて、わたし以外に10数人が「いいね!」をしていたけれど、売れ残っていた。これは今思えば本当にラッキー!
そしてそのじりじりした戦いが数日続いた後、なんと出品者がバラ売りをしてくれた。しかも、バラ売りになった結果、それぞれがかなり破格なお値段になっていた…!「この辺くらいまでは出そうかな」というわたしの中の値段のラインよりはるかに下だった。
そういうわけでわたしは、ものすごいスピードで、迷わず「購入手続きへ」というボタンをポチッとして、ついに、欲しかったバッグを購入することができた。「ついに手に入れてしまった…。すごい…。」とほっとした気持ちと、高揚感がものすごかった。到着まで楽しみで楽しみで、出品者さんにも興奮気味にメッセージを送った。「ずっと探していたバッグなんです!!本当にうれしいです!!!」

そして先日、無事に我が家に、ずっとずっと心の中にあったバッグが届いた。すごく丁寧に梱包されていた。包みを開けた瞬間「わあ…」と思わず声が出てしまった。鳥肌が立った。

もう…すっっっっっっごくかわいい!!!!!!!!!!!!なんっっっってかわいいんだろう!!!!!

かわいいって何回言ったかわからない。やっぱり、すっごくかわいかった。サイズ感も、プリントも、生地感も、色使いも、何もかも。
こういうのって、記憶の中で美化されていて、実際に見ると「あら?こんなだった?」ということも多いと思う。でもこのバッグは、この表現であっているか微妙だけど…ちゃーーんと、ものすごくかわいい。思った以上だった。

バッグを触ってみると「やっとあのバッグを手に入れることができたんだ」という実感が湧いて、部屋で1人静かに大興奮した。にやにやしながら生地を触ったり、持ってみたりした。壁にかけて遠くから眺めてみた。うん。もうめちゃくちゃかわいい。最高。

バッグは写真で確認していた通りの難あり箇所に加えて、16年の時を経ているという感じも伝わってきた。でもなにも問題ない。そのすべてが、叫びたくなるくらい、愛おしくって、感動した。出品者の方がこれまで丁寧に扱ってきたのもわかる。素材はリネンだから、16年の年月が経てば、もっとくたっとしているだろうと思ったけれど、ちゃんとリネン特有のシャリ感が残っている。そして何より、16年も捨てずに持っていてくださったことに心の底から、本当に、大感謝だ。触りながら、「これは立派なビンテージというやつだ。」と思った。そしてこんな風に触っただけでうれしくなったり、鳥肌が立ったり、幸せな気持ちになるものが存在しているんだということを知った。それは言葉では表しきれない感動だった。

わたしはこのバッグを、おそらくこれからずーっと大切に手元に置いておくと思う。もちろん時々は使いたい。そしてたとえ、使えないくらい劣化してしまったとしても、部屋に飾っておくと思う。間違いなくわたしの「宝物」だ。

こんなにうれしいお買い物ができてとっても幸せだなあと思う。そしてそれと同時に、わたしもこんな風に誰かに思ってもらえるようなものづくりをしたいと思った。そういう気持ちを忘れないためにも、このバッグが手元にあることは、わたしのパワーになってくれるのだと思うから、本当にラッキーだ。

今朝もこのバッグを眺めて、触ってうっとりした。まずは破れているところを大切に縫い直して、シミの箇所をどんなふうにするか考えよう。このバッグは十分に年季が入っているから、お直ししたところが分かってもかわいいと思う。丁寧に直したい。そういうのを考えるのもすごく楽しい。でもしばらくは手をつけず眺めていると思う。

ちなみに、あのお姉さんが持っていた「白地に青のプリント」のカラーも、引き続き探そうと思う。出会えるかわからないけれど、なんとなく出会えそうな気がしている。持っている人にも会えるんじゃないかな〜と予感している。

そしてさらにちなみに、セット売りされていた時の、わたしが好みではないな〜と思った方のバッグもすぐ売れていた。そのバッグを購入した人も、わたしが欲しかった方のバッグは「いらないあ〜」と思っていた人なのかもしれない。そう思うとすべてのお買い物に、なにかストーリーがありそうで、それもおもしろいなと思った。


毎日暑いですね。でも聞いてください。
わたし、外出して暑さと湿度にやられてげんなりしながら家路についても、「家に帰ったらあのバッグに会える」と思うとうれしくなるんです。
どうかしてるね、と思った人、最高じゃん、と思った人、素通りせず「♡」ボタン押していってくださいね。

読んでくださってありがとうございました。


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