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日本酒熟成酒の可能性

こんにちは。
日本酒熟成酒・お燗文化普及人の石坂晏敬です。

こちらのnoteでは、日本酒に関する話、自分の考え、自分が行っている日本酒の事業などについて定期的に書いていこう思います。

今日は日本酒熟成酒の可能性についてまとめてみました。


日本酒熟成酒との出会い

2017年に少しずつハマり始めて、2018年から加速して日本酒飲みまくりました。それは「日本酒との出会い」にまとめています。

日本酒飲みまくって、日本酒の美味しさを僕の友人に熱心に伝えていったら、とある酒蔵のオーナーさんを紹介いただくことになり、その酒蔵さんのお酒をいただくことになりました。

この酒蔵のオーナーとは、僕が蔵人を経験させていただき、今も販売のサポートとして携わりさせてもらっている「岩瀬酒造」さんの庄野会長です。その時の写真です↓

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その際に、岩の井のいろんなお酒を飲ませていただきました。その中でも、「秘蔵古酒20年」という銘柄は、今までに経験のない日本酒の味でした。

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色がウィスキーのような黄金色というか黄褐色というか、そのような色合いとなります。

その時までの僕の日本酒の色の認識は「無色透明」です。かなり、びっくりしたことを今でも覚えています。

そして、味わいなんですが、庄野さんからは「紹興酒を上品にした感じ」と確か説明を受けたと記憶してます。

実際の味わいは、紹興酒までの強い熟成香ではなく、カラメルの香りが程よくして、口の中ではまろやかさと旨味の膨らみがしっかりとあり、香りと味をともに楽しめるお酒です。とても贅沢な気分になれたことを今でも鮮明に覚えています。


日本酒の熟成酒の評価

日本酒には、ワインやウイスキーのようなヴィンテージの考え方がとても薄いと感じられます。
どういう意味かというと、何年寝かせても基本値段に反映されないということです。

良い質のぶどうが収穫できた年の1級ワイナリーのワインは、かなり高額(数百万円)な価格となっていますよね。

ウィスキーも樽で長期熟成されたものほど価格が高くなっていますよね。


では、日本酒はどうなのかというと、熟成に価値があると考えている酒蔵は、蔵で熟成した後に価格に反映させて販売しているところも極稀にあります。

しかし、ほとんどの日本酒は年を経ると価値が下がるというような価値観となっています。

僕が体験した例としては、ある酒屋さんに行った時に4年前に瓶詰めされた「小笹屋竹鶴」などが売っていました。「小笹屋竹鶴」という熟成させると美味しいと感じる広島県の酒蔵さんの銘柄です。

これは珍しいと思い、この古い「小笹屋竹鶴」をくださいと店主さんにお伝えして、冷蔵庫から6本程度レジに持っていったんです。レジは女性の店員さんが対応してくれたんですが、価格を調べるために冷蔵庫に向かった際に年代が新しいものにわざわざ変えて持ってきたんです。

ここにもちろん悪意はなくて(むしろ善意)、新しいものがまだ残っているから、新しいものを出したほうが親切だということで持ってきてくれたんです。

店主さんにも話をお聞きしたら、古いものを求めるお客さんはほんとに稀なので、基本は新酒が入ってきたら、新酒から出すようにしていると言っていました。

おそらく、日本国内のほとんどがこのような酒屋さんなど考えられます。

だから、同じ銘柄で年度が違くても(例えば、BY2020とBY2015)価格が同じというのが普通です。

仮に酒屋さんが独自にお店で数年かけて熟成をかけたとしても、価値を乗っけることが難しいというのが今の日本酒の現状であることは間違いありません。


★熟成に向く日本酒、向かない日本酒

では、古い日本酒を見つけたら何でも買いか?というとそんな話ではありません。


やはり、新しいできたてのものをしっかり冷やしてスッキリ飲むことに適しているお酒は、熟成させたら、その良さがぼやけてしまうし、特に眠っている旨味などが出てくるというわけではありません。

逆に出来たての時は、味がぼやけていて、美味しくないお酒(よく「硬い」などと表現されます。)などがあります。しかし、これらを数年寝かすことで、熟成が進み、味が開くということがあります。

僕の経験でいうと千葉県の岩瀬酒造の岩の井の「山廃シリーズ」や過去の「生酛造り」のものなどや、島根県の十旭日さん、大阪の秋鹿の山廃などがまさにそのようなお酒です。時間経過で味が変化するので飲むタイミングがとても重要になってきます。とはいえ、難しく考えず、たまに味見をして、美味しいと思ったらその時の味を楽しむ感じです。

全量純米酒を一番初めに行った埼玉の神亀さんは酒蔵内で熟成させて、お酒をブレンドして美味しい状態で熟成酒を出されています。

このように、時間経過とともにお米の旨味成分であるアミノ酸が出てくることが味わいに深みが増していくんです。

日本酒はものにもよりますがこのように時間経過とともに旨味成分が増すものは液体の色が黄金色に変化していきます。味が深いほど、色合いも深いです。この色はウィスキーのように木樽に漬けてついた色のように思われがちですが、そうではなく、日本酒の成分であるアミノ酸の量の変化で色が変化していきます。

この点は日本酒ならではの面白い部分だと感じています。

よく、古くなった日本酒はお酢になると耳にしますが、僕が古くなった日本酒でお酢と感じたことは一度もありません。

ぜひ、自宅に古くなった日本酒がある方は、味を試してみてください。もしくは僕のところに持ってきてください(笑)


味が伴えば、希少性が必ずプラスされるので価値となる

熟成酒の可能性は普通に考えれば、その年に造られたお酒の数は限られていて、飲まれるごとにその絶対数は減っていきます。希少性はどんどん高まっていくことは間違いありません。

ただし、味が伴うことが前提ですが。5年10年と熟成された日本酒の味わいがどんなものなのか?5年熟成時は旨味が最高に乗っていて、味のバランスも良かったが、10年置くと、熟成香が強くなりすぎて、味わいのバランスが悪くなるとか。例えばそのあたりの検証はこれから必要になってきます。

この点は、僕もたくさん熟成酒を買い取って、研究していきます。

それをしっかりと実証できれば、希少性が乗っかるので、必ず価値となるというのが僕の考えです。


商売としては取り組みにくい

日本酒は戦争後の酒税の仕組みが、その年に造った酒はその年に売るという内容で、売れ残ったものは翌年も酒税がかかるという仕組みであったそうです。(認識間違っていたらごめんなさい)だから、熟成させるという概念を酒蔵として持つことは出来なかったということになります。

ただ、現在は酒税法が改定されて、熟成させて酒税が重ねてかけられることはなくなったようです。

この酒税法があった期間は熟成酒の概念が消えていたので、文化としても立ち消えになってしまったのは仕方のない事です。

このような背景から、熟成酒という文化が日本酒においては一度途絶えてしまっているために酒蔵、酒屋ともに熟成の価値を価格に載せにくい状態が続いているんだと解釈しています。

熟成酒を取り扱う方法としては
1. 酒蔵や酒屋に眠っているお酒を仕入れさせてもらう
2. 熟成酒用のお酒づくりをしてもらい、それを酒蔵で寝かせてもらう。
3. 熟成用の日本酒を購入して、瓶で酒屋倉庫で熟成させる

あたりとなる。

基本的に1番以外は熟成させるための時間を要するため、なかなか始めにくい商売となりますよね。3年寝かせてから売るよりも、造りたてがすぐに売れていくほうが、酒蔵としては経済的には健全です。酒屋としても仕入れたお酒をすぐに販売して売って、お金を回せたほうが、健全です。

そういう点から、熟成酒の商売はなかなか取り組みにくい特性があると言えるでしょう。

江戸時代は3年9年熟成させたものを飲んでいた

江戸時代の日本酒に関して書かれていた書物を読んだ際に、この時代は3年や9年熟成させたものを常温もしくは熱燗にして飲むことが当たり前であったと記されていました。

このことから、熟成酒は日本人の味覚に合っているという実績がすでにあるということになります。だから、新しいことではないということです。

改めて日本酒の魅力を「再発見」してもらえばいいだけなんです。

まとめ

今回まとめたような形で、熟成酒の可能性を探っていきながら、熟成酒の魅力に気づく人を増やしていけるような仕掛けを行っていきたいと思っています。これも細かく言えば、日本文化の一つの掘り起こしとなります。だから、活動意義も持てるものと思っています。

形にするぞぉ〜!!!


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